最古の追加ターン
デュエル・マスターズの歴史は長い。
その最初にあたる第1弾が発売されたのは、2002年の5月末。今から21年も前なのだ。
という事は、発売から1年後に生まれた人ですら、今は20歳という事だ。
日ごろジャッジをしていて、時々耳にするのは、「デュエル・マスターズが発売された時、まだ生まれてませんでした!」という衝撃の一言だ。
そのたびに「そんな事あり得るか????」と思うのだが、あり得てしまうのである。時間の流れは非情だ。
そして、時の流れは待ってくれない。過ぎ去ったら、もう手元には戻ってこないのだ。
よく「何かを始めるのに、今より早い時はない」というが、まさにその通りだ。
時間は進み続けるしかない。戻りもしなければ、止まりもしない。
という事は、今この瞬間こそが、一番早いタイミングなのだ。
そうだと理解していても、人はなかなか時間のありがたみに気付けないものである。
そして、時間の流れは残酷だと感じる事もあるだろう。
年をとれば、昔出来ていた事が出来なくなる。
見た目にも変化が現れるし、見えないところでも、”衰え”はくるものだ。
それを感じた時、人はこう思うものだ。
「時間の流れを止められないものか」
と。
現実では、時を止める事は不可能だ。
しかし、ゲームの世界では、デュエル・マスターズの中であれば、それは可能だ。
それを実現する魔法のようなカードは、追加ターンを得るカードだ。
追加ターンを得るという事は、永遠に自分だけが動き続け、世界は止まった状態を意味している。
文字通り、時間を止めてしまうのだ。
そんな”追加ターン”の元祖である存在が、《聖剣炎獣バーレスク》だ。
9コストという重いコストのうえ、ターンの終わりに手札に戻って来るというデメリット、しかも進化クリーチャーなので進化元も必要と、とんでもなく扱いにくいクリーチャー。
しかし、ひとたび攻撃を通してしまえば、追加ターンを得られるという絶大なリターンも得ることができる。
マナさえ確保できれば、進化元と一緒に1ターンで召喚し、追加ターンに再度出し直して攻撃、という流れで延々とターンを獲得し続ける事が可能だ。
なぜ、今このカードの事を紹介しているのかというと、たまたま最新のカード達で劇的に強化されている事に気が付いたので、デッキを組んでみたからである。
というわけで、今回のデッキは《聖剣炎獣バーレスク》の、新しい形をご紹介しよう。
時間の伸長
この《聖剣炎獣バーレスク》が使いにくい原因は、何もそのコストだけではない。
攻撃を通さなければ追加ターンを得られないという、至極単純な点も弱点になっているのだ。
要するに、ブロッカー1体が居るだけで、このカードによる追加ターンの獲得は出来ないのである。
この弱点を克服するために、登場初期は《クリムゾン・ワイバーン》を1枚入れたタイプが主流であった。
大量のマナこそ必要だが、連続してターンを獲得し続けて攻撃するというのは、当時はこのカードにしか無い強みであった。
しかし、現代のデュエル・マスターズでは、追加ターンを獲得し続けて攻撃するという戦術は他のデッキでも使われている。
特に有名なのは、【青黒魔導具】と呼ばれるデッキだ。
このデッキは《堕∞魔 ヴォゲンム》によって山札の掘削・魔導具を墓地へ送るという作業を同時に行い、《「無月」の頂$スザーク$》を高速で戦場へと送り込み、《神の試練》により連続で追加ターンの獲得を目指すデッキだ。
圧倒的なリソース力と安定性を誇るこのデッキは、少しでもモタついた相手から時間を奪い取り、追加ターンを獲得し続けながら攻撃、あるいはデッキを削るという戦術がとれるデッキだ。
この圧倒的なカードパワーの前には、かつて使われていた戦術など無力だ。
しかし、だからといって諦める必要は無い。
相手も現代の力を使うのであれば、こちらも現代の力を使えば良いだけの話なのである。
かつて《聖剣炎獣バーレスク》の進化元は、最軽量でも《エグゼズ・ワイバーン》の3コストが最低値であった。
だが時代は進み、今では《メガ・イノポンドソード》という、GR召喚を駆使した進化元が登場している。
これで、11マナあれば、連続で《バーレスク》による攻撃が可能になっているのだ。
とはいえ、これでは1マナの差でしかない。現代デュエル・マスターズにおいては、もはや11も12も大差ない数値だ。
理想を言えば、この数字を1桁台まで下げたいところだ。
そんな要望を叶えてくれるカードも、つい最近登場している。
このギミックを組み込めば、マナを増やしながら《バーレスク》と進化元を手札に揃えるという、理想の動きが可能になる。
どちらも、1枚で2マナ分の加速が可能なカードとなっている。
連続攻撃に必要なマナは合計11なので、これを2回使えば、6ターン目には連続攻撃の準備が整うわけだ。
理想の動きとしては、毎ターン手札から1枚マナゾーンへ置くとして、
