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2024.1.26

【第54章】パンドラの箱 | プラズマの未開地探求録

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【第54章】パンドラの箱 | プラズマの未開地探求録
目次

暗闇の根源

最新弾「竜皇神爆輝」で収録され、登場と同時に、瞬く間に環境に姿を現した存在がある。


それが、《DARK MATERIAL COMPLEX》だ。


たった1コストでパワー25000という破格のスペックを持つこのクリーチャーは、”七転び八起き”のごとく、下に8枚のカードが置かれていない限りアンタップする事が無い。


下にカードを置けるタイミングは、自分のターンのはじめか、クリーチャーがバトルゾーンを離れた時である。


一見すると条件は厳しいように見えるかもしれないが、使ってみると、割と簡単に条件を達成できることを実感するだろう。


この恐るべきフィニッシャーは、【アナカラージャオウガ】に搭載されたことをはじめとし、様々なデッキに採用されていった。


そんな中で登場したのが、新たなアーキタイプともいえる【コンプレックス】だ。


かつて【JO退化】と呼ばれていたギミックを使って《「復活」の鬼 ヨミノ晴明R》を早期に繰り出し、その的として《COMPLEX》を使うという戦法だ。


《「復活」の鬼 ヨミノ晴明R》は、「相手がバトルゾーンのカードを選ぶ時、かわりに自分が選ぶ。」という、かなり特殊な能力を持っている。


このカードは確かに優秀な能力であるのだが、自分の他のカードがバトルゾーンに無ければ何も出来ないという問題があった。


そのウィークポイントを克服したのが、《COMPLEX》だ。


このカードは、下にあるカードが7枚以下だと、バトルゾーンを離れる事が無い。


つまり、延々と《ヨミノ晴明R》の的として運用する事が可能となり、これでメタクリーチャーを安全に運用する事が可能となったのだ。


そして、《COMPLEX》は当然フィニッシャーにもなる。


その攻め込むタイミングにも、《ヨミノ晴明R》の能力によって単体除去などを無力化しながらゲームを終わらせる。


今は、【マジック】が幅を利かせる環境のため、メタクリーチャーを守ることが出来るこのデッキは、環境に噛み合っているのだ。


そんなデッキだが、回してみた感想としては、どうしても出力のムラが激しいと感じている。


という色合いは、除去と攻撃に特化した色だ。


コントロールも可能なカラーリングではあるが、リソースの確保は苦手という弱点がある。


このデッキはコンボデッキではあるが、リソース確保が難しいという事は、コンボの安定性に不安があるのだ。


つまり、キーカードを引き込めない時の出力の低さが致命傷になりかねないのである。


今回は、出力の不安定さを解消しつつ、このデッキの強みを更に出せる構築が無いか、探してみる事にした。

黄泉からの橋

まずは、【コンプレックス】というデッキを振り返っておこう。


先にも述べた通り、このデッキの狙い目は《ヨミノ晴明R》《DARK MAERIAL COMPLEX》の組み合わせにより、盤面の除去を困難にしてしまう事だ。


これにより、相手に対してのメタクリーチャーを盤面に維持する事が可能となり、《COMPLEX》のカードが溜まるまでの時間を稼ぐ事が可能なのだ。


