その22〜ゼロから始めるオリジナルデッキ構築講座。バトルデッキを組もう。春だし~
●色は匂えど
春きぬと 人はいへども ゆるふわの
なかぬかきりは あらじとそ思ふ
(訳)『春が来た』と人が言ったとしても、このコラムが更新されない限りは春はまだ来ていない思う
『古今集』で壬生忠岑という人が詠まなかったといわれている有名な句です。
というわけで今回もやっていきましょう。どういうわけで???
『機械兵団の進軍』が発売されました。
「多元宇宙の片隅の次元、新ファイレクシア。5つの法務官が治めるこの次元に、巨大な危機が迫っている! これは、平和を守るプレインズウォーカーたちの物語。そして、天使になる騎士の物語である!」
のオープニングナレーションでおなじみですね。
ファイレクシア語だから聞き取れなかっただけでそう言ってたんですよ信じてください。
今回はスタンダードのデッキをゼロから構築していく過程を解説していこうと思います。
春ですからね。マジックを始めたばかりの初心者もここで一つオリジナルデッキというものに手を出してみましょう!
初めて世の中の役に立つコラムみたいなこと書いてるので、文章が途中で途切れたり明らかに「これ別のまともな人が書いてるな」と感じたら真人間アレルギー反応でぶっ倒れたと思ってください。
●見渡せば柳桜をこきまぜていざ決めたるやデッキコンセプト
まずはデッキのコンセプトを決めましょう。
大体の場合新しいデッキを組む時は「使いたいカード(特定のカードや部族)」「やってみたい動き(アーキタイプやコンボ等)」が最初にあってスタートするものです。
そんな自分らしさを表現する「コンセプト」を決めましょう。
例外として競技シーンの仮想敵に対するアンチデッキとしてのコンセプトもありますが、これだけは構築手順が全然違うので除外します。
ここはそういうところではなく、買い物帰りの奥さんに「あら、いいじゃない」と言われるくらいのゆるふわさでやってるので。
今回はサンプルとして『機械兵団の進軍』で登場した新しいカードタイプ「バトル」を使い倒すデッキを組みます。
既存のアーキタイプにバトルをそっとひとつまみなんてことはしません。これでもかというくらいに徹底的にバトルを味わい尽くす、ホウエン地方編~シンオウ地方編のサトシくらいのバトルマシーン具合でいきます。
バトルというカードタイプの説明は公式をご参照ください。
https://mtg-jp.com/reading/translated/0036816/
●久方の光のどけき春の日に集め集めし強化カードを
コンセプトが決まったらそのコンセプトを活かせるようにカードを選定しましょう。
◯選定理由の例
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・コンセプトのカードとシナジーのあるカードを採用してデッキパワーを高める
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・ドローサポートやサーチカードを採用してコンセプトのカードが手札にくる確率を上げる
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・コンセプトのカードを安全に唱えられる状況にするためのコントロールカードを採用する
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・コンセプトのカードと似たような役割のカードを採用して擬似的に5枚以上に増やす
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・屋久島や伊勢神宮、モヘンジョダロ遺跡などのパワースポットを巡り運命力を蓄える
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・やはり右手の力が全て。何者にも負けない圧倒的筋肉を手に入れる
などなどありとあらゆる手段を使って欲望を叶えにいきます。
ちょっと難しいと思ったら、気になるカードは全部とりあえず突っ込んでみましょう。
今回は「『バトル』を使う」という若干ふわっとしたコンセプトなのでチョイスが難しく感じますが、見方を変えると「新しいエキスパンションのカードをたくさん使う」と変換できます。
何事もこういった視点の変更は大事で、自分も仕事中に上司に「これは休憩ではなく仕事を効率的にこなすための糖分摂取です」と言い張ることでおやつタイムを取っています。
「食ってるのポテトチップスじゃねえか」と言われてからが本番です。「芋は糖分」と言い張りましょう。