3ターン目:マナ加速(4マナ)
4ターン目:《ガイアッシュの海地図》または《インフェル星樹》により2マナ加速(7マナ)
5ターン目:《ガイアッシュの海地図》または《インフェル星樹》により2マナ加速(10マナ)
という流れだ。
4ターン目・5ターン目の動きは、《ガイアッシュの海地図》でも《インフェル星樹》どちらでも良いため、安定性は高いだろう。
問題があるとすれば、3ターン目初動のデッキが、果たしてアドバンスで通用するのかどうか、という点だ。
この点に関しては、特に問題ないだろう。
一つだけ注意すべき点があるとすれば、ある程度受けが固い必要があるという事だ。
3ターン初動でも問題ないとはいえ、相手が最大値で動いてきた場合では到底太刀打ちできない可能性もある。
そんな時に必要なのは、相手の攻撃を受け止められるだけの防御力に他ならない。
幸い、今回採用するであろう《ガイアッシュの海地図》も《インフェル星樹》も、どちらも受け札として機能するため、防御面の心配はなさそうだ。
次に考えるのは、初動となるカードだ。
この点に関しても、前回の記事で培った知識が役に立つ。
この《黒豆だんしゃく/白米男しゃく》は、3コストのマナ加速でありながら、コスト8の大型クリーチャーである。
つまり、《ガイアッシュの海地図》や《インフェル星樹》から綺麗に繋がるフィニッシャーになれる、という事だ。
フィニッシャーになり、しかもマナ加速であり、終盤ではマナ回収まで出来る万能カードだ。
初動は8枚積みたいので、残りの4枚の枠も決めたいところだ。
今候補として出ているカードの中には、火文明のカードがほとんど含まれていない。
それに加えて、マナ加速に重点を置いているせいか、自然文明に比重が大きく偏っている。
この状況から考えるに、デッキの中には多色カードが多くなる可能性が高い。
そういうデッキに好都合なマナ加速が、《Disメイデン》だ。
出た時にカードを引き、その後手札からカードをマナに置くため、山札の上から必要なパーツが落ちてしまうという事故を回避できる。
しかし、このカードの最大のメリットは、ターンの最初にマナに置いた多色カードをアンタップ出来るという事だ。
これにより、多色カードの枚数が多めになったとしても、ある程度は許容できるようになるのだ。
この手のデッキで多いのが、3ターン目にマナ加速し、4ターン目にコスト5のカードを使おうとしたら、多色カードしかマナに置けず1ターンパスしてしまう、という事だ。
《Disメイデン》は、その問題点を解消し、多色が多いデッキでもテンポを崩さずゲームを進める事が出来る、いわば潤滑剤のような働きもしてくれるのである。
そのうえ、ブロッカーも持っているため、いざという時の防御にも使える。このデッキの初動としては、申し分ない働きだろう。
これで序盤の動きは整った。
あとは、このデッキの根幹を担う《バーレスク》の足回りを固めていこう。
まず、先にも述べたように、《バーレスク》の弱点はブロッカーだ。
確かに追加ターンを得る方法としては容易な方ではあるが、ブロッカー1枚で攻撃も追加ターンも止められてしまうのは問題だ。
この点を突破するためのカードが、ここ最近で登場している。
それが、この《Dの天災 海底研究所》だ。
環境では、赤緑アポロやアナカラージャオウガを食い止めるために使われているカードだが、このデッキにおいては防御だけでなく攻めの札としても活用できる。
このカードを1枚設置するだけで、《バーレスク》の”ブロックされたら追加ターンを得られない”という弱点を克服できてしまうのだ。
そのうえ、上記した進化クリーチャーをフィニッシャーにしたデッキに対しても、時間稼ぎをする事まで可能になる。まさに、攻防一体のカードとなっているのだ。
弱点として、D2フィールドであるため、相手によっては張り替えが発生する可能性がある。
とはいえ、そんな事は滅多に起こらないので、気にする必要も無いだろう。
ここまでで、序盤の基礎も作り上げ、フィニッシャーや、それをサポートするカードまで選定ができた。
あとは、コンボデッキ特有の”パーツを集めるカード”を検討しよう。
パーツを集め、ついでに相手の攻撃を食い止める受け札になるカードであれば、尚良しだろう。
色も合い、そのような条件に合致するのが《ドンドン火噴くナウ》《勝太&カツキング-熱血の物語-》だ。
どちらも受け札となり、山札を掘り下げる事でコンボパーツを手に入れる事が可能になっている。
(このデッキがコンボと呼ぶべきか、ビッグマナと呼ぶべきかは迷うところではあるが、複数のパーツを組み合わせてゲームを終わらせるため、たぶんコンボデッキだと思う)
受け札と言いつつ除去でもあるので、このデッキの苦手とする《ボン・キゴマイム》への対処も可能だ。
ここまで出てきたカードで、おおよその役者は揃ったと言える。では、形にしてみよう。
デッキリスト