そして、いざ《COMPLEX》が動き出した際は、シールド・トリガーやガード・ストライクなどといった受け札を、《ヨミノ晴明R》の能力で無力化してとどめを刺す。

採用されるメタクリーチャーは、主に踏み倒しを牽制するものが採用されている。


《赤い稲妻テスタ・ロッサ》、そして《ルピア炎鬼》だ。


この2枚はいずれも、召喚以外でクリーチャーを出す事を咎めるカードだ。


除去耐性が無いため、バトルゾーンに維持する事が少々難しかったこれらのカードも、《ヨミノ晴明R》によって、より強力なクリーチャーへと変貌する。

これらのカードを使って《COMPLEX》を育て上げ、《ヨミノ晴明R》による除去回避を伴って相手を仕留める。


しかし、いくら強力なコンボといえど、これらを揃えられなければ意味が無い。


そんな問題を解決するギミックとして採用されているのが、エスケープ持ちクリーチャーと、自分のクリーチャーを破壊するカードとの組み合わせだ。


自分のクリーチャーを能動的に破壊するというカードは、《COMPLEX》を育てていく際にも活用できるため、無駄がない。

これらを駆使してパーツを集め、ゲームを終わらせる、これが【コンプレックス】だ。


確かに非常に合理的に構築されたデッキだが、先にも述べたように、出力のムラはどうしても気になる。


それに、コンボが成立した後の支配力こそ凄まじいが、それまでの間は、効果的な除去が打てないという点も懸念材料だ。


《ドゥポイズ》が除去としての役割を担っているが、相手が自分で選ぶため、横に展開された時に狙ったクリーチャーを対処できない、という問題もある。


強力である事に間違いないこのデッキだが、何か別のアプローチで強化ができないか? というのが今回のお題となる。




まず、このデッキの強みを理解しよう。


このデッキの一番の強みは、《COMPLEX》《ヨミノ晴明R》による、盤面への干渉を徹底的に妨害するという動きだ。


除去を吸い寄せるだけでなく、相手が自身のクリーチャーを選ぼうとしても、それすら妨害してしまう。


一番良い例が、《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱えられた時だ。


この呪文の一番下の効果である「最初の攻撃の終わりに、そのクリーチャーをアンタップする」は、自身のクリーチャーを1体選ぶ効果となっている。


よって、《ヨミノ晴明R》で相手が望まないクリーチャーを選んでやれば、相手は追撃が出来なくなるのだ。


この盤面を構築する事が、このデッキの目的だ。


そして、その強固な盤面を構築するために用いられているコンボが、《モモキングダムX》による退化である。


これは【JO退化】でも用いられた手法で、これを応用して《ヨミノ晴明R》を出す、というものである。


ここで、《COMPLEX》《モモキングダムX》というカードの共通点に気付く事だろう。


そう、どちらも低コスト高パワーという点だ。


これが何に活かせるかというと、このカードとの相性が抜群に良いのである。

《闘争と成長の決断》だ。


コスト5の呪文であるが、自分がパワー6000以上のクリーチャーを出していると、なんと3コストで唱える事が可能だ。


パーフェクト呪文の名の通り、3つのモードを持っている。


その中でも、自分のクリーチャーと相手クリーチャーをバトルさせる効果は、《COMPLEX》《モモキングダムX》を擁するこのデッキであれば、実質的な確定除去となるのだ。


