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2023.5.10

【第37章】牢獄 | プラズマの未開地探求録

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【第37章】牢獄 | プラズマの未開地探求録

牢獄でもあり、我が家でもある

目次

ゲームに勝つ鉄則

魔人探偵脳噛ネウロという漫画で、このようなセリフが存在する。


”勝負事に勝つ鉄則は… 敵が最も嫌がる事をやり続ける事”


この言葉はかなり確信を突いており、当然、デュエル・マスターズでも通用する考え方である。


つまり、相手が最も嫌がる事…相手を勝利から遠ざける、あるいは自分が勝利へ近づく事…をやり続ける事が、勝負事において勝つための鉄則なのだ。


では、具体的にどうしたら良いのか? と思った人も多いだろう。


典型的な例を挙げるなら、メタビートが良い例と言えるだろう


序盤から相手の動きを制限するカードを繰り出し続け、相手に対処を迫り続けるデッキだ。


メタビート以外なら昨今の環境を支配しているサガループも、この例に漏れないデッキと言える


最速3ターンでゲームを終わらせられるこのデッキは、2ターン目に唱えられる《エマージェンシー・タイフーン》すら、相手に対処を迫るカードになるのだ。


相手に対処を迫る、というのは、相手がそれだけ嫌がる動きだという事である


それを早期から毎ターン相手に突き付け続ける事が出来るデッキ。それこそが、勝利に近いデッキと言えるはずだ。

そのために必要なパラメータ、それこそが”悪意”

ヒーローズ・ダークサイド・パックが発売されてから数日後に、あるデッキを考えていた。


何とかして、《鬼ヶ英悪 ジャオウガOG》をうまく使えないだろうか?というデッキだ


ジャオウガと言えば十王編、そして王来MAXでラスボスとして活躍したクリーチャーである。


まさに悪役と呼ぶに相応しいキャラクタ性と、鬼札王国やその他の派閥を統率するカリスマを兼ね備えた、理想の悪と言える存在だ。


そんなジャオウガの別の姿である《鬼ヶ英悪 ジャオウガOG》も、鬼札王国の系譜である鬼エンド能力を有しており、誰かのシールドが無い状態でクリーチャーが攻撃すると、0コストで召喚する事が可能となっている


