「嘘つき、バムル! 嘘つきバムル!!」
「嘘じゃねえや!」
僕はムキになって怒鳴り返す。
だが、街の悪童たちは囃し立てながら逃げ去ってしまった。
「本当に、いるんだ。英雄ミンスクは……」
悔しさに思い切り拳を握りしめる。
「僕が見つけてやる」
僕は踵を返すと、一目散にバルダーズ・ゲートへと向かって行った。
英雄ミンスクはこのバルダーズ・ゲートという街全体の伝説だ。
大昔、世界を支配しようとした悪いエルフを他の英雄たちと一緒に倒したとか
あとは困っている人のことは絶対に見捨てなかったとか、そういうおとぎ話がたくさん残っている。
いや、残っていたはずなんだけど、どんどんと減ってしまっている。
僕が生まれるもっと前には今よりたくさんのミンスクの伝説が残っていたはずなのに
そういうものは語り継がれることを忘れられると失われていくようだ。
今では少なくなった話をどれだけかき集めてみても、実は英雄ミンスクの最期という話は一つもなかった。
僕は英雄ミンスクが実は死んでなんかおらず、今もどこかにいるという証拠だという気がしていた。
それで、街のヤツらと言い合いになってしまったのだ。
ミンスクはいる。
でも、きっとバルダーズ・ゲートの街の中ではないだろう。
だとしたら……人目につかないところ、町外れの小さな祠、あそこにいる気がした。
僕は家に戻って厚い外套と木でできた剣を掴むと祠へ向かって走り出した。
「こんな寒いときに面倒くせえなあ……」
「文句を言うんじゃない。年越しの金も無いくせに」
ウィザードのガムジンが苦言を呈してくる。
まったく言われたとおりだった。大きな仕事でいっときは潤うものの、冒険者という稼業は実入りとは裏腹にあっという間に手元から金が消えていくものなのだ。
「仕方ねえだろ、この前の沼では毒消しが大量に必要だったんだから……」
「そんなことは分かっておる。いいから先へ行けい」
ガムジンが杖で俺の背中をつついてきた。
ちっ、渋い野郎だぜ。
この祠にコボルドが住み着いたらしいという噂が出ると同時に調査と討伐が依頼された。
本来なら俺達みたいな中堅冒険者の仕事じゃないんだが……背に腹は代えられないって言うだろ?
案外、奥が深い祠の中を歩きながらあたりを探る。
生き物が居着いている気配は無い。
本当にコボルドなんかいるのかよ……。
「まあ、奥まで行きゃわかるか」
ひとりごちると先へ進んだ。
「うわぁああああ!!」
にわかに叫び声が聞こえた。俺達は身構え、さっと周りを見回す。
こういうとき、叫び声につられて走り出してはかえって危ないものだ。
周囲に危険は無いとわかると声のした方へ走り出す。
少しすると開けた空間に出る。
見えたのは、腰を抜かしているガキと、ガキに迫っている……あれは何だ?
鎧を着込んだ戦士が襲いかかっているようだった。
優秀な冒険者は思い込みで戦場に突っ込んでいかないもんだが……ガキならとりあえず助けてから考えないとダメだろうな。
盾を構えて突進する。鎧の戦士へ体当たり。
鎧のヤツは横へ跳ね飛ばされる。
俺の目算ではもっと遠くへとんでも良いはずだが、身じろぎもせず、
ソイツは横へ飛ばされていた。
思ったよりずっと重いのだ。
「こいつ、なんだ?」
「ゴーレムじゃ! 魔法で動いておる。祠のガーディアンなんじゃろ」
「そうかい!」
俺は剣を横に薙いだ。
ゴーレムの胴に当たったが手応えは無い。
内臓が無いんだ、どこを叩いても同じだろう。
「どこかに止める手立てがあるかもしれん!」
そうは言ってもな……。こんな時にローグのピケがいてくれたら助かるんだが……。
ゴーレムの反撃を剣と盾で抑え込みながらあたりを見回す。
壁にあからさまなレバーが見える。
しかし、俺では無理だな。
「ガムジン! 壁のレバーだ!」
「すまん! 足が床にひっついたわい! 今、ひっぺがすために耐久力セーヴをしておる!」
こんな時に!!
「オイ、ガキ! お前しかいねえ! 壁のレバーを上に上げろ!」
「え、でも……」
「ブルってんのか! お前がやんねえと死んじまうぞ!」
「ブルってんのか! お前がやんねえと死んじまうぞ!」
僕はもうどうしようもなく怖くて怖くて仕方がなかった。
だけど、死ぬのはもっと嫌だった!
