はじめに
はじめまして!もしくはこんにちは!カニ丸です。
夏休みも終わってすっかり秋の雰囲気が出てまいりましたね。
筆者の地元では鈴虫の鳴き声なんかも聞こえてきております。
この季節に咲く花で、「彼岸花」(ヒガンバナ)というものをご存知でしょうか?
別名、「リコリス」「曼珠沙華」「クラスターアマリリス」などとも言います。
おや、遊戯王OCGをプレイしてる、もしくは「遊☆戯☆王5D’s」を好きな方はあの顔が浮かんでくるのではないでしょうか?
「遊☆戯☆王5D’s」にて十六夜アキが使ったカードで、彼女は「美しく燃える彼岸の花」と称していたそうですね。
現在はリミットレギュレーションにおいて、禁止カード(2021年9月現在)になっております。
大好きなカードですので、またいつかデッキに入れられる日を夢見ている筆者です。
このデザインの元となったのが、いわゆる「彼岸花」。
お彼岸の時期に咲くため、このような名前で親しまれています。
2021年のお彼岸(秋)は9月20~26日までとなっておりまして、先祖を供養するのがその主だった内容になっているそうです。
どよめいた当時のプレイヤーたち
《不知火の武部》はボーイッシュな一見すると少年に間違われそうな容姿をしていますね。
《麗の魔妖-妲姫》と並ぶと、よりその勇ましさが際立ちます。
そんな見た目も相反する2人は、実は敵対勢力だった、というのが興味深いポイントです。
◆30秒でわかる前回までのあらすじ
【1】
大昔から、《魔妖》は自分達に都合のいい「夜の世界」を永遠のモノにしたいと思って、人間たちを追い詰めていた。
【2】
困った人間たちは彼らに対抗するべく、様々な流派の人を募り、対抗手段として《不知火》という一族を作った。
【3】
長く続いた戦いで、ついに《魔妖》は封印された。
【4】
封印されたが、長い時間をかけて《魔妖》は封印を脱してしまう。
【5】
次の《不知火》当主である《不知火の武部》は、《麗の魔妖-妲姫》と出会ってしまった!!!
前回の記事でもここまではご紹介していました。
では、この後二人はどうなったのでしょうか。
昼間は人の姿で身を隠し、夜は妖怪の本来の姿に戻って人々を苦しめる《魔妖》。
遊戯王OCGでは、そのどちらの姿もカードとして存在しています。
デッキの動きとして、人の姿と妖怪の姿を、まるで変化を繰り返すように入れ替わっていくのがコンセプトデザインとして組み込まれているようです。
日本全国で有名な妖怪をモチーフとしているものも多いので、どれかは見たことや聞いたことがあるのではないでしょうか?
前回は記事が長くなりすぎてしまったので細かい紹介を割愛したのですが、「あの二人のその後を早く知りたい!」という人はこの項目を読み飛ばしてくださいね!!!
《魔妖》の頭首でもあり、デッキの中心ともいえる存在。
その元になったのが、これまた有名な妖怪「九尾の妖狐」。
その名の通り、9本の尻尾が生えた大きな狐の妖怪で、それだけの霊力を持っているとされています。
狐の妖怪は尻尾が複数生えているものが多く、それぞれに魂が宿っているという説もあります。
「九尾の妖狐」は妖怪の中でも大妖怪とでも言うべき最強の一角で、その悪事は紀元前11年頃の中国最古の王朝『殷(いん)』にいたという【悪女・妲己】から始まっていました。
妲己は『殷(いん)』が滅んだ後、中国を去り、インドに渡ってさらに悪事を働き、最終的に日本で【玉藻前】という悪女として君臨したといいます。
その後、人間に討伐された妖狐は毒を吐く石【殺生石】へと変貌します。
これを高名なお坊さんが払い砕き、全国に飛び散ったという伝説があります。
《麗の魔妖-妲姫》の名前の由来もここからきているのでしょう。
週刊少年ジャンプ(集英社)でもかつて連載していた『封神演義』(作・藤崎竜)でこの【妲己】を知った人も多いのではないでしょうか。
同じく、集英社の『NARUTO』(作・岸本斉史)や、小学館『うしおととら』(作・藤田和日郎)などにも「九尾の妖狐」が重要なキャラクターとして登場しています。