また、3ターン目にこの呪文を唱える場合、マナ加速のモードを2回選ぶことで、4ターン目に《ヨミノ晴明R》を普通にコストを支払って出すという事も可能になる。


残る、クリーチャーではないカードを除去するモードだが、これは【アポロ】のタマシード除去にも使えるので覚えておこう。


このように、この呪文はこのデッキと抜群の相性を誇るのだ。


懸念があるとすれば、このカードが自然文明という点だけだ。


であれば、このデッキに自然文明を足すというアプローチが見えてくるだろう。




自然文明を採用するにあたって、このデッキと噛み合いの良いカードがある。

それが《キユリのASMラジオ》だ。


このデッキのコンボパーツは、大抵がコスト3以下に集中している。


そのため、山札上5枚の中からコスト3以下のクリーチャーを2体も踏み倒せるこのカードも、抜群の相性だと言えよう。


うまくいけば、一気に《モモキングダムX》の退化を狙う事も可能になる。


それに、元々リソースが細いこのデッキにとって、1枚のカードで2体のクリーチャーを展開できるという点でも、非常に強力なカードである。


唯一《ルピア炎鬼》と相性が良くないという問題はあるが、この点はプレイングでカバーしていく事にしよう。


という訳で、現段階でのリストを見てみる事にしよう。

自然の力を借りて

4

4

3

4

4

3

1

4

4

2

4

3

いったん組み上げたリストが、こちらになる。


自然文明を搭載し、《キユリのSAMラジオ》《闘争と成長の決断》によってアドバンテージを稼ぎつつ、《ヨミノ晴明R》《COMPLEX》という盤面の構築を目指す。


《ヨミノ晴明R》は、横に的を置かなければ効果が薄いという弱点があったが、これは《ASMラジオ》の横展開によってカバーする事ができる。


これにより、《COMPLEX》を引けなかったとしても、ある程度の除去耐性は保証されるわけだ。


《荒廃と豊穣の決断》は、マナや墓地に落ちている《モモキングダムX》《COMPLEX》を引き出すために使う事ができる。


そのうえ、いざとなったら相手の小型を一掃する事にも使えるという、非常に器用な呪文だ。




この形を使ってみたところ、この構築では問題がある事が分かった。


まず、《雪溶の鎖/堕牛の一撃》《ASMラジオ》の噛み合いの悪さだ。


《堕牛の一撃》は、《モモキングダムX》を退化させつつ手札を補充できるという、非常に優秀な呪文である。


手札リソースが乏しいこのデッキにとって、この呪文は貴重なカードではある。


しかし、《ASMラジオ》で捲れた時にはクリーチャー面を使うため、どうしても出力に乏しいカードとなってしまうのだ。


どうせ《ASMラジオ》を搭載するのであれば、このような本来の役割から遠くなってしまうカードは極力削りたいところだ。


次に弱みを感じたのは、試しに入れてみた《荒廃と豊穣の決断》だ。


確かに、墓地やマナから《ドゥポイズ》《モモキングダムX》、果ては 《COMPLEX》を引っぱり出す事ができるのは、自然文明を入れる大きな利点となる。


しかし、器用貧乏過ぎる。


マナから出せば使えるマナが減るし、墓地から出すには、山札を削る必要がある。


山札を削るという事は、《COMPLEX》の下にカードを溜め込む都合上、デッキの枚数という寿命がゴリゴリと削れていくという事だ。


また、相手クリーチャー全体のパワーを下げる効果も、2回使っても2000しか下がらないという点で、現代のデュエル・マスターズでは心もとない。


これらの弱点を補えば、もう少し良い感じのデッキになるのではないだろうか。




まずは、《ASMラジオ》でもったいない枠となってしまった《雪解の鎖》を他のカードへ変更する事を検討しよう。


このカード最大のウィークポイントは、《ASMラジオ》で捲れた時だ。


よって、《ASMラジオ》で捲れても、普通に使っても、《モモキングダムX》の退化に貢献してくれるカードが望ましい。


そんなカードがあるのかというと、実は存在している。

そう、《わかりミーア♥》だ。


出た時に自身のクリーチャー1体をマナに送る必要があるという、一見するとメリットともデメリットとも思える能力をもつクリーチャー。


このクリーチャーであれば、普通に使ってもマナ加速になるし、《モモキングダムX》の退化にも使う事ができる。


そのうえ《ASMラジオ》で出す事も可能で、普通に出す際もバズレンダを使えば、不要なクリーチャーをマナに送ることで《COMPLEX》の下にカードを溜め込む事も可能だ。


