デュエル・マスターズのもう一つの勝ち筋
ライブラリアウトという言葉が存在する。
元は、マジック:ザ・ギャザリングから発生した言葉で、簡単に言えば山札切れだ。
(マジック:ザ・ギャザリングでは、山札の事をライブラリと呼ぶ)
デュエル・マスターズでも、この現象は存在し、主に負け筋として語られる事が多い。
が、これを”勝ち筋”として利用するデッキも存在している。
太古のものであれば、火・闇でひたすら除去を繰り返し、相手のライブラリアウトを待つ除去コントロールが存在した。
第6弾発売後は、《ヘル・スラッシュ》を《恵みの化身》で使い回す”化身コン”というデッキが登場した。
その後は《ロスト・チャージャー》というカードを利用した除去コントロールが、このライブラリアウトを勝ち筋としたデッキとして、長らく環境を支配したものだ。
それからも形を変え存在していたが、最近ではループデッキの勝ち筋になっていたり、アドバンスでシールド・トリガー満載のデッキの勝ち筋としても視野に入れられている。
このようにデュエル・マスターズにおいても、ライブラリアウトという現象は切っても切り離せない存在なのだ。
そして、能動的に狙いにいく戦術がフィーチャーされた事もある。
そんなカードの代表とも言えるカードが《S級宇宙 アダムスキー》だ。
水のコマンドから侵略する侵略者だが、なんと、S級侵略[宇宙]により、バトルゾーンからバトルゾーンへ反復横跳びするように侵略が可能になっている。
簡単にまとめてしまうと、自分のアタック可能な水のコマンド×4枚、相手の山札を削る事ができる、というカードである。
デュエルマスターズでは、シールド5枚+ダイレクトアタックの合計6打点が必要なのに対し、この勝ち筋の場合は6打点だと24枚の山札を削る計算になる。
そのため、少し必要な打点は増えるものの、相手の手札を増やす事無く相手を追い込めるため、戦術としては非常に強力だ。
このカードは、水のコマンドが増えるたびに強化されると言えよう。
そして今回、新たな水のコマンドが2種類追加された。
相手の山札を切り刻め
この世界には、墓地を利用するデッキが存在している。
数こそ多くは無いが、その手のデッキにとって、墓地を増やしてくれる《S級宇宙 アダムスキー》はお客様のようなものだ。
よって、むやみやたらに相手のデッキを削れば勝てるというほど、デュエル・マスターズは甘くはないのだ。
どうせ削るのであれば、一撃で大量の山札を削り落とす方が良い。
そのためには、水のコマンドを多く並べてから《S級宇宙 アダムスキー》で攻め込むのが良いだろう。
とはいえ、今の環境には、横並びしていくデッキにとっての天敵がいる。
これらのカードを回避するには、全体除去への耐性を上げるか、並べない方法をとるか、どちらかしかない。
全体除去への耐性を上げる方法については、《飛翔龍 5000VT》と《「オレの勝利だオフコース!」》でそれぞれ異なるアプローチとなることから、対策するのは至難の業だろう。
となると、残った方法は”並べない”方法をとるしかない。
当然だが、これは本末転倒だ。
並べてから殴る、しかし並べない方法をとるしかない。
このように、完全に矛盾した解決法しか見当たらない場合、本当に何をすべきかを再度検討する作業が必要だ。
もう一度、よく考えてみよう。
今回やりたい事は、1ターンで出来るだけ多くの回数《S級宇宙 アダムスキー》で攻撃する事だ。
これを実現するために、水のコマンドを並べて攻撃する、という方法を検討したわけだ。
つまり、目的は”1ターンで多くの回数攻撃する”ことであり、”水のコマンドを並べる”ことは手段に過ぎないのである。
よって見えてくる答えは”1体のクリーチャーで複数回攻撃する”ことだ。
この問題を実現するためのカードは数多あるが、その大半は呪文である。
この結論に至ったことでようやく、新たに追加された水のコマンドが真価を発揮するのだ。
つまり《終斗の閃き マトリクス》で《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱えることで、いきなり2回アタックが可能な水のコマンドが誕生するのである。
これだけでも8枚、もう1体水のコマンドが居れば相手の山札を12枚削る事が可能になるのだ。
それに、《終斗の閃き マトリクス》は、墓地から呪文を唱えた後も、その呪文が墓地に残り続ける。
よって、次のターンに追加の《終斗の閃き マトリクス》を繰り出せば、更に打点を追加する事が可能となっている。
この追撃までできたのであれば、相手の山札は合計で28枚も削られるため、まず間違いなく相手の山札はライブラリアウトないしはその寸前まで削られているだろう。
おおよそ動きが固まってきたので、あとは採用するカードを検討していこう。
少数精鋭
加えて、最初にも紹介した《偽りの名 システイス》も、コストこそ重いが受け札としては優秀なので、カウンター要員として採用候補に挙がる。
既に水のコマンドは12枚搭載されたわけだが、序盤から順調に動くには、あと1種類ほど欲しいところである。
それも出来ればコストは軽い方が良い。
序盤から展開する事が出来て、しかも相手の妨害になれば、なお良しだ。
問題はそんな適任とも言えるカードは、なかなか存在しないという事だ。
冷静に考えて、そんなにも優秀で軽い水のコマンドが居たのなら、すでに《S級宇宙 アダムスキー》が環境に姿を現していたはずだ。
そうなっていないという事は、そんなクリーチャーは存在しない、という事なのである。
そう、今までは
そんな定説を打ち砕くのが、この《アカシック・B/「バブルの泡に溺れるのヨ!」》だ。
あの《全能ゼンノー》と同じような能力を持ち、コストは3で、しかも水のコマンドという、このデッキにおいてはかなり優秀なクリーチャー。
