それいけ!ヴォーロ 新たな出会いを求めて
ゆっくりと背負袋の中身をテーブルに出していく。
テーブルの上には、ロープ、火打ち石、くさび、小型のハンマー、(非常用の)携帯食と冒険に欠かせない品々が並んでいく。
そして最後に取り出したのが……この私の貴重な冒険の記録、道中で出会った怪物たちの詳細な生態を記した日誌だ。
四隅は金属でしっかりと補強され、装丁はアウルベアのなめし革、濡れても破けにくいトレントの葉を漉いて作ったページ、何よりも大切なのはこの中身、怪物たち、モンスターの詳細な姿を精巧に写し取った挿絵と、鋭い観察眼でつぶさに読み取られたモンスターたちの生態、その全てが記してある。
そして、私はまた新たなモンスターと出会うべく、秘境のダンジョンへと足を踏み入れようとしていた。
まだ日が登らぬ薄暗い朝のうちから私は宿を立つことにします。
薄暗い道を進んでいくと心細さを感じないわけでは決してなかったが、これから出会うであろう未知との邂逅を思うと心細さなどはどこかへ行ってしまいそうでありますなあ。
はてしかし、村を出て森の中へ入ってきたのはいいが、私はどちらへ進んだらいいんでしょうか。
森と岩だらけの山肌とを行ったり来たりしながら歩いているうち、太陽はすっかり昇ってしまっていて、私の帽子を温めてくれていた。
おお、そこにいるのは……えーと、小さくて羽がついてる人! すまんが、このあたりで見つかったというダンジョンに行きたいんだ。どっちに行ったらいいか教えてくれませんかの。
小さな人は私の回りを飛んで回りながら私のことをまじまじと眺めていたようですが。
いや、それよりも、なんかものすごく迷惑そうな顔をしているようにみえますぞ……なんででしょう。
「なんでこの人私達のこと見えてるの」
とか言ってるんだけど、もしかして丸見えなの気がついてないのでしょうか。
しばらくすると、腰に針を挿した男の子が私の前に飛んできました。
「オイラが案内するからついてきなよ。ボヤボヤするんじゃねえぜ」
おお、なんとありがたい。このような見知らぬ土地でも人(人?)に親切されると身に沁みますのう。
しかし、小さい人は飛んでいて、私は歩き。ボヤボヤもしようというもの。
ダンジョンの入口の前に到着した時にはすっかり日もくれていた。
仕方ない、今日はここで一泊して、明日の朝から新しいモンスターとの出会いを期待して寝ますぞ。
私は火を起こし、寝床を作り始めた。
心細さはすっかりどこかへ行き、私は落ち着いてダンジョンの入口をじっくり観察します。
入口には、石? でできた守り神のようなものが両脇に立っているのが見えますぞ。
翼が生え、大きなくちばしを持った生き物?のような石像が、石像?
うーん、なんかああいうものを昔見た記憶があるんですが……。
いくら考えても出てこないですぞ。
私は火で乾燥肉を炙りながら考えていたが、思い出せそうにないのでやめましたぞ。
それよりも、早く寝て明日に備えようではないか。
朝になると、入口の(入口と言って良いのか?)前に立っていた石像はなくなっておりましたぞ。
誰か片付けてくれたのでしょうか?