このカードでデッキを作る過程で考えた事は、対抗馬である《百鬼の邪王門》との差別化である。


《鬼ヶ英悪 ジャオウガOG》は、《百鬼の邪王門》と同じタイミングで使える鬼エンドを持つカードである。


しかし、不確定とはいえ、《百鬼の邪王門》の方が出力は高い。そのため、このカードと差別化を図るのであれば、《百鬼の邪王門》ではダメなデッキを考える必要があった。


そこで考えたのが、《ルピア炎鬼》を据えて攻撃するデッキである

《ルピア炎鬼》は、お互いに召喚以外の方法でクリーチャーを出す時、代わりに墓地へ送ってしまう能力を持っている。


そして《鬼ヶ英悪 ジャオウガOG》《百鬼の邪王門》の違いは、召喚か否か、という点なのだ


つまり、《ルピア炎鬼》で召喚以外の展開を封じ、自分は《鬼ヶ英悪 ジャオウガOG》を出して攻める、という構図が出来上がるわけだ。


これならば、従来の邪王門系統のデッキとの差別化を図ったうえ、《邪王門》の踏み倒しを封じながら殴り込める鬼タイムデッキ、という新たな形を確立する事ができる。


結局、このデッキは没案になってしまったものの、このデッキを作った際に一つの教訓を得る事が出来た。


それは《ルピア炎鬼》が思っていた以上にメタとしての性能が高いという事だ




現在のデュエル・マスターズは、踏み倒しが横行する環境である。《百鬼の邪王門》然り、【サガループ】然り、《ASMラジオ》然り、踏み倒しにより機能するデッキが多い。


という事は、《ルピア炎鬼》を出すだけで機能不全に陥るデッキが多いのだ。


そのうえ、《ルピア炎鬼》はパワー5000とかなり高めのパワーラインを持っている。


このパワー5000という数字は《絶望と反魂と滅殺の決断》のパワー低下1回では倒されず、《九番目の旧王》の全体マイナスでも倒されない


場持ちの良い、しかも多方面に刺さるメタクリーチャーという事で、このカードを採用したメタビートが組めないか? という発想に至ったわけだ。




その構築の原型として参考にしたのが、通称”ほんまかいな邪王門”と呼ばれるデッキであった


このデッキの中身はというと、大雑把に言えば、邪王門を受け札として採用したメタビート、である。


メタビートはその宿命とも言えるデッキの特性上、一度相手に戦況が傾くと、それを覆す事が難しいという弱点がある。


しかし、このデッキは《百鬼の邪王門》+《バサラ》により、一度相手に傾いた戦況を覆す事が可能になっているのだ


その強さは見ただけでは分からない点が多いが、CSで上位に入ったり超CSでも通用したりと、かなりポテンシャルの高いデッキである。


これをベースに《ルピア炎鬼》を組み込めば、更に相手を縛り上げながら攻め込めるデッキが組めるのでは、と考えたわけだ。


まず改造案として、元のデッキは水・闇・火の3色であったものの、水で強力なカードが《奇天烈シャッフ》《異端流しオニカマス》の2種であるように感じられた事から、思い切って闇・火の2色に絞る事とした。


また、《ルピア炎鬼》《百鬼の邪王門》の噛み合いが致命的に悪いことから、《百鬼の邪王門》を採用しない構築を目指すという方向性も決まった。


ここから導き出される構築は、狂気ともいえる”邪王門抜き邪王門”というデッキである


自分でもこの案は疑わざるを得なかったが、元のデッキの動きを知っている以上、この案は確かに弱くないはずなのだ。


この構築にする以上、元のデッキが持っていた”一度傾いたゲームをもう一度自分の側に傾ける”が出来なくなるため、相手にゲームの主導権を握らせない事が、より重要となる


この時点で、デッキの主な方向性は決まったも同然だ。


メタクリーチャーを並べて、早期に決着をつける。


早期といっても、火単ほどの速度は出せないので、目指すは4~5ターン目だろう。


そういう訳で、まず作り上げたプロトタイプがこちらになる。

4

4

4

4

1

4

4

4

3

4

4

コンセプト上、どうしても火単速攻に対してのガードが低すぎるため、《ザンジ変怪》による受けのかさ増しを図った


結果的に、この受けはすぐに抜ける事となった。


このカードが絡んで火単速攻に勝つためには、最初の1点でシールドから闇のカードを引き当てる必要がある


その時点で《ザンジ変怪》を手札に抱え、かつシールドの1枚目から闇のカードを引く確率は、この《ザンジ変怪》の枠をシールド・トリガーにした場合と大差無い事に気付いたのだ。


そのうえ、シールド・トリガーであれば、手札に抱える必要も無いため、手札リソースを圧迫する事も無い。


よって、《ザンジ変怪》は没となった。




では、火単速攻に対する対抗策としては何があるのか? という点が課題となった。


このデッキを調整していたのは、GP直前の期間。環境の上位に火単速攻が入り込んでいた時期であり、ほぼ全てのデッキに対して不利では無いという、絶好の立ち位置に居た


当たらない事は無いだろう、ということが容易に想像できるわけだ。


そのため、対策しないという考えはほぼ無かった訳で、その中で候補に挙がったのがこのカードであった。

《鬼ヶ羅刹ジャオウガ》である


一見すると対策になってないように思えるが、このカードを含めるとガード・ストライクが9枚以上入る事になる。


これにより、火単速攻の攻撃を首の皮一枚で食い止め、鬼タイムを達成した《鬼ヶ羅刹ジャオウガ》を0コストで召喚、そして2マナで《我我我ガイアール・ブランド》と繋げば、カウンターを決める事が出来るのだ


火単速攻以外の対面にも出せる可能性も十分にある事から、このデッキにおいて、このカードが火単速攻への決戦兵器となる事は確定的に思えた。


しかし、このカードにも問題があった。


それが、多色カードの枚数である


このデッキの動きの特徴として、2ターン目以降は常に新たなクリーチャーを送り込み続ける必要がある


初動が3ターン目では、先に相手に動かれてしまい、”敵が最も嫌がる事をやり続ける”ことが困難になってしまうのだ


よって、このデッキで多色カードをマナゾーンに置けるタイミングは、最初の1ターン目のみ、なのである


このことから、多色枚数を極力削る必要があり、その許容枚数が《影速ザ・トリッパー》《ルピア炎鬼》の計8枚のみ、であった。


多色カードである《鬼ヶ羅刹ジャオウガ》は、この理由により入れる事が困難となってしまったのだ。


では、この問題をどうやって解決するか?