そのうえ、呪文側はシールド・トリガーと受け札としても働くというもはや至れり尽くせりだ。
これだけ水のコマンドがあれば、デッキのコンセプトとしては十分だろう。
ひとまず、今見えているカードを並べてみよう。
シールド・トリガーも8枚入っており、《奇天烈シャッフ》含め、侵略元も申し分ない優秀なクリーチャーで占められている。
デッキの基盤としては、これ以上優秀なものは無いと言って過言ではないだろう。
あとは構築に肉付けをしていく作業となる。
まず、このデッキの特性上、手札を整える必要があるので、手札補充が必要だ。
それも《終斗の閃き マトリクス》から唱えられ、4コストのコマンドを展開していく前に使えるよう、コスト3以下の呪文が良い。
ついでに手札を整える以外の効果まで持っていたら、完璧だ。
というわけで、このカードが候補になる。
墓地を利用するデッキへのメタとなるこの呪文は、相手のデッキを墓地に落としていくこのデッキとは、一見すると相性は良くないように思えるだろう。
しかし、自身の墓地も戻せるため、たとえば墓地に落ちたコンボパーツを山札へと戻したり、こちらが動くより前に墓地を利用されそうな場合などは、仕切り直す事も可能だ。
何より、”手札を補充しながら他の仕事が出来る”という点は他に無い長所なので、採用するに十分な理由だ。
なお、環境によっては他のコスト3のドロー呪文と入れ替えても良いだろう。
受け札が欲しければ《エナジー・Re:ライト》などといったカードでも良い。この枠は、臨機応変に変更していこう。
他の採用候補として、手札を調整しつつ受け札となる、そんなコマンドも発見した。
それが《マジック・A・セミプーロ/♪閑かさや とにかくブレイン 蝉ミンミン》だ。
クリーチャー側はシールド・トリガー持ちの水のコマンドで、呪文側は《ブレイン・ストーム》と同じような効果の呪文となっている。
手札に引いてしまっても呪文側を使う事で扱いやすく、シールド・トリガーで出てきた場合はカウンターを狙う事も出来る。
他に重要な事として、コスト5以上のクリーチャーなので、状況によっては《ゲンムエンペラー》に睨みを利かせる事まで可能となっている。
もちろん、呪文側は《終斗の閃き マトリクス》で唱えられる。
3枚引いたときに手札に残したいカードが無くとも、4ターン目の《終斗の閃き マトリクス》で再度使う事で、再び欲しいカードを引き込む事も出来るのだ。
序盤のドローソースも8枚揃い、しかも受け札も割り増ししたので、だいたいの根幹は出来上がったとみて良いだろう。
あとはデッキのコンセプトや環境に合わせたカードを追加するだけで、立派にデッキになりそうだ。
デッキリスト
というわけで、今回出来たリストがこちらだ。
やる事は単純明快、《S級宇宙 アダムスキー》で相手の山札を刈り取る事だ。
出来る事なら一撃で刈り取りたいため、水のコマンドを並べる必要があるのだが、今回は《瞬閃と疾駆と双撃の決断》による連続攻撃での山札破壊を狙う。
その動きに貢献してくれるのが《終斗の閃き マトリクス》である。
このカード自身が水のコマンドなので、これで《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を使いスピードアタッカー+最初のアタック後にアンタップを選択すると、この動きだけで相手の山札を8枚削り落とす事が狙えるのだ。
隣に水のコマンドが立っていれば、更に削る枚数を増やす事も出来る。
特に《奇天烈シャッフ》を2回アタックさせようものなら、呪文を使うデッキには致命傷を与える事ができるだろう。
水のコマンドがかなり多めに入っているが、それにも関わらず、防御面は非常に硬い。
なんと、相手の攻撃を受け止められるカードが16枚も搭載されている。それなりの確率で2枚ほどのシールド・トリガーが駆けつけてくれるだろう。
この手のデッキでは手札を整える事が難しくなる傾向になりがちだが、このデッキでは手札を整えるためのカードも12枚採用されている。
特に、水単色で組む事によって《ストリーミング・シェイパー》による恩恵を、最大限に享受する事が出来るのだ。
今の環境は、山札を掘り進める事で高速展開するデッキが多い傾向にある。
そのため、山札の枚数というライフが早々に尽きやすい環境、とも言えるのだ。
その弱点を明確に突く事の出来るこのデッキは、今後も水のコマンドが増えるたびに強化されていく、かなりの地雷として戦う事が出来るだろう。
それに、シールド・トリガーを全く無視して戦うという点においても、普通のデッキとは異なる視点での戦いが求められる。
真正面から戦っても勝てない相手にも、このデッキなら勝てる、かもしれない。
普段とは違う戦いを求める人には、是非ともお勧めしたいデッキだ。
終わりに
新しいデッキを作るうえで意識しないといけない事は、注目を浴びているギミック以外にも目線を向ける事だ。
たとえば今回は、ゼニスがフィーチャーされてはいるが、密かに優秀な水のコマンドが増えていた。
新しいパックが登場するたびにこうした事は常に起こり得るので、少し違った視点から全体像を眺めるという事も必要なのだ。
そして、常に人と違った視点で全体を眺めている人は、やはり存在している。
特に特定のデッキを愛用し続けるプレイヤーなどは、そのデッキを主軸にカードを見るため、意外な点や相性に気付く事が多いものだ。
よく”餅は餅屋”と言われるが、まさにその通りで、その人でなければ気付けない事というのは往々にしてある。
そのような視点を一人で持つ事は難しいので、デッキを作る際は、色々な人の案を取り入れるようにすることもオススメだ。
そうした視点を組み合わせる事で、時にとてつもないデッキが誕生する事だってあるのだ。