それよりも、思っていたよりだいぶ日が高くなってしまっているようですぞ。
私は手早く荷物をまとめ、背負袋を背負い直すと、早速、ダンジョンへ向かって歩きます。
「おじゃましまーす……」
ダンジョンの中は薄暗く、いや、壁に篝火が焚かれているではないか。
「なんて親切なんだ」
私は気を取り直し、奥へと歩みを進めますぞ。
しかし、よく見るとなんも出てこなくて寂しいダンジョンですのう。
私が以前冒険した森なんかは次々にモンスターが現れて随分とにぎやかだったのに……。
まあ、小枝を踏んだら、次の瞬間、エルフに捕らえられていたんですぞ、あのときは死ぬかと思いましたぞ。
おや、このダンジョンは新しく見つかったんじゃないのか……? だいぶ中は家探しされているようですぞ。
外から見た時の恐怖感とは裏腹に、何もなくなってしまっていたダンジョンを通り抜け、
私は最奥へとたどり着いていた。
そこには、天を衝くばかりの巨大な石像が立っているだけで、やはり全てが持ち去られてしまっているようですぞ。
「うぬぬ、新しい出会いの機会は今回はなくなっていたか」
なあに、気を落とすことはない、また出会いはあるのですぞと自分を鼓舞していたその時、まさに天から声がしました。
「小さきものよ……」
なに? 小さい人が来ているのか? 私はあたりを見回す。誰もいないですぞ。
はて、そもそも声を発したのは誰であろうか。
「小さきものよ、お主だ、お主。なんでわかりませんみたいな顔をしておるのだ」
どうも私に話しかけているらしいですぞ。
「あー。どうも申し訳ない、上から、上からというか天頂の方から話しかけられた経験が無いもので」
「そうか、それはすまなかった。お主もこの神殿に宝物を求めて来たものか?」
うん? 遺跡荒らしのことかな。
「いいえ、私は決してそのようなものではないです。未知の生物との出会いを求めるもの、言ってみれば生物学者みたいなものですぞ」
おおよそ間違ってないぞ。
それよりも声の主は誰だろうと私は天の方を見上げます。
石像の目がぐるりと動いて私の方を見つめていた。目があった。
あんなデカイ目だもの、合わないわけが無い。むしろ目の当たり判定を避ける方が難しいんですぞ。
「小さきものよ。私はストーン・ジャイアントのヘドモズ」
「私はモンスター学者のヴォーロですぞ」
「では、ヴォーロよ。私は、かつて怒れるプライモーディアムに仕える尖兵であったが、戦いの中で争うことの虚しさを覚えてしまい、戦場から逃げ出した。それ以来、セイハニーンに仕え、祈りを捧げてくらしておったが、いつしかこの神殿が建てられ、奥に祀られることになったのだ」
「はあ、そりゃまあ珍しいですね」
「私のことを祀ってくれていた人たちも滅びてしまったが、この神殿は残され、私は身じろぎせずに祈りを捧げていた。しかし、ついお前がくる直前に、この神殿を荒らして帰ったものたちがいる」
「そりゃ、随分と罰当たりな連中ですね」
「その者たちにも生活があるのだろう。神殿にあるものは何でも取るがいいだろう。しかし、私がセイハニーンから頂いたアミュレット、私の手にかかっていたそれだが、それだけは返してもらって欲しい。私が街へ行けば事態は大事になってしまうだろう。だから、小さきもの、ヴォーロよ。お前に頼みたいのだ」
「はあ、そうですか。しかし、困ったな……」
さて、私はもっぱら新しいモンスターとの出会いを楽しみとしていて、問題や厄介事の解決はテンで向いてないのだ。
「この神殿の更に奥に秘宝とされるものが隠されている。それらには手がついていないようだ。秘宝のありかへの道を示すこと、これを報酬とするがいかがかな」
「問題は報酬ではないのですが、まあできるだけやってみましょう」
とは言ったものの、私は街への帰路を歩きながら頭を抱えていた。
一体、誰がアミュレットを持ち去ったのだろうか……。それをどうやって見つけるか、ああ、私が高位の魔術師であったなら、即座に見つける魔法でも使っていたのかもしれないが。
などと、悩みながら歩いていれば、街へ着いてしまうのも道理というものであった。
問題の答えが見つからないまま、仕方無しに宿屋へ帰ってきた私は信じられない光景を目にしてしまった。
やたら羽振りの良い冒険者たちが、宿屋の酒場で盛り上がっているではないか。
飲めや歌えの大騒ぎである。
「こ、これは……」
「ああ、ヴォーロさん、おかえりなさい。なんでもあのパーティの人たち、ダンジョンの中で宝をがっぽりせしめたっていうんで、打ち上げだって大騒ぎしてるんですよ」
「なんと、では、宝はもう売ってしまったのですか?」
「いや、まだ大半は残っているらしい。改めて売りにいくって言ってたよ」
「そうですか……」
なんとも知らないところで縁というものはつながっているもんですなあ……。探しものが宿屋にあるとは。
「しかし、どうしたもんでしょう。アレはどこにあるのか……」
「よう、お前さん、そんなところに突っ立ってないで、一緒に飲もうぜ!」
ええ……困ってしまいますぞ……。
しかし、まあ近くに行けばあっさり見つけられてしまうかもしれませんし?