その答えは至極簡単であった。


当たらなければ誤差である。




GPという大型大会は、その特性上、あらゆるタイプのデッキと遭遇する。


裏を返せば、同じデッキと当たり続ける、というのは非常に珍しいという事だ。


結果だけを先に述べると、GPで火単速攻には一度も遭遇することなく終わる事となった。あれだけ最大母数を誇っていたのに、だ。


このことから、特定の一つのデッキに対してデッキの枠を割くより、他のデッキへの出力を維持する構築の方が、このデッキにとって理想だろうという結論に至った


また、火単速攻が環境に跋扈していた状況から対策されており、上位に上る前に沈んでいるのでは? とも考えていた。


そうなれば、勝ち続けることで火単速攻に当たる確率も低くなり、相対的にこのデッキの立ち位置も良くなるはずなのだ。


最初に負けてしまったら地獄を見る事になるが、そうなったら割り切ろう、という結論だ。


さて、そうするのであれば、このデッキの出力を維持する、あるいは上げるカードを探す必要があった。


そんな中で白羽の矢が立ったのが、《ブランド-MAX》だった

このカードと他のクリーチャーだけで、一気に4点もの打点を作り出す事ができる。


2ターン目にクリーチャーを出し、3ターン目に追加のクリーチャーを送り込んで1枚ブレイク、そうすると4ターン目に相手にとどめを刺せるだけの打点を揃える事が出来るのだ。


そのうえ、出してしまえば受け札としても使え、手札に追加の《ブランド-MAX》があれば、その分さらに延命が可能だ。


実際に回していた際も、このカードで勝ち切る事も多く、非常に理想的なフィニッシャーであった。


しかし、やっている事は打点の向上だけであり、敗北回避を使う機会は非常に少なく、本当に《ブランド-MAX》で良いのか? という疑問は最後まで残っていた


そんな中、GP一日目の終わり際、このデッキに相応しいフィニッシャーの存在を知る事となる。

それこそが、《烈火大聖ソンクン》


自身の攻撃時、あるいは自分のクリーチャーが破壊された時

①ブロッカー破壊

②コスト3以下のクリーチャー破壊

③コスト3以下のタマシード破壊

④相手のシールドを1枚ブレイク

のうち、どれか1つを使う事が出来る超優秀なクリーチャーだ。


しかも、スピードアタッカー持ちである。大盤振る舞いにもほどがある。


このデッキの《烈火大聖ソンクン》は、横に並んでいる厄介なクリーチャーを除去すると、どういう訳か除去やシールドブレイクが飛んでくるという、相手にとってこの上なく厄介な存在となってくれる。


