その23~統率者王国の未亡人、アヤーラで良き生け贄ライフを~
●生け贄の宴が始まる
みなさんこんにちは! 生け贄、捧げてますか?
いつになく導入が雑だなおい。
「生け贄に捧げる」
-Sacrifice-
マジックプレイヤーなら「アッポイントカード無いです」と同じくらい数多く口にしたワードだと思います。
この「生け贄に捧げる」というワードはマジック黎明期からある由緒正しい言葉で、初めてマジックのテキストを読んだ時に「すごい! 闇の儀式だ」という感じでワクワクしたことを憶えています。
こんなにも「生け贄に捧げる」というワードがカジュアルに出てくるの、マジックか旧約聖書くらいしかないですからね。
一般常識からしたら生け贄はダークなイメージですが、マジックにおける生け贄は勝つために選択するポジティブな生け贄です。ポジティブな生け贄って何???
というわけで今回はこの「生け贄」に注目したクリーチャーで統率者を組みます。採用する伝説のクリーチャーはこちら!
《王国の未亡人、アヤーラ/Ayara, Widow of the Realm》
伝説のクリーチャー — エルフ(Elf) 貴族(Noble)
(T),クリーチャーやアーティファクトでありこれでない1つを生け贄に捧げる:対戦相手やバトルのうち1つを対象とする。王国の未亡人、アヤーラはそれにX点のダメージを与え、あなたはX点のライフを得る。Xは、その生け贄に捧げたパーマネントのマナ総量に等しい。
(5)(赤/Φ):王国の未亡人、アヤーラを変身させる。起動はソーサリーとしてのみ行う。((赤/Φ)は(赤)でも2点のライフでも支払うことができる。)
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《炉の女王、アヤーラ/Ayara, Furnace Queen》
〔黒/赤〕 伝説のクリーチャー — ファイレクシアン(Phyrexian) エルフ(Elf) 貴族(Noble)
あなたのターンの戦闘の開始時に、あなたの墓地にありアーティファクトやクリーチャーであるカード最大1枚を対象とする。それを戦場に戻す。それは速攻を得る。次の終了ステップの開始時に、それを追放する。
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●生け贄の女王を知る(アヤーラってどんなカード?)
《王国の未亡人、アヤーラ/Ayara, Widow of the Realm》/《炉の女王、アヤーラ/Ayara, Furnace Queen》はクリーチャーかアーティファクトを生け贄に捧げることでライフをドレインする表のモードと、戦闘の開始時に条件付きですが墓地のクリーチャーをリアニメイトしてそのまま殴らせる裏のモードを持つクリーチャーです。
ストーリーを軽く読んでみましょう。どれどれ・・・この生け贄に捧げられてるの結婚相手っぽいですね。カマキリのメスかな??
テキストをそのまま読むと、「自分のクリーチャーやアーティファクトを生け贄に捧げて序盤を耐え忍び、変身後に生け贄に捧げたそれらのカードを再利用しよう」と書いてありますがもちろんそんなことはしません。
「主人公が村の因習で生け贄に選ばれる系のホラー映画」に慣れた現代人ならおわかりですね。表面で使用する生け贄は村の外-たいせんあいて-から調達します。ようこそホルガ村へ!
パクったクリーチャーを生け贄に捧げて借りパクすることが許される唯一のゲームがマジック:ザ・ギャザリングです。言い方!!!
(編注:オーナーは変わりません)
残念ながら裏面でリアニメイトするカードは自前で用意しないといけないので、そのカードも戦場なんて経由させず直接墓地に叩き込みます。産地直葬!