「おお、じゃあお言葉に甘えまして……」
私は帽子を脱いで礼をしながら、テーブルに座らせてもらうことにしまして。
「いやあ、すごい豪勢ですなあ……」
「俺達もラッキーだったよ! 敵はまるっきりいなくて、奥の部屋には財宝がたっぷりだもんなぁ」
「ああ、死人もでねえし、久々に良い仕事だったぜ」
「財宝はどこに行きましたかな?」
「気になんのかい? 眼の前にあるじゃねえか、ほら!」
大騒ぎに気を取られて気が付きませんでしたが、テーブルの真ん中にはうず高く金銀財宝が積み上げてあるではありませんか。
あんまり量が多すぎたので、逆に意識から追いやられておりましたぞ。
しかし、これだけの財宝、何もせずに持ち出してくるのに《良心の呵責》はなかったんですかのう。
セイハニーンのアミュレットはどこに……。
あ、山の中でも妙に上品な空気が感じられるものがありますぞ。
あんまり宗教には詳しくないのですが、あれが間違いなくセイハニーンのアミュレットでしょう。
アレを拝借できれば、私としては、終わりなんですが……。
「おいおい、ダメだぜ、持って行っちゃあ……」
目ざといローグが私のことを見ていたようです。
「いやあ、あんまりすごいもので……」
なんとかごまかしました。誤魔化せたのでしょうか?
どうしましょう、あのローグと競って、私が勝てるのは100回に1回もなさそうに見えますぞ……。
「よう、旦那、困ってるようじゃねえか」
急に私に話しかけてきたのは、森で出会ったあの小さい人!
「オイラが助けてやろうか?」
「そ、そんなことが?」
小声で小さい人に訪ねますぞ。
「フェアリーってのは、魔法の粉をかぶれば、姿が見えなくなるってのが普通なんだぜ」
「そ、そうだったのですか」
「アレを持ってくればいいんだろ?」
「た、頼みますぞ」
羽の生えた小さい人は、大騒ぎの真っ最中であるテーブルの上を何の気なしに飛んでいきます。
見つかってしまわないか、私はハラハラしながら見守っておりますぞ。
アミュレットに取り付くと、小さい人が、腰の袋から光る粉をふりかけます。
アミュレットの姿がスーッと消えてしまいましたぞ。
なんて不思議な……。
私もこうして座っている場合ではありません。
「いやあ、おめでとうございました。私はこれでそろそろ」
挨拶をして、席を立ちました。
「やりましたぞ! さすが小さい人!!」
「フェアリーのアモリって言うんだよ! ほらよ、持ってきたぜ。」
「ここでこうしてはいられません、さっさとヘドモズのところへ戻りましょう」
私はアモリさんと二人で森の中へ舞い戻ります。
夜の道は暗いですが、アモリさんがピカピカ光るので、怖くはありませんでしたぞ。
「ありがとう、小さきもの、いやヴォーロよ。セイハニーンの愛をまた信じることができる。
お前と巡り会えたのもセイハニーンのお導きだろう」
「いえいえ、大切なものが戻って良かったですぞ」
「奥の部屋に隠されている財宝を好きなだけ持ち出すがいい」
「いえ、実は取り返してくれたのはその小さなアモリさんのおかげなのです。お礼はアモリさんにしてください」
「気にすることないぜ」
「ああ、そうそう、それとは別にお願いなのですが、あなた達のことを記録に残したいのです。私と話をして記録させてもらえませんか」
こうして、私の日誌に新たな一頁が、いえ、二頁が増えていくのです。
統率者デッキ紹介
まあ、しかし、統率者戦と言えば、アレじゃないですか……?
そう、『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』!!