1ターン目に出した《COMPLEX》をマナ送りの対象に選ぶことで、マナ加速は出来ないものの2ターン目にパワー3000を立てるという動きも可能になっている。


このデッキにとって救世主と呼べるほどの相性の良さだ。


また、このデッキはマナ基盤が非常に怪しいデッキでもある。


2ターン目に《モモキングダムX》を出すには、2ターン目に火・闇のマナを1枚ずつ揃える必要がある。


しかし、このデッキでリソースを爆発的に稼ぐのは《キユリのASMラジオ》、自然文明だ。


つまり、早期に3色のマナを揃える必要があるという事だ。


残った枠で、この問題も解決したい。そんな時にうってつけのカードが、自然文明には存在している。


”見たら焼け”で有名な鳥、《極楽鳥》だ。


とりあえず自然文明が1枚あれば、2マナで全色のマナとして活用できる。


このカードがあれば、マナ基盤を多少ごまかして構築する事が可能だ。


2ターン目にこのクリーチャーを召喚し、即座に闇マナとして使う事で《COMPLEX》まで繋げる事も可能になっている。


そうすると、2ターン目にマナ加速したうえに《COMPLEX》を立てるという事になるので、次のターンに《ASMラジオ》《モモキングダムX》の退化まで狙え、一気に盤面の構築を狙う事も出来る。


難攻不落の盤面が唐突に完成すれば、相手の対処を迫る前に追い込む事が出来るだろう。


おおよそ改良案が見えたので、形にしてみよう。

デッキリスト

4

4

3

4

4

4

4

2

1

4

2

4

というわけで、出来上がったリストがこちらになる。


目的は【コンプレックス】と同じであるが、そこに至るまでのアプローチとして《キユリのASMラジオ》や、退化せずそのままマナ加速で《ヨミノ晴明R》を戦場に送り込むといった動きが可能になっている。


《極楽鳥》は、マナ加速でありマナ基盤でもあり、いざという時は《ヨミノ晴明R》の能力で、相手の除去の的としても機能してくれるだろう。


《ヨミノ晴明R》は他のクリーチャーが並べば並ぶほど、その能力を発揮してくれる。そういう意味では、このデッキの展開力は非常に相性が良い事が分かるだろう。


そして、横展開が可能という事で、《弾丸超邪 クロスファイア》も出しやすくなっている。


いざとなったら、盤面が固まる前に攻め込むというプランもとりやすくなっているのだ。


2ターン目に《極楽鳥》から《COMPLEX》を出したり、《闘争と成長の決断》でいきなり相手の盤面を壊滅させたり、マナ加速から普通に《ヨミノ晴明R》を出したりと、【コンプレックス】と比べて非常に器用な動きが可能になっている。


戦った相手にしてみたら、予想外のタイミングでフィニッシャーが飛び出してくるので、対処に困る事だろう。


とはいえ、手札リソースが切れやすいので、初手を見た段階で、どのようなゲームプランを組み立てるかを考える事が重要だ。


何も考えずにカードをマナに送っていくと、3ターン目頃には何も出来ない手札が残ってしまう。そうならないよう、常に”次に何ができるか”あるいは”次に何をやるか”を意識しながら立ち回ろう。




このデッキが【コンプレックス】より弱体化している点として、ブロッカーの少なさがある。


一見すると堅牢なバトルゾーンに見えるかもしれないが、防御という点で言えば《ヨミノ晴明R》がブロッカーを持っている程度である。


よって、横をすり抜けて攻め込まれると、シールド・トリガーも無いため、瞬く間に敗北してしまう。


そうならないように、常に相手の脅威を取り除きつつ、《COMPLEX》の起動を急いでいこう。

終わりに

今回は、【コンプレックス】の改造型を紹介した。


使ってみると、意外とトリッキーな動きをするので、使っていて楽しいデッキである。


が、今回のデッキが完成形かと言われると、そうではないだろう。


上記でも述べている通り、受けが脆くなっているという弱点もあるので、この点が気になるのであれば、補強する構築を模索するのも良いだろう。


あるいは、このデッキから発想を得て、新たな何かを作るのも良し。


《DARK MATERIAL COMPLEX》は、まだ未発見の使い道が山ほどあるように思えるカードだ。


強力無比なフィニッシャーでありコンボパーツにもなるという点においては、他に類を見ないほど優秀なカードと言える。


今後も、新しいデッキを考える際には、採用を検討できるカードだろう。

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このコラムのライター

プラズマ

プラズマ