雷鳴山にて……。
夕食の……夕食だよな? テーブルに座っている俺達のところへ来たのは、皮肉っぽい顔をしたドラウだった。
ドラウってのは……真っ黒なエルフだ。地下に住んでいて……。
それ以上のことは考えたことが無い、いいだろ? 別に。
「高名なアノールどののパーティとお見受けします。私、この七柱の大広間で商人をしております、ゲンダーと申します」
恭しくテーブルの横で腰を折り、挨拶をすると俺達のことをゆっくりと見回した。
「骨董品などを主に扱っているのですが、この度、お客様を迎えることになりまして、パーティ用の食材を集めていただきたいのです。もちろん、報酬はお支払いさせていただきます」
「なんで、わざわざ俺達にそんなこと頼む……? 食べ物くらい、普通に買えばいいだろ?」
俺の言葉を聴くと、ゲンダーは笑顔を作ると、懐から羊皮紙のメモを取り出した。
「普通のものなら、ね。冒険者の方に依頼するからには、それなりのものを集めていただきたいのです」
えぇ……、それって大体、ろくでもないことじゃない……。
「いいよー」
「えっ、おま」
一緒に飯を食っていたピケが勝手に答える。もっと考えて答えろよ。
「いやあ、貴方がたでしたらきっとお受けしてもらえると思っておりました。それでは、こちらが集めていただきたいもののリストになります。期日は四日後。ゲンダー骨董品商会へお持ちいただければよろしいです。それでは!!」
皮肉っぽい笑い顔とメモを残して、ゲンダーとかいうドラウはさっさといなくなってしまった。
「お前な、もっと考えて仕事は受けろよ」
「どっちみち、行商は帰るまでしばらくあるし、暇だったじゃん。大丈夫でしょ、食べ物集めくらい」
「本当かよ……」
楽天的なピケの様子に、俺と隣で飲んでいたガムジンは頭を抱えていた。
湿っぽい洞窟の中を松明で照らしながら、俺達は前へと進んでいた。
先頭はピケ。ローグなら、危険にはすぐに気がつくだろうし、罠を見つけるのもピケの仕事だ。
「最初に見つかるって言われたのはなんだっけ?」
前をちゃんと見て歩いてくれ。
「あ? えーと、メモによると、グレルの触手……?」
「グレルってなんなの?」
「お主、それも聞いておらんかったのか。グレルというのは、アンダーダーク……つまり地下世界だな。そこを蠢き回っている怪物での。空中を飛び回っている脳みそみたいな怪物なんじゃ。触手には毒があって、そいつに触れられると身体が麻痺してしまうんじゃ」
「へー……つまり……、こい……つ……みたい……な」
「「ピケー!!」」
「ひ、ひどい目にあったよ……」
「もっと注意して歩かんからじゃ! ワシも手が痺れて大変じゃったぞ」
「アノールが剣で取ろうとするからちょっと怪我しちゃったじゃんか!」
「素手で触ったらダメだって分かってただろ! まあ、いずれにしても、1つ目の食材は手に入れた」
「こんなの食べて美味しいの……?」
「さあ……金持ちのことはわからん……」
食材の入った袋を持って……食材……? こんなもの食べるのか? わからん。
苦労してぶっ倒したグレルから触手を切り取り、回収することができて、良かったと思おう。
へたり込んだピケにポーションをがぶ飲みさせて、俺達は次の食材を求めてこの地下世界の移動を再開する。
「次のモンスターは……」
「モンスターって言ってしまっておるじゃないか」
「だってモンスターじゃんか」
まあ、メモを確認しようじゃないか。えーと、次は?
「インテレクト・ディヴァウラーの新鮮な肉……?」
「インテレクト・ディヴァウラーってなにさ!」
「インテレクト・ディヴァウラーというのは……」
「知っているのか! ガムジン」
「茶々を入れるでない。アンダーダークを徘徊する怪物は多くの種類がいるが、インテレクト・ディヴァウラーというのは脳みそに手と足が生えた怪物じゃ。コイツは、襲った生物の身体をうばい、なりすますことができる」
「脳みそばっかじゃん、アンダーダーク」
「うるさい!」
歩き回っているなら、こっちも歩いて探すしかないなということで、更に次の食材があるという地底湖の方へ向かいながら出くわすことを期待しながら先に進む。
「あ、コイツじゃない?」
「割と楽勝だったね」
「待ち伏せを受けなければ、まあ大丈夫という気もするのう」
あんまり気の緩んだ発言をしてると危ないぞ。
「次のモンスターは……えーと、チュール?」
「なにそれ?」
「地底湖近辺に住んでいることが多い。硬い外皮と強力な爪で通りがかった生物を襲い、脳以外を食べる。……らしいぞ」
「アンダーダークってなんか脳に対して執着でもあるの?」
いい指摘だぞ、ピケくん。だが、なんでこんなに脳に関連するのか、俺にもわからん。
「水の中で待ち伏せしていることが多いらしい。とにかく、隊列を崩さないようにしようぜ」
「わかった! わk……」
ドポン、と音がして、そっちを見てみると。
「「ピケーーーー!!!」」
「水の中に引きずり込まれたら、俺達の実力でも、かなり苦戦するに決まってるだろうが!」
「ガガガガガガ」
ピケは歯の根が合わないくらいに震えている。
俺も泣きそうだ。
ガムジンは、魔法を使って火を熾してくれている。
「まあ、それでも、必要なものはそろったんじゃろ。良かったじゃないか?」
「良くはないだろ」
しんどかったが、揃いはした。
しかし、こんな目に遭うと分かっていたらこの仕事は受けなかっただろうな。
「まあ、とにかく、七柱の大広間に戻るか……。報酬をがっぽりいただこうぜ」
アンダーダークってのは、とにかく不条理な場所だなと思いながら歩き始めたのだった。
アンダーダークへようこそ
みなさん、こんにちは!
