深淵への覗き込み
デュエル・マスターズで自身が考える最強のカードは何か?
この問いに対して、常に持っている答えがある。
《母なる大地》
たった3マナで、除去やコンボパーツ、大型の踏み倒しや受けといったあらゆる役割を担う事の出来る呪文。
デュエル・マスターズにおいて、これを超えるパワーカードは今後も出ないだろうと言っても過言ではないほど、このカードは強力だ。
その強力さは、デュエル・マスターズ・プレイスでコスト7で登場してもなお、その後コスト8へと修正された事からも伺える。
それがテーブルトップでは3コストで使えたというのだから、凄い事である。
これほど強力なカードだが、デザインそのものも非常によく出来ており、その後も様々な派生カードが生まれている。
その中で最新の一枚が《深淵なる大地》だ。
S・トリガーの代わりにG・ストライクとなり、自分のアビス限定となった《母なる大地》である。
元の《母なる大地》と同じように、マナさえ並べれば3コストで大型のアビスを踏み倒す事ができる。
それだけでなく、同じアビスを出し入れする事で、そのアビスの出た時・離れた時の能力を使い回す事が可能だ。
しかし、大型のアビスを踏み倒すギミックは、既にメクレイドや革命チェンジといったものが存在している。
では、能力を使い回して嬉しいアビスは居るのか?
そして、それは強いのか?
今回はそんな疑問を形にしてみよう。
深淵の怪物
「アビス」は、まだ登場して1年ほどしか経っていない、真新しい種族だ。
その中にはもちろん強力なものも多いが、《深淵なる大地》と組み合わせるとなると、その数は限られてくるだろう。
《深淵なる大地》と組み合わせるのだから、重量級かつ相性の良いアビス、という条件で絞ってみよう。
そうすると、意外と早く、この条件に合致するアビスが居た。
相性抜群なアビス、《深淵の螺穿 ラゼル=ズバイラル》だ。
4つのモードの中から2つを自分が選び、自分が選んだ2つの中から相手が選んだ1つを自分が使えるという能力。
普通、相手に選択権のある能力はどうしても弱くなりがちというのが通説だが、このカードはそれぞれの能力が非常に強力であり、選べる能力は何かしら相手に被害を与えてくれるので、悪いカードでは無い。
そして何より、《ラゼル=ズバイラル》は離れた時にも能力がトリガーするのだ。
《深淵なる大地》で出し入れすれば、なんと2回も能力を使う事ができる。
相手に選択権があるとはいえ、こうなってきたら、話は別だろう。
《ラゼル=ズバイラル》を使い回せば、バトルゾーン、手札を制圧したうえで、シールドやマナゾーンにもプレッシャーをかけていく事ができるのだ。
が、当然それにも回数制限がある。
《深淵なる大地》は確かに強力だが、入れられる枚数は4枚しかない。
そう都合よく何枚も引けるとは限らないので、《ラゼル=ズバイラル》を出し入れするのも、せいぜい1回が限度だろう。
それに、《ラゼル=ズバイラル》自身を踏み倒すために《深淵なる大地》を使ったのであれば、2枚目を引き込まなければ使い回しは出来ない。
そうなると、そもそも《ラゼル=ズバイラル》を普通に召喚する必要がある事にも気付くだろう。
さて、困った。《ラゼル=ズバイラル》を普通に出すとなると、それ相応のマナが必要になるのだ。
以前、大型のアビスをメクレイドで踏み倒すデッキを紹介したが、メクレイドは少ないマナで大型のクリーチャーを踏み倒すギミックだ。
しかし、今回の《深淵なる大地》は、マナを溜める必要がある。
よって、アビス軸という構築では限界があるため、他のアプローチが必要になってくる。
単純にマナを増やすだけであれば、5→8へとジャンプできるカードが欲しいところだ。
更に言えば、ついでに手札も減らないくらいのカードパワーが欲しい。
その動きにうってつけのカードが《終末王秘伝オリジナル・フィナーレ》だ。
マナを増やしつつキーカードを探し、かつ除去まで出来る万能呪文。
その分、3文明が必要になるというコスト部分がネックになっている。
しかし、この色合いはアドバンテージを稼ぐ事に長けた色であるため、コンボデッキにとっては有利に働く点が多い。
という事は、今回のデッキはこの3色で組むという指針にもなったわけだ。
さて、色合いも決まった事だが、これだけでは少し足りない。
5→8へとジャンプするカードは4枚で良いのだろうか? という問題があるのだ。
このデッキの理想の動きは、3→5→8というマナカーブである。