新しいカードをたくさん使ってデッキを組むときはリミテッドを参考にすると良いです。
今回はバトルを使うと決めているのですが、リミテッドアーキタイプに丁度いいものがありますね。
(出典:『機械兵団の進軍』の学び その2より引用)
赤緑がバトルの色ということで今回は赤緑のデッキを組みます。今回はですよ。
こいついつも赤緑しか組んでないなとか言わないでください。ただちょっとだけ恥ずかしがり屋-グルール-なだけです。
●山桜我が見に来れば春霞いざ決めたらん勝つる術かな
カード選定の最初の段階で「勝ち手段」を決めます。
ゴールは「バトルを裏返す」ことではなく「バトルを裏返して勝つ」であることを忘れてはいけません。
バトルを裏返すのに必ず何かしらのリソースを割くことになるため、裏返ったバトルにはそれ以上のリターンが必要です。
そんな都合のいいカードがあるわけ・・・
《イコリアへの侵攻/Invasion of Ikoria》
《イコリアの頂点、ジローサ/Zilortha, Apex of Ikoria》
あったわ。
2マナ8/8警戒スーパートランプル(誇張)です。やはりゴジラは最強でしたね。
表面の《イコリアへの侵攻》も序盤中盤終盤隙がない便利なサーチカードです。
シルバーバレット戦略を取る選択肢があるのもかっこいいですね。
今回はこのカードを勝ち手段としてデッキを構築します。
他にも気になるバトルカードがあったらチェックしておきましょう。ではデッキビルディング開始です。
まずは使いたいバトルカードを全部入れましょう。全部4でいいです。
次にバトルをサポートするカードを入れます。
バトルの守備値は火力でも減らすことができますが、それにより手札を消費するのはなるべく避けたいところ。
なので今回はクリーチャーを中心にバトルを殴る感じでカードをチョイスします。
バトルに慣れていないので「バトルを殴る」と書くだけで背中がムズムズします。
《猛り狂う猛竜/Rampaging Raptor》
こちらは学術名「バトルナグリラプトル」です。
新ファイレクシアでファイレクシアンジュラシックワールドをオープンさせようとしたけども、クリス・プラットを完成化させるのを失念していたせいで捕獲に失敗した時のイラストですね。
どいつもこいつも猛り狂っているのは、最新の学説によると恐竜の捕食対象ではカルシウムが不足しがちで、当時のイクサランの恐竜たちは常に《苛立ち/Rile》していたという説が有力です。嘘です。
《ドゥームスカールの戦士/Doomskar Warrior》
4マナ5/4トランプルで、バトルにダメージを与えるとハンドアドバンテージを得られるかもしれない神の国からやってきたバトルナグリマスクです。
マナレシオが非常に優秀ですね。
他のバトルアベンジャーズ達も含めて4マナ域ばかりなのが気になりますが、今は他の仲間をアッセンブルすることに集中しましょう。
これが叩き台です。
最終的に名刀に仕上がればいいので、最初はこれくらいの炭治郎が1巻で斬ったような石の塊で問題ありません。
土地を調整するのは一番最後なので今は《適当な土地》を24枚突っ込んでおけば良いです。
●月夜にはそれとも見えず梅の花デッキカラーを決めべかりける
ここで一度立ち止まってデッキカラーについて考えます。
今回は最初から色が決まっていますが、使いたいカードを片っ端から詰め込んだ状態ではまだ色が確定していないこともままあります。
というか手順通りにやっていれば気になるカード全部つめてぐっちゃぐちゃになった5色のロックンロールな何かになっている可能性も十分あります。
使いたいカードを詰め込んだら、次に色をどうするかを考えます。選択肢は常に
の3択です。
「色を変更する」場合は一旦コンセプトをゼロベースに戻しましょう。
実家に帰った時に親から「何もしていないのに家電がネットにつながらなくなった」と言われた時の最善手は初期化ですよね? そういうことです。
「ゼロベースって言いたいだけだろ」って? はい。
・減らす
当然ながら色事故が減るのでデッキの動きをよりシンプルにしたいときに選択します。
色を減らすことでキーパーツが無くなるor機能しなくならないか注意します。
・増やす
理想のムーブにあと1手届かない時や現在のカラーで有効なカードが少ない時に選択します。
色事故リスクとテンポ低下リスクが増加するのでそこを注意します。
これは「足りない」を補う選択肢で「余計なものを足す」選択肢ではありません。
中学生くらいのファッションでTシャツに英語の文字が並んでいたり、服に鎖とか謎のパーツがあった方がオシャレに見えていた時期があるでしょ。あれと同じ失敗をしがちです。