昼間は修験者のような恰好をしていますが、その本来の姿は《翼の魔妖-天狗》。
その元になったのは、もちろんあの有名な「天狗」です。
赤ら顔に、高い鼻、それから大きなうちわを持ち、鳥のような翼で空も飛行します。
天上や深い山などに住んでおり、山の神の使いであったり、その神通力で人々を救ったりこらしめたりもします。
「波旬」(はじゅん)というのは「天狗」の別名です。
傲慢の化身ともされる「天狗」を由来として「天狗になる」という言葉があるほどですが、かの有名な「源義経(みなもとの よしつね)」も若い頃に鞍馬山という山で「天狗」に鍛えられたので強く育った、という物語もあることから、非常にすぐれた身体能力も持っているようです。
「飛天と天狗」河鍋暁斎
能などで登場する妖怪「土蜘蛛」がその正体。
とんでもなく大きい蜘蛛の妖怪として描かれていることが多いです。
元々は大和朝廷や天皇に従わなかった土豪(土地の小豪族)たちを示す名称として「土蜘蛛」という表現があったため、《毒の魔妖-束脛》は豪族としての容姿をしているようです。
ちなみに、《毒の魔妖-束脛》の名前は「八束脛」(やつかはぎ)という「土蜘蛛」の別称が元になっています。
「8本脚」という意味ではなく、簡単に言うと「脛(すね)がめっちゃ長い」と言う意味です。
蜘蛛は体よりも足が長いので、そのためかもしれませんね。
『能』などにもなっているのですが、「源頼光(みなもとの よしみつ)」が倒したとされる土蜘蛛の逸話があります。
『ある日、病に苦しんでいた「頼光」が目を覚ますと、大きな僧が縄を持って足元にいました。
「頼光」は枕元に置いていた「名刀・膝丸」で斬りつけ倒すと、大蜘蛛の死骸が転がり、病がなおったそうです。』
《毒の魔妖-束脛》が大きな縄を持っているのはこれが元になっているかもしれません。
「浮画 源頼光土蜘変化退治図」歌川豊春
「俥夫」というのは本来はこのイラストにもあるように、人力車を引く人をさします。
ぼんやり人影が人力車に乗っていますが、カード名や《魔妖》のコンセプトからすると、この引いてる人がご本人様ということでしょう。
笑顔が素敵な好青年の雰囲気がありますが、残念、その正体は大きな鬼の顔面です。
牛車の背面に夜叉(鬼)のごとき様相で大きな顔が存在している、というのが特徴で、祭事などで自分達の参加する場所を確保できなかった貴族の怨念が形になったといいます。
現代では理解し難いのですが、当時の貴族にとってはとても重大なことであると同時に、それに敗北するということが相当に屈辱的な事柄だったようです。
夜遅くに争っている人間の前に現れる、うすぼんやりとした妖怪だそうなので、「朧車」(おぼろぐるま)。
※朧…ぼんやりしている、はっきりしていないこと。
この「朧車」(おぼろぐるま)という妖怪は実のところその性質や背景などにハッキリした記述が少なく、その姿形が独特で創作物などに登場することが多く見られています。
「朧車」鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より
「餓者髑髏」(がしゃどくろ)というのは本来は大きな骸骨の妖怪です。
昼の姿である「夜叉」と言うと”鬼”をイメージする場合が多いですが、元ネタの「がしゃどくろ」を紐解くと「滝夜叉姫の伝説」に登場する「滝夜叉姫」が操る【大きな骸骨】の方から名前を取ってきたのだと考えられます。
ちなみに、よく創作物に登場するわりには「がしゃどくろ」としての名前が定着したのは昭和中期以降という実は新しいめの妖怪でもあり、日本の浮世絵などでもあまりその名で描かれているものは多くありません。
戦死者や野垂れ死になど、きちんと埋葬されなかった無念の亡骸が集まって大きな骸骨となり、生きた人を見つけると襲い掛かって食べてしまう妖怪です。
『相馬の古内裏』歌川国芳
妖怪の代表格として有名なのが、この元となった「雪女」。
雪深い日に民家や、遭難者の前に現れ相手を凍死させたり、相手が男性であれば結婚するような逸話もあります。