テキストをよく見るとリアニメイトしたクリーチャーは終了ステップの開始時に追放されてしまいますが、その前に生け贄に捧げることで何故か追放されず墓地に戻って次のターンもリアニメイトできます。
あらゆる手段を駆使して追放なんてさせず、積極的に生け贄に捧げることでデメリットを無視し何度もリアニメイトしましょう。ブラック企業みたいだぁ。
というわけで表面と裏面で「生け贄に捧げる」というテーマは共通していますが、表面と裏面で毛色の違った能力を持っています。
こういうところが変身クリーチャーの面白いところですね。
季節の移ろいのように絶えず変化する生々流転な生け贄を堪能してください。生々流転な生け贄って何???
統率者のレベルですが、目指すべきレベルは境界線がふわっとしていることでおなじみの5-6ではありません。
ましてや情け無用の金網デスマッチな7以上でもないです。
タイトル斉唱! せーのっゆるふわマジックであそぼう!
というわけで極限までゆるふわなレベル。
「レベル4」を目指します。
でもどうやってレベル4を目指せばいいんでしょう。簡単です! 自主的にパイオニアプールで縛ります。
これが昨今の「レベル5-6の境界線よくわかんない問題」に対するファイナルアンサーです。
自ら縛りを課すことでより強力な力を得るのはバトル漫画のお約束です。このデッキもデッキパワーの底上げを・・・底上げを・・・底は下がるなぁ。
実際にパイオニアプールで縛るとどうなるんでしょう。
とりあえず統率者専用カードは使用できませんし、モダンホライゾンのような強力なセットのカードも使用できません。
そして何よりも、マナ・アーティファクトにマナ加速を頼っているカラーは、選択肢が絶望的に無くなります。
2マナのマナアーティファクト、マジでこの2枚しか無かった・・・。
古の強力なカードや統率者専用のカードが使えないということよりも、想像以上にマナ基盤がしんどいです!
ポケモンダ◯パのほのおポケモンばりに選択肢が無い!!
「採用できるカードの弱体化」ではなく「採用カードが無い」なのでとてもつらい!
マナ加速で色マナのサポートができないので、いつも以上に2色土地を優先して採用します。土地を引かないと死ぬので枚数も多めにしましょう。
パイオニアだとフェッチランドは禁止だけど許して! 自主的にプール縛ってるだけだから許して!
こんな感じでどう考えてもレベル5-6の水準になりようがない縛りを設けているので堂々と「レベル4ですが何か?」という顔ができます。
仮にやむを得ない事情でレベル4でなかったら足元のダイナマイトが爆発するスリリングな統率者で遊ぶことになっても安心ですね。
ちなみに自分は今ドラゴンスターに銃口を突きつけられながらスリリングに記事を書いています。
(編注:突きつけていません)
●生け贄の目録を見よ
こちらが「生け贄に捧げる」を遊び尽くすデッキリストです。
え? 虎の子2枚のマナアーティファクトはどうしたって? 全部抜いたわ(ヤケクソ)。
ざっくり
- ・リアニメイトするカードとそのサポートカード
- ・ルーティングするカード
- ・パクるカード
- ・サクるカード
- ・アーティファクトを破壊するカード
を選定しています。
必須のカードは無いので生け贄の赴くままにカードを組み替えてください。生け贄の赴くままって何???