3コストのマナ加速は既に大量に存在しているため、デッキに8枚搭載する事は簡単だ。
しかし、5→8が1種類だけでは、果たして理想の動きが安定するのか、いささか疑問だ。
せめて6枚、欲を言うなら8枚は欲しいところである。
そんな問題を解消できるカードが、なんと《深淵なる大地》と同じタイミングでリリースされていた。
《謀遠 テレスコ=テレス》は、赤黒アビスやデアリアビスといったデッキで採用される、早期に着地する事でリソース差を広げていけるアビスだ。
このデッキは3ターン目のマナ加速から4ターン目に着地を目指す必要があるが、このデッキでは4ターン目に安定して出せる事だろう。
そして、ひとたび出てしまえば、相手のリソースを削りつつ、自分のリソースを伸ばす事が出来るのだ。
《ア:グンテ》は、なにがなんでも強力という訳では無いが、万能な除去であり、S・トリガー・プラスにより強烈な防御力を誇るカードだ。
普通に出しても、相手のコスト5以下の厄介なカードを対処できる。
それに加え、いざという時は複数除去も出来たりと、マナに置いて見せるだけで、相手のプランに影響を与えるカードだ。
この2種類のアビスを4枚ずつ搭載すれば、アビスは12枚。枚数としては十分だろう。
では、これらを踏まえたうえで、デッキにしてみよう。
完成化
というわけで、リストがこちらになる。
やりたい事は、《深淵の螺穿 ラゼル=ズバイラル》を《深淵なる大地》で使い回してリソース差を広げ、相手を仕留めることだ。
リソースを広げるだけでは勝てないが、《ラゼル=ズバイラル》にはシールドブレイクのモードもあるので、このモードを隙を見て選ばせる事で、相手を追い込もう。
一番良いタイミングは、《深淵なる大地》で出し入れし、能力を2回トリガーさせたときだ。
1回目の解決でシールドブレイクのモードを含めた選択を相手に押し付け、もしシールドをブレイクできたら、次は相手の手札を奪うモードを押し付けよう。
それ以外のモードには、バトルゾーンの壊滅、使えるマナの制限といったモードなので、何かしら相手の自由を奪えることだろう。
そうやって少しずつ相手を追い込み、時には攻撃して相手を仕留める。
それが、このデッキの動きだ。
《深淵なる大地》は、当然だがデッキに4枚しか入る事はない。
しかし、それらを何度も使いこなすため、《サイバー・K・ウォズレック》も搭載している。
こちらは、相手の手札を叩き落した後、その中にある呪文を奪う事も可能なので、覚えておこう。
《黒豆だんしゃく/白米男しゃく》は、3ターン目のマナ加速であり、フィニッシャーも兼ねている。
このクリーチャーもコスト8のため、《ガイアッシュの海地図》で軽減する事が可能なのだ。
このカードが出てしまうと、相手がリソースを伸ばすために出すクリーチャーは、ことごとくバトルゾーンに残る事が出来なくなる。
《ラゼル=ズバイラル》でバトルゾーンを壊滅させたら、このクリーチャーで蓋をしてやろう。
目指すべきは《ラゼル=ズバイラル》と《深淵なる大地》のコンボであるが、必ずしも、これに拘る必要は無い。
もし攻め込む事が出来るのなら、コンボを度外視して、普通に殴り込みをかけるのも良いだろう。
大型クリーチャーを出しやすくなっているこのデッキであれば、そういうプレイングも十分に可能だ。
コンボデッキを使う上で重要な事は、コンボの成立に拘り過ぎない事だ。
あくまで、目指すべきは勝利であり、コンボを完成させる事では無い。コンボの完成は手段であり、目的ではないのだ。
終わりに
”母なる”系列の呪文といえば、今の環境では《母なる星域》が大活躍している。
このカードを最もうまく使っているアナカラージャオウガは、さながら、全盛期のボルバルザークを彷彿とさせる動きだ。
たった3マナで大型のフィニッシャーを戦場に送り出せるというのは、いつの時代も、強力なのである。
そういう意味では、今回使った《深淵なる大地》も、後々強力な呪文になる可能性は非常に高い。
アビスは今後も強化が期待できる種族だけに、ほぼ確実に、何かしらのフィニッシュ手段として運用されると考えて良いだろう。
特に、大型のフィニッシャーを出すだけでなく、今回のように”出た時”能力を使い回すという使い方も、十分に出来るカードだ。
今後のアビスの中には、出た時、離れた時に強力な能力をトリガーさせるものが出てくる事だろう。
そんなカードと組み合わせれば、このカードはいくらでも、際限なく可能性を広げていけるのだ。
深淵というだけに、このカードの底も、まだまだ知れない。