共通して美しい姿をした女性で、“死に装束”のような白い着物をまとっているのが特徴です。
「雪娘」はどちらかというと「雪ん子」「雪童」と言った呼称が多いかと思います。
「雪女」の子供であったり、雪の塊に命が宿ったものであったり伝説によって様々です。
ロシアの民間伝承では「スネグーラチカ(雪娘)」というサンタクロースの孫娘がいますが、元ネタではないものの、共通して雪の化身であるのが興味深い所です。
人間と結婚したり、子供を抱いていたりと、愛情深い一面も見られる妖怪ですので、創作物でも人気が高いですね。
「氷(つらら)の魔妖」というところから見るに、「つらら女」という妖怪の逸話も混ぜて採用しているのではないでしょうか。
「ゆき女」佐脇嵩之『百怪図巻』より
総じて《魔妖》は、昼間の姿は効果モンスターで、夜の本来の姿はエクストラデッキに入るモンスターという分け方になっています。
また、夜の姿は有名な「妖狐」や「雪女」といったわかりやすい名前なのに対し、昼間はその姿の別名や、逸話を元に名前が設定されています。
今後新規のモンスターが増えるなら、筆者個人的には大ムカデや大蛇だったらいいなぁと思っています。
敵対関係でありながら、ある日《不知火の武部》は《麗の魔妖-妲姫》と出会ってしまいます。
恐らくですが、この時《不知火の武部》の方はそのことを知りませんでした。
古びたお堂で出会った謎の女性を、ただ大切に友情を育もうとしていたのでしょう。
幼い頃より《不知火》として修業に明け暮れていた身としては、この日々が暖かな時間であったことは間違いありません。
一方、《麗の魔妖-妲姫》は全てわかった上で《不知火の武部》に近づいていました。
自分を封印した、憎い一族へ復讐するべくその動向を探る目的だったようです。
ここだけ見ると、《麗の魔妖-妲姫》の作戦は成功したのかと思われましたが、カードのイラストから漂う彼女自身の表情は果たして演技だったのか、真実だったのか。
「逢華」とは、イラストに舞う「桜」としての「桜花」と音を合わせているようですが、「逢」という字は「めぐりあう」といった意味のある漢字ですので、「逢引(あいびき)」「逢瀬(おうせ)」といった強い感情で惹きあう時によく用いられています。
また、このカードの英語版名は【Ghost Meets Girl - A Shiranui's Story】。
「boy meets girl」(ボーイミーツガール)という男女のラブストーリーを差す言葉をもじったものであると考えられるため、もしかしたら、この二人には友情以上の強い関係が築き上げられかけていたのかもしれません。
どうして敵対関係にあるはずの2人が、【同じ鈴の髪飾り】を付けているのか、非常に興味深いところでもあります。
▽今後の展開予想
余談
筆者の実体験ですが、
《精気を吸う骨の塔》を建てられ、《魔妖》の最初の動きを止められず、ガンガンにシンクロ召喚されまくって、デッキ破壊コンボを決められたことがあります。
※《精気を吸う骨の塔》※アンデット族モンスターが特殊召喚に成功する度に、相手のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。
こういった通常の勝利条件である「相手のライフポントをゼロにする」ではない特殊な勝利条件を目指すデッキは諸刃の剣であると同時に、エンターテイメント性が高くて、個人的には好きですね。
一撃必殺みたいなコンボや、特定のモンスターが大活躍するように構築されたデッキはまた一つの遊びとしての完成された面白さを感じています。
そういえば、この記事が公開されたまさにその時に公式カードプロテクター化を賭けた【カードイラスト大投票2021】が行われていますね!
《魔妖》や《不知火》は10日(金)の時点ではTOP10にはおりませんでしたが、最終的にどうなるか…。
筆者は可愛い女の子のカードプロテクターも好きなのですが、《星遺物の導く先》のようなかっこいい魔法カードや罠カードももっとグッズになって欲しいと願うばかりです。