今回のパターンの場合は・・・
→減らす
《イコリアの頂点、ジローサ》で勝つことを目的としているので緑は必須です(この勝ち手段が正解かを疑うことも必要です)。
なので赤を減らすという選択肢になるのですが、赤には火力でバトルの守備値を減らすという重要な役割があります。
2マナ最強のアタッカーである《ヤヴィマヤの偶像破壊者/Yavimaya Iconoclast》も抜きたくないので今回は減らす選択肢はやめておきましょう。
→増やす
シングルシンボルで色を増やしてまで入れたいバトルカードが無いので今回はこの選択肢は取らないことにします。
●春雨の降るは涙か桜花採用カードを厳選しなければ
採用したカードを厳選しましょう。
ここからがデッキ構築の正念場です。増やすことは簡単ですが減らすことは難しい、体重と同じですね。気合で頑張りましょう。
ちなみに今のデッキ枚数は84枚なので24枚削ります。ちょっとエグめのダイエットと割り切りましょう。
方法は様々ですが、いくつか例を挙げます。
例1 本当に使いたいカードだけを厳選する
たたき台をもう一度見直して、「本当に使いたいカード」「念のため入れたカード」に分け、後者をバッサリ切ります。
コンボルートが決まっている場合、思い切ってコンボと関係無いカードを全部切り捨てるのも有りです。
《イコリアへの侵攻》
このチームの4番なのでゴジラは絶対に入れたいです。好きなゴジラ映画は『ゴジラvsデストロイア』です。
《レガーサへの侵攻》
他のバトルに4点飛ぶのは魅力的ですが、3マナ払った割に盤面干渉力が低いので抜いてもいいかもしれません。
手札の安定化に貢献していますが、流石に3種類は多すぎるような気がします。
どれも一長一短で非常に悩ましいですが、《イコリアへの侵攻》を含めても流石に多すぎるので断腸の思いで削らなければなりません。
使用感を確かめてから判断したいのであれば、各カードの採用枚数を均等に減らして全部採用するという手もあります。
例3 採用枚数を減らす
たたき台の時点では全部4枚にしていますが、当然ながら後半にだけ欲しいカードというものは存在します。
《作業場の戦長》
強力なカードですが、4マナ域の層の厚さを考えると2-3枚に減らしても良いかもしれません。
●花の散ることやわびしき春霞改めカードを追加してみむとする
カード厳選を経て洗練されたデッキですが、まだ完成ではありません。
無駄を省いたデッキだからこそ見えてくる強さがあるはずです。もしそういったものが見つかったら、その長所を伸ばすことを改めて検討してみましょう。
今回のパターンだと墓地にカードを送るバトル《エルガモンへの侵攻》や《メルカディアへの侵攻》があるので、せっかくなので墓地活用するカードの採用を検討してみましょう。
例えば『兄弟戦争』の蘇生を持つカードなどは相性が良さそうです。
そうやってカードを追加すると再び60枚をオーバーするので、上記「追加」と「厳選」を繰り返して刀を打っていきます。
徐々にですが、デッキから無駄がなくなって研ぎ澄まされていくのがわかります。多分わかります。
●袖ひちてむすびし水のこほれるを土地調整し風や解くらむ
●世の中にたえて桜のなかりせば一人回しはのどけからまし
目的地はすぐそこです。デッキが60枚になったら一人回しをしてみましょう。
そうすることでデッキの「引っ掛かり」が見えることもあります。
その引っ掛かりを無くすためにカードを削ったり、別のカードを採用します。納得いくまでひたすら回しましょう。
《ナヒリの戦争術》
バトルをひっくり返せるのは強いですが、緑が多い関係でダブルシンボルが出なかったりするため、枚数を減らしても良いかもしれません。
●桜花咲きにけらしなあしひきの山のかひより見ゆる大会
さぁ、大会に出てみましょう。「百一人回しは一対人戦に如かず」ということわざがあります。今考えました。
今の環境に自分のデッキがどこまでやれるのか答え合わせです。
環境にいそうな仮想敵に刺さりそうなカードを15枚選んでサイドボードにしたらカードショップに向かいましょう。
できたてほやほやのオリジナルデッキなんて0-3は当たり前、1勝できたらガッツポーズするくらいの気概でいきましょう。
今やっとスタートラインに立ちました。実戦で得たデータに勝るものはありません。
仮想敵を倒すためのカードを採用するも良し!
他の人が使っていたギミックを拝借するも良し!
イマイチだったカードを抜くのも良し!
思い切って解体するのも良し!
いつの日か勝てる日を夢見て好きなように調整して自分だけのデッキを組みましょう。
レッツマジック!!
●詠み人知らず
AIには頼らず自分の力でデッキ調整しよう!!
おしまい