限られた世界での戦い
世間では、全国大会2024店舗予選が始まっている。
店舗予選とは、全国大会への切符をかけたエリア予選、その参加権をかけた、いわば前哨戦の前哨戦である。
この戦いを切り抜けた者がエリア予選へと進み、エリア予選を抜けた者が全国大会へと駒を進める事が出来るという訳だ。
一見すると、狭き門だ。
しかし、この方法以外で全国大会へ行くためには、ランキング上位に入る・超CSやグランプリで最上位を目指す必要があるなど、それらと比べれば誰もがチャンスを掴める大会である。
そんな大会で採用されるフォーマット、それが『2ブロック』だ。
基本的には直近2年間に発売されたセット(「超感謝祭 ファンタジーBEST」のような特殊なセットを除く)に収録されたカードのみが使えるフォーマットであり、限られたカードプールという事もあって、かなり実力を試されるフォーマットでもある。
また、普段は大型大会などがあまり開催されないフォーマットであるためか、研究があまり進んでいないという事も特徴だ。
現在の2ブロックは、火水マジック、闇自然ゼニス、光闇メカ、水自然ジャイアントといったデッキを筆頭に、様々なデッキが活躍する非常にバランスの取れたフォーマットである。
しかし、上記で述べたように研究があまり進んでいないことから、まだまだ未知のデッキが眠っている可能性も大いにあるのだ。
現にこれらの環境の合間を縫うように、受けに特化したデッキが環境に姿を見せ始めている。
これらのデッキは、王道篇第2弾「カイザー・オブ・ハイパードラゴン」で強化されたというのもあるだろうが、今までにないアプローチで構築されたものだ。
このような環境であるならば、過去に作った水闇ゼニスも、更に改良することで活躍させる事が出来るのではないか?
という訳で、今回は過去のデッキをベースに、2ブロックの新たな可能性を探ってみたいと思う。
勝ち筋を探して
以前に作成した水闇ゼニスは、確かに強力なデッキであった。
しかし、決定打に関しては非常に乏しく、確かに《「呪怨」の頂天 サスペンス》は強力なフィニッシャーであるものの、相手の反撃は甘んじて受けてしまうものであった。
この弱点は、2ブロックで構築する際にも顕著である事は間違いないだろう。
よって、今回の一番の問題は、この弱点の克服という事になる。
普通に攻撃するのではなく、相手の反撃を許さない攻撃が必要だ。
それも、2ブロックのカードプールの中で、である。
まずは2ブロックという概念に囚われず、反撃を許さない攻撃について改めて考えてみよう。
一番最初に思い浮かぶのは、相手のシールド・トリガーなどといった逆転手段を使わせない方法だ。
しかし、こうしたカードは2ブロックには数が少ない。
あの火水マジックすら、シールド・トリガーをケアする手立てが採用されていないところを見ると、やはり難しいと考えるべきだろう。
よって、他のアプローチを考える必要がある。
第2の方法として思い浮かぶのは、山札切れを狙う方法だ。
相手の山札からカードが無くなるのを待ち続け、一切攻撃することなくゲームを終わらせる。
相手の反撃を止められないのであれば、そもそも攻め込まない、というのも一つの手だ。
しかし、これもまた、水闇ゼニスでやる事でもない。
この手のデッキで最も現実的なのは、ひたすら防御に徹するデッキだ。
シールド・トリガーを大量に採用し、シールドを追加し、ブロッカーで固めるタイプのデッキである。
攻撃をひたすら耐え続ければ、勝つ事はできないが負ける事も無い。
そして、負ける事が無いという事は、相手が倒れるまで待つ事が出来る、という事なのである。
なお、この戦いには常に制限時間という天敵が存在する事を忘れてはならない。
今回の話の本筋とは少しズレるが、遅いデッキを使うのであれば、時間内に終わる努力はしよう。
制限時間内に対戦を終わらせる努力は、お互いのプレイヤーにとっても大事なことだ。
さてさて、それでは、水闇ゼニスにとって反撃を許さない攻撃とは、どういった方法なのだろうか。
考え得る第3の方法は、相手に反撃する時間を与えない事だ。
要するに、追加ターンを取り続け、相手にターンを渡さないという事である。
相手にターンが回らなければ、相手は攻撃を耐える事が出来ても、決して勝つ事は出来ない。
自分が山札切れを起こすという可能性もあるだろうが、上に載せた《♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を一度でも唱えると、その対戦中は山札切れで負ける事は無い。
つまり、相手がどれだけ反撃の狼煙をあげようとも、決して相手は反撃する事が出来なくなるのである。
この方法であれば、2ブロックでも達成する事が可能だ。
そう、現実的に考えなければ、である。
天頂ではなく天底へ
《♪必殺で つわものどもが 夢の跡》で追加ターンを取り続ける方法は、2ブロックでも存在する。
このカードと《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》を2枚組み合わせる事で、毎ターン追加ターンを獲得し続ける事が可能になる。
この組み合わせはマナを増やすと唱える回数を増やしていけるため、結果的に毎ターン追加ターンが増えていき、好きなだけ追加ターンを獲得できる状況にまで持ち込めるのだ。
この状況に持ち込むには、自分の山札を掘り切る必要がある。
そもそも《♪必殺で つわものどもが 夢の跡》で追加ターンを獲得するには、これを唱えて5枚引いた段階で山札が0になる必要がある。
つまり、これを唱える時点で、山札を5枚以下にしなければならないのだ。
要するに、目指すべきは”天頂”ではなく”天底”という事である。
この動きは、いくら水闇ゼニスといえど、困難な事だ。
この動きや展開を可能にするためには、もっと高速で山札切れを起こす必要がある。
そんなアプローチを可能にするには、根本的にデッキを変える必要があるだろう。