【メイン(40枚)】
【超次元ゾーン(8枚)】
【超GRゾーン(12枚)】
最後に解説してないのは、《同期の妖精》だ。
このカードはもはや解説する必要もないくらい、環境で見かけるカードだろう。
役割はご存知の通り、相手の除去を回避する事にある。
《聖剣炎獣バーレスク》の通りがいい環境といえど、確定除去などが全くない環境という訳では無い。
そういう場合に、《同期の妖精》を横に据えておけば、相手の除去を回避しながら連続攻撃が可能になるというわけだ。
また、呪文側の《ド浮きの動悸》も、除去兼手札調整として役立ってくれる。
どこまでも無駄のないカードである。
超次元ゾーンは、何かのデッキに擬態出来るのであれば、特にこだわる必要は無い。
ただし、《蒼き覚醒 ドギラゴンX》は使う機会があるので、これを入れつつ擬態出来る事を意識しよう。
超GRゾーンに関しては、主にブロッカー除去やアドバンテージ獲得を目指して採用している。
しかし、《地封龍ギャイア》というドラゴンが出たとたんに進化元が出なくなるという状況が発生しうるため、あえて《ドゥザイコGR》といった、出た時の能力を持たないGRクリーチャーを12枚採用するといったアプローチもあるだろう。
とはいえ、そこは環境を読む必要があり、超GRゾーンの中身のカードパワーを落としてまでやる必要があるかどうかは、その時々で考える必要があるだろう。
その他に
今回は、その他の採用を検討したカードを紹介しておこう。
《バーレスク》は遥か昔、20年も前から存在するカードなので、このデッキも相当息の長いデッキだ。
この先の未来も、何かのきっかけに使おうとする人が居るだろう。
そういう人のためにも、軌跡として何かを残しておこうと思う。
まず最初に紹介するのが、《禁断機関VV-8》だ。
水のコマンドなんて入ってたか? と思う人も居るだろう。
実は《ガイアッシュの海地図》が、水のコマンドである。
(コマンドであるタマシードでも、封印を剥がす事が可能だ)
当然《インフェル星樹》で封印を剥がす事も可能なので、思っている以上に封印を剥がす事は容易だ。
このカードを断念した理由は、単純にデッキの枚数が足りなくなるからである。
そもそも、ゲームが始まった時点でデッキが7枚も減っている状態なので、そこから更にこのカードを出す余裕が無い。
そのうえ、このカードの封印を剥がす《インフェル星樹》や《ガイアッシュの海地図》は、手札を補充してくれる関係上、デッキを削ってしまう。
実際に試してみたが、デッキの枚数が足りず、追加ターンの恩恵を受ける事は難しかった。
超GRゾーンに墓地対策を入れるかどうかも検討した。
これについては、環境による、としか言えない。
墓地対策が必要な対面が多い場合は、これらのカードを2枚ずつ採用し、墓地へのガードを上げるべきだろう。
今の環境は墓地利用を極端に対策する必要が無いため、今回は不採用にしている。
環境を見て、必要であれば積む程度で良いだろう。
進化元として《メガ・イノポンドソード》を採用しているが、超次元ゾーンに置ける《メガ・イノセントソード》に関しても、採用できないかを検討した。
結果的に今回は入れてない。
理由は単純に、クロスにコストが必要なため、進化元のコストとしては3マナ以上が必要になるためだ。
また、そもそも、超次元ゾーンからこのクロスギアを出すカードも必要になる。
ただし、《試作品 クロコギア》を使えば、なんと進化元を0コストで出す事が出来るという、かなり凄い動きが可能だ。
とはいえ、《クロコギア》は無色のクリーチャー。3色デッキである今回は色事故の懸念があたっため、断念する事にした。
この動きを採用するのであれば、デッキの構築を根本から見直す必要があるだろう。
終わりに
この記事が公開されてる頃には、既に最新弾「竜皇神爆輝」が発売されている頃だろう。
とはいえ、このデッキを紹介せず最新弾のカードへ目を向けるのももったいないと思ったので、今回はこのデッキを紹介する事にした。
実際、デッキのカードそれぞれに明確な役割を持たせ、リストとしても割と綺麗になっているので、構築は悪くないと思っている。
《聖剣炎獣バーレスク》という太古のフィニッシャーに加え、《クリムゾン・ワイバーン》という古代兵器まで採用できたのは、芸術点としては高いと自負している。
実をいうと、《クリムゾン・ワイバーン》は当初のところ全く入れる予定に無かったのだが、《ガイアッシュの海地図》により現実的なマナ域になる事に気付き、採用するに至った。
環境が環境なら、2枚採用しても良いほどに、使い勝手のいいカードになっているので、是非試してもらいたい。
こうやって見ていると、最新弾のカードを使う事で、太古のカードに再びスポットライトを当てられる良い機会になったのではないかと思う。
新しいカードを目にしたら、過去のカードにも目を向けてみるという事も、やはり重要だ。