そのうえ、出て攻撃するだけで相手の小型を破壊できるため、間に合いさえすれば、火単速攻への回答にもなり得る


打点の形成能力で言えば《ブランド-MAX》の方が上であるが、こちらの方が幅広い対面に致命傷を与える事ができるため、採用に至った。


他にも色々と試行錯誤した事はあるものの、書いていくと記事のボリュームが倍以上は長くなるので、そこは割愛する。


あとは、実際にGPで使ったリストと、直近で使ったリストをご紹介しよう。

デッキリスト

4

4

4

3

1

4

4

4

4

4

4

まず、こちらがGPのオリジナルで使用したリストになる。


《サガ》が多い事は明らかだったので、そちらに寄せて《コッコ・武・ルピア》を採用。


また、4c邪王門が増えていた時期でもあるので、攻め込む際に使える札を増やすために《単騎連射マグナム》も採用している。


闇文明のカードが16枚という事が気になるかもしれないが、これは綿密に練った果てに辿り着いた枚数である。


《星空に浮かぶニンギョ》は、2ターン目から相手のマナ加速を咎めるカードである。


そのため、2ターン目に出したいカードではあるのだが、2ターン目にこれを出したいのであれば、闇のカードは18枚以上は欲しいところである


では、なぜ16枚なのか。


その理由は、《星空に浮かぶニンギョ》を2ターン目に出すのは後手の場合だから、である


というのも、先手を取った場合、このカードよりも《影速ザ・トリッパー》を優先して出す事が多い。


むしろ、先手であれば《影速ザ・トリッパー》の方が強いとさえ言える。2ターン目に出すのは、他のメタカードや、《カンゴク入道》で十分なのだ。


となると、後手で2ターン目に出せれば良い。その結果、ギリギリの闇文明16枚という構築に落ち着いたのである


また、闇のカードを増やしすぎると、《我我我ガイアール・ブランド》を出しにくくなるという問題も発生する


このカードで4ターン目に攻め込むには、2コストの火のクリーチャー、《我我我ガイアール・ブランド》、そして火のカード2枚がマナゾーンにある事が必須である。


つまり、闇のカードを3枚以上マナに置くことが出来ない。そのうえ、2ターン目・3ターン目に火のクリーチャーを出す事を考えると、更に火の濃度を上げる必要があるのだ。


以上の理由により、火・闇の枚数配分は、このようになっている。


デッキの動きは、相手が嫌がるクリーチャーを2ターン目から繰り出していき、相手が動き出す前に仕留める、である


攻め込むタイミングが非常に難しいデッキではあるが、基本的に、相手を妨害できるカードが2枚以上並ぶ状態をキープしながら攻め込むことを意識しよう


また、常に次のターンが回って来るよう立ち回る事も意識しよう。シールド・トリガーを踏んだ場合にどれだけ不利になるかを考え、著しく不利になるなら、いったん待った方が良い。


しかし、時間をかけすぎると相手が動き始めるので、そこも考えて動くようにしよう。


常に敗北と勝利が背中合わせで存在する戦況になるので、状況判断だけは慎重に行う必要がある。

4

4

4

4

4

4

4

4

4

4

続いて、こちらが一番最近に使ったリストである


このリストはチーム戦で使った内容で、さすがに火単速攻を割り切るわけにはいかないので、《こたつむり》で少しガードを上げる構築にしている


代わりにサガ対面にリソース勝負をされると辛い事になるが、元が不利ではないので、あまり問題にならなかった。


《こたつむり》は2コストの火のクリーチャーなので、《我我我ガイアール・ブランド》で攻め込む際にも役にたってくれる。


ついでにサガ対面においても、《DOOM・ドラゲリオン》の攻撃をいったん止めてくれるので、刺さってくれる


あとは進化クリーチャーも止まるので、《鬼羅.Star》にも有効だ


デッキの動かし方は変わらないが、《こたつむり》により火単速攻に偽装しやすくなったため、最初は火単速攻に偽装、その次に赤黒邪王門に偽装して攻め立てる事が可能になった


実際、この見せ方により、ほぼ全ての対面が勘違いしてくれたものだ。

終わり

今回は、特に大きなギミックもド派手なコンボも存在しない、終始真面目に練り込んだメタビートの紹介であった。


原型である”ほんまかいな邪王門”は、本当に何が強いのか分からないが勝ててしまう、不思議なデッキである。


その強さは、本当に信じられないが、超CSの予選で7-0通過したほどである。本当に訳が分からない。


ただ、自分がド派手なデッキではなく、このようなデッキの方が手に馴染むという事に気付けたのは、このデッキを使って得た一番の収穫であった。


一つのミスが致命傷に繋がるが、正しい手を打ち続ければ、相手を縛り上げたまま敗北に叩き込む事ができる。


相手にとっては、まさに監獄に閉じ込められたような感覚だろう。


そのことから、このデッキの事は、こう呼んでいる。


闇火”プリズン”と。

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このコラムのライター

プラズマ

プラズマ