カードリストを眺めているとデッキが思いつくというのもあるのですが、私の場合、Youtubeの統率者関連の動画を見て考えることも多く……。
MTG北千住池田派さんが好きでよく聞いているのですが、その中で紹介されたアイディアをもとに、「自分で組むなら……。」という形でデッキを作りました。
というわけで、今回の統率者は《巡歴の学者、ヴォーロ》!
『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』版のヴォーロは、タップでドローするという能力なんですがこの内容が、
手札から唱えたクリーチャー呪文のクリーチャー・タイプを《ヴォーロの日誌》に記録していき、記録されている種類数だけドローできるということになっております。
『フォーゴトン・レルム探訪』のときほどクリーチャー・タイプを気にしながら構築しなくてもある程度大丈夫な能力になっています。
まあ、その分、強力さもすこし縮んだ? という印象です。
しかし、ドローでアドバンテージをもたらしてくれる統率者って普通に強いよなと思い、手札をそのままパワーに変えるデッキを目指して構築しました!
デッキリスト
ヴォーロくんのにっきちょうのキーカード
さて、《巡歴の学者、ヴォーロ》ですが、《ヴォーロの日誌》にとにかくクリーチャー・タイプを記載しなくてはなりません。
軽いクリーチャーがあれば、簡単に記載できるのになあと思ったそこのあなた!
なんとマジック:ザ・ギャザリングには文字通り死ぬほど軽いクリーチャーがいっぱいあるのです。いや、まあそこそこあります。
0マナクリーチャーです!
(このアイディアはMTG北千住池田派さんのものです)
0マナクリーチャーは場に出るなり、基本的には墓地に落ちていくのですが、《ヴォーロの日誌》にクリーチャー・タイプを記載することができるので
とにかくマナを圧迫することなく当面の目的を果たしてくれます。
まあ、ついでと言ってはなんですが、《料理長》を出しておくと、0マナ1/1クリーチャーとして+1/+1カウンターが乗った状態でとどまってくれる可能性が高くなります。
あくまでオマケなので、狙ってやったりはしませんが、覚えておいてください。
そして、《巡歴の学者、ヴォーロ》をアンタップするカードたち!
クリーチャーや、他のパーマネントを中心に、ヴォーロをアンタップできるカードをチョイスしました!
《療養院のヨレス》は新たに指輪物語で追加になったカードですね。
伝説のクリーチャーなら2体をいっぺんにアンタップできるので効率が大変良い!
必ずしも何度も繰り返し使えるカードばかりではありませんが、これらのカードを利用してヴォーロをアンタップし、ドローを進めていきます。
どうしてそんなにドローをするのか……。
それは、手札の枚数がそのままフィニッシュにつながるからです!!
これらの手札の枚数がそのままパワー・タフネスになる、いわゆるマロー系のクリーチャーを使ってフィニッシュします!!
力こそパワー! そして手札こそがパワー! たくさんの手札でムキムキに鍛え上げて圧倒しましょう!
最近、コンボが入ったデッキを使っていると、どうしてもコンボのことばかり考えてしまうため、コンボは意識的に避けた構成にしてありますが
ヴォーロのドロー能力を何度も起動できるようにし、自分のデッキを引き切るような構成にして勝利するようにしても面白いと思います。
また、今回のデッキでは、自分のデッキのやりたいことを優先してピックしており、打ち消し呪文などが少ない構築になっております。
ドローしながら、打ち消し呪文で場をコントロールする構成にして、ミッドレンジコントロールのようにしても面白い統率者でもあるでしょう。
終わりに
今回は《巡歴の学者、ヴォーロ》を統率者にしたデッキを紹介させていただきました。
まだ、バルダーズ・ゲートの戦い、味する……と思って執筆しました。
ぜひ、このヴォーロの可能性を信じて組んでみてください。
《巡歴の学者、ヴォーロ》は背景選択能力を持っているので、《料理長》だけではなく、他の色とも組み合わせることができます。
自分だけの色の組み合わせにも挑戦してみてください!
それではまた、「統率者をめぐる冒険」でお会いいたしましょう。