ついに発売されましたね!「イクサラン:失われし洞窟」!!
新しいギミック「落魄」に、「製作」とワクワクする要素だらけですね。
メソ・アメリカ風の次元、イクサランへは再訪となりますが
メソ・アメリカって結構、USAでは人気のセッティングの1つで、D&Dでもたびたび取り上げられるテーマだったりします。
D&Dの古いシナリオで言うと、「タモア・チャンの隠された神殿(原題: The Hidden Shrine of Tamoachan)」とかがそうですね。
その昔、このシナリオをD&D4版で遊ぼうと、コンバートされたシナリオを頑張って翻訳したことがあるのですが、卓が成立せずにお蔵入りになったことを思い出しました。
そんな私も思い入れのあるメソ・アメリカ風ファンタジーですが、失われし洞窟……ということは……?
そう、「ダンジョンズ&ドラゴンズ:フォーゴトン・レルム探訪」だね。
今回は、その中でも特に人気のキャラクター、《ドリッズト・ドゥアーデン》を統率者にしたデッキを紹介します!!
Drizzt Do'Urden / ドリッズト・ドゥアーデン (3)(緑)(白)
伝説のクリーチャー — エルフ(Elf) レインジャー(Ranger)
二段攻撃
ドリッズト・ドゥアーデンが戦場に出たとき、《グエンワイヴァー/Guenhwyvar》という名前でトランプルを持つ緑の4/1の伝説の猫(Cat)クリーチャー・トークン1体を生成する。
クリーチャー1体が死亡するたび、それがドリッズト・ドゥアーデンのパワーより大きいパワーを持っていた場合、ドリッズト・ドゥアーデンの上にその差に等しい数の+1/+1カウンターを置く。
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ダークエルフの物語(デッキリスト)
ダークエルフの物語のキーカードたち
さて、今回取り上げたドリッズト・ドゥアーデンのデッキですが、パイオニアEDH対応で構築してあります。
パイオニアEDHとは、カードプールをパイオニアのものに限定し、ただし、禁止カードはパイオニアEDH独自にしてあるというルール・フォーマットです。
(詳しくはパイオニアEDHコミュニティのサイトを見ていただければと思います)
なんでパイオニアEDH? というと、まあ私が構築してみたかったからというのもありますが、普段の統率者戦よりもドリッズト・ドゥアーデンというクリーチャーが活躍する余地が大きいのでは? と思ったのもあります。
さて、今回の《ドリッズト・ドゥアーデン》ですが、能力でも存在感があるのが、クリーチャーが死亡したときに+1/+1カウンターが載るというもの。
これは、ドリッズト・ドゥアーデンが冒険を重ねていくなかでどんどん成長していくというフレーバーを表したものだとは思うのですが……。
「死亡したクリーチャーのパワーとの差分だけ載る」って強くなりすぎでしょう!!
構築は、この+1/+1カウンターを載せる部分を大きく強化するようにカードを選びました。
《硬化した鱗》は言わずもがな。+1/+1カウンターを追加で載せてくれますし、同様の能力を持つ《囁かれた希望の神》、《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》をチョイスし、成長タイミングでむちゃくちゃ成長させることを狙います。
その他のカードも+1/+1カウンターを使うもの(鱗の恩恵を受けられるので)や、増殖を持つものをチョイスしてあります。
そして、入れてある無限コンボ!
1.《忠義の徳目》の効果が誘発。スタックに載せる。
2.《調和の織り手》で《忠義の徳目》の効果をコピーする。
3.コピーした《忠義の徳目》の効果を解決、+1/+1カウンターをコントロールしているクリーチャーに載せる。クリーチャーはアンタップ。
4.アンタップしたマナ・クリーチャーから生み出されたマナと《調和の織り手》を使用して、《忠義の徳目》の効果を再度コピー。
5.好きなだけ繰り返し、むちゃくちゃなクリーチャーを作成。
本来は無限コンボは無くても十分戦えるフォーマットですが(そうでもないかも)
クリーチャー主体のデッキなので、攻めきれずやることがなくなるなどの場面に会うこともあったのでスパイスとしてコンボも追加しておきました。
膠着状態になったときに勝ち筋があると安心するものね……。
コンボを狙うためのサーチカードは入れていないのですが、《牧歌的な教示者》などのサーチカードを使用しても良いと思います。
終わりに
今回は「ダークエルフ物語」の主人公、《ドリッズト・ドゥアーデン》を取り上げました!
《ドリッズト・ドゥアーデン》のデッキは組もうと思っていたのですが、なかなか方向性が決まらずお披露目できずにおりました。
しかし、パイオニアEDHという形で限定することで、存在感のある統率者デッキとして組み上げられたと思います。
ちなみに、相手のパーマネントをケアするカードもしっかり採用しているので、通常の統率者戦に入っても、しっかり戦えるデッキに仕上がっています。
今回の記事を参考にして、《ドリッズト・ドゥアーデン》のデッキを組んでみてください!!
それではまた、「統率者をめぐる冒険」でお会いしましょう。