そして、それを可能にしてくれるデッキが存在する。
それは、闇自然ゼニスだ。
《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》は、出た時に山札を3枚減らす事が可能なゼニスだ。
恐らく、発売当時新規で登場したゼニスの中でも最強格の1枚であり、そのカードパワーは2ブロックでも圧倒的である。
これを防御兼攻め手とし、相手のリソースを奪う手段として《「呪怨」の頂天 サスペンス》を採用したものが、闇自然ゼニスだ。
このデッキはマナ加速を行い、複数の《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》を並べる事から、山札の枚数が非常に減りやすいという性質がある。
これを利用すれば、高速で山札を減らし、追加ターン獲得へとつなげる事が出来るかもしれない。
よって、新たなデッキとしての方針は、水自然ゼニス、という事だ。
どちらも山札を減らす事が得意であり、そして、それが弱点にもなり得るカラーリングである。
しかし、今回は山札を減らしていく事が目的なので、むしろ長所になる。
そして、ここで水闇ゼニスで大活躍していた、あるクリーチャーが真の力を発揮するのだ。
そのクリーチャーとは、《埋没のシダン オリーブオイル》だ。
バトルゾーンに出た時、自分のマナゾーンにある無色カードの数だけカードをドローし、手札を1枚捨てるというクリーチャー。
このデッキでは《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》により大量の裏向きマナを確保できるため、このカードで一気に大量ドローが可能となる。
《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》を出すためには大抵の場合4枚の裏向きマナが必要であり、これで最大3枚もの裏向きマナが供給されるため、次のターンには7枚程度のドローが可能になるだろう。
そこから次の《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》を引き込んだりすれば、加速度的に山札を削っていく事が可能だ。
更に相性が良いことに、これらのパーツは全てクリーチャーであるため、《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》で捲れたとしても、手札に加える事でマナ落ちを回避する事もできる。
どの手段でもパーツを手札に加えていく事が出来るので、もはやデザイナーズコンボではないかと見紛うほどだ。
これらのアプローチを元に、新たな水自然ゼニスの完成を見てみよう。
デッキリスト
水14枚、自然18枚、無色8枚。
多色を入れると多少は改善されるが、マナ置きの事故に繋がるので、いったんは無しで構築した。
やる事は単純で、山札を掘り進め、《♪必殺で つわものどもが 夢の跡》で追加ターンを獲得し続けていく、という事だ。
山札を掘り進める動きは、《シャングリラ・クリスタル》や《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》、大量の裏向きマナを揃えてから繰り出される《埋没のシダン オリーブオイル》によって容易に達成できるだろう。
それまで相手の攻撃を耐える必要があるが、そこは《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》や《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》で耐え凌ごう。
どちらも相手の攻め手を緩めつつ、自分の山札を掘り進めていくことができる、このデッキのフィニッシャーと呼ぶに相応しいゼニスだ。
《タブラサ・チャンタラム》は、自分のゼニスを出した際に、一度だけ裏向きマナを全てアンタップさせる事が可能になる。
これを出しておけば、《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》を出し、増えたマナを起こすことで、さらに《埋没のシダン オリーブオイル》+《♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を使って一気に山札を引き切るという動きも可能だ。
相手にしてみれば、突然自分のターンが回ってこなくなる、恐ろしい光景となるだろう。
もちろん、追加ターンを獲得する余裕が無い場合は、普通に攻め込んでも良い。
ゼニス達は大型なうえ、裏向きマナが増えれば増えるほど盤面に並べていく事も容易のため、それだけで相手を圧倒する事も出来るはずだ。
このデッキを使ううえで注意するべき点は、表向きのマナをどれだけ確保するか、という点だ。
新型のゼニスは、裏向きのマナを多数使う事で真価を発揮するデザインとなっている。
しかし、このデッキでは1ターンで複数の有色の呪文を使う必要がある。
そのため、裏向きのマナだけを闇雲に増やしても、目的の動きには到達できないのである。
最低でも、水のマナを2枚、自然のマナを1枚確保する事を意識しよう。
この管理さえしっかりしておけば、時間すら捻じ曲げるゼニスの軍勢で勝利を掴めるだろう。
終わりに
今回は初の試み、2ブロックのデッキ紹介としてみた。
今は店舗予選真っただ中。
隙あらば、誰もがその勝利を目指して頑張っている頃だろう。
だが、この関門を突破できるのは、限られた人数だけである。
頑張ったからといって、必ずしも、その結果が伴うとは限らない。
しかし、結果を出す人間は、必ずどこかでなにかを頑張っているものだ。
そのために、新たな可能性を探るか、既にある可能性に賭けるか、それは人それぞれ自由だ。
だが、どんな結果になったとしても悔いが残らない、そんな頑張り方をしてもらいたいものだ。