■変身前
アーティファクトは全て破壊しよう。
先述の通りマナ加速が無い・・・本当に無いので、赤黒の統率者デッキの基本ムーブである最序盤のアーティファクトによるマナ加速を行えません。
マジでマナ加速無さすぎてビビる。こいつ定期的にマナアーティファクト不足に嘆いてるな。
マナアーティファクトによる加速が使えないのであればやることは一つですね。
アーティファクトは悪い文明! 全部破壊します。
言うほど種類無かった。壊せるかな・・・文明・・・。
慎ましく手札を安定させ機を伺おう。
マナアーティファクトのマナ加速が使えないので地道に土地を伸ばす必要があります。
代わりに《苦しめる声/Tormenting Voice》系のカードを大量に突っ込んで手札の安定化と墓地リソースの強化に充てます。
後半の来たるリアニメイトモードに備えて墓地から釣るクリーチャーをガンガン窓から投げ捨てていきましょう。
その際に墓地に爆弾を仕込んでいることを悟られないように、マナ加速に頼らず地道に土地を並べていることをアピールしましょう。日本人は謹厳実直さを美徳とするのでそれで納得するはずです。
それでも対戦相手が墓地に落ちたカードを気にし始めたら突然ナートゥを踊るなどして全力で意識を他に向けましょう。
比較的最近赤に割り当てられた効果なので、パイオニアでも問題なく種類があります。念のためナートゥは踊り続けてください。
クリーチャー、パクろう。
そんなこんなで
- ・誠実に土地を伸ばす
- ・着実に墓地を肥やす
- ・確実に脅威は絶やす
の3つのポイントを意識して序盤は耐え忍びます。
■変身後
選りすぐりのデカブツたちを墓地から呼び戻そう。
墓地が溜まってきたら《炉の女王、アヤーラ》に変身して反撃開始です。
こっそり仕込んでおいた墓地の強力なクリーチャーやアーティファクトをリアニメイトして畳み掛けましょう。
速攻を持って殴ってくれるので、戦場に出たり攻撃する時に恩恵があるカードを優先的に選んでいます。
《真紅の花嫁、オリヴィア/Olivia, Crimson Bride》
リアニメイトしたついでに墓地のイケメン軍団、忍巧美男衆(テクノビダンス)も連れてきます。
ただ忍巧美男衆(テクノビダンス)はオリヴィアが帰ってしまうと追放されてしまうので、墓地の残機には気をつけましょう。
ちなみにアヤーラがいるからオリヴィアが帰っても忍巧美男衆(テクノビダンス)追放されないじゃん! ヒャッホウ! マスターピース! みたいなこと思ってたんですが、よく見たらアヤーラはエルフでした。
生け贄に捧げて何度も仕事をしてもらおう。
《魔女のかまど/Witch's Oven》
生け贄に捧げたクリーチャーが食べ物に変わるグリーン・インフェルノなアーティファクトです。
低レベル帯の統率者戦はライフの削り合いになりがちなので、毎ターン3点回復できるのはかなり重要です。原材料は気にせず勝つために喰らいましょう。
●生け贄の真の力を解き放つ
パイオニア縛りを一通り堪能したら、そろそろ真の力を開放しましょう。
レベル4の鎖を解き放つ覚悟を決めたら以下のカードを採用してデッキを強化するのも良いでしょう。
サクリ台強化
様々なフォーマットで活躍しているサクり台を惜しみなく投入しましょう。マナがかからないって素晴らしいですね!
パクる手段強化
マナ・コストは上がっていますが、その分純粋なカードパワーも上がっています。なんでもパクれるぞ!
でも《王国の未亡人、アヤーラ》はクリーチャーとアーティファクトしか生け贄に捧げられないので注意しましょう。
リアニメイトクリーチャー強化
その他サポートカード
《遺跡掘削機/Ruin Grinder》
死亡誘発で手札を循環させ墓地を肥やしてくれます。
強化することで一度に複数枚リアニメイトすることになるので、豪快に墓地を肥やしてくれるこのカードも是非採用したいですね!
対戦相手の墓地も肥やしてしまいますが気にしなくていいです。
《納墓》
《納墓》の影を追って採用していたので、本家本元を採用しない理由はありません。
レベル4の殻を破り、生け贄デッキとして空に羽ばたくのであれば是非とも採用しましょう。だから空に羽ばたく生け贄ってなんだよ!!!
●生け贄は続く
いかがでしたか。これがマジック:ザ・ギャザリングの醍醐味の一つ「生け贄に捧げる」です。
表の《王国の未亡人、アヤーラ》と裏の《炉の女王、アヤーラ》、異なるアプローチでこの耽美なギミックを心ゆくまで堪能しましょう。
そして忘れましょう。
所詮我々は社会にとって生け贄に捧げるためのただの子羊に過ぎないということを・・・。