震える脚を押さえつけて転がるように壁へ向かう。
壁のレバーを握る、手が滑りそうだ。
レバーは思ったよりもずっとずっと硬い。
「ぬぐぅううう」
声が漏れる。
目から水が吹き出す。
レバーが動く。
ガンッ!
レバーが上がりきったとき、ゴーレムは止まった。
「死ぬかと思ったぜ……いや、やろうと思えば倒せたわけだが?」
戦士の兄ちゃんが声をかけてきた。
「よくやったな」
僕は首をくすぐられたような、恥ずかしさがこみ上げてきた。
「しかし、お前さんはこんなところで何をやってるんじゃ?」
足を引き剥がしたドワーフが訊いてきた。
「僕、英雄ミンスクを探しているんです。ミンスクは最期の伝説が無いでしょ。だから生きていると思って」
「ミンスクだぁ……? 俺の記憶だと、確か死んだからあの石像が作られたって訊いたけどな」
「えっ」
それは初耳だ。
バルダーズ・ゲートの広場にある英雄ミンスクの像。
あれにそんな謂れがあるなんて……。
すっかり肩を落としてしまった僕に、二人は声をかけてくれた。
「まあ、とんでもない英雄だから、最期の話は忘れられたのかもしれねえ」
「そうじゃな。まあここにいても仕方あるまい。街に戻ろうじゃないかの」
僕は二人に連れられて街に戻った。
英雄ミンスクの像は、今日もそこにあった。
「英雄の最期かぁ……」
雄々しい英雄は、今日もそこで空を見上げている。
「ちぇ……」
僕は家へ帰ろうと踵を返した。
その時……。
バリバリバリ。
石を砕くような音がしたかと思うと、石像のいたところに
巨大な禿頭の男が立っていた。
男は周りを見回すと、沢山の人がいることに気づいたようで……。
「ハッピー・ニューイヤー!! こんな日にたくさん集まってもらえてありがとう! ところで今日って何曜日?」
と大声で言ったのだった。
あけましておめでとうございます!!
気がついたら2022年も終わり……2023年になりましたね。
年末年始といえば、何かと人が集まる機会が多い季節……。
ウイルスの影響でしばらく会っていなかったあの人やこの人と会う機会ができたり
普段はあまり顔を合わせることのない親戚たちと会ったりすることが多くなるのではないでしょうか。
人が集まったら……そう「統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い」ですよね!!
普段はできない統率者ドラフトを遊びましょう!! 私はドラフト・ブースターを温めて待っております!!
さて、今回は……年末年始……時空を強く意識した統率者、《時を超えた英雄、ミンスクとブー》です!!
さて、《時を超えた英雄、ミンスクとブー》ですが、誰? という方もいらっしゃるかと思います。
この人、PC用ゲーム「Balder's Gate」シリーズの登場人物で、愛すべきキャラクターとして、様々な方法で時空を超え、シリーズ作品全部に登場するというとんでもねーことをやらかしています。
開発側はもちろん、プレイヤーたちにも愛されているのでしょう。
バルダーズ・ゲートの戦いでプレインズウォーカーとなったミンスクの能力はハムスター・クリーチャー・トークンの«ブー/Boo»を生成し、クリーチャーを強化し、いざとなれば、クリーチャーをぶん投げてダメージを与えるというものになっています。
こう言ってはなんですが……こんな見事にキャラクターを再現したカード、なかなか無いんじゃないでしょうか……。
さて、D&D限定構築では、マナ基盤を整えつつ、大型のクリーチャーを繰り出して戦闘するデッキに仕上げました。
ブーが毎ターン出てきて、4/4になりつつ殴るだけでもかなり強いんですが、いくつかミンスクと相性の良いカードを選定しています。
《オーカー・ジェリー/OCHRE JELLY》は、生贄に捧げても分裂してクリーチャー・トークンとして場に残ります。ミンスクの-2能力と非常に相性が良いですね。
そして、《ブレイ/BULETTE》はクリーチャーが死亡したターンに+1/+1カウンターが載せられます。ブーを生贄に捧げたときにもカウンターが載せられますし、オーカー・ジェリーとも相性が◎。
そして、めちゃデカクリーチャーとして《タラスク/THE TARRASQUE》!
ただ出して殴っても強いのに、ミンスクの能力でぶん投げれば10点火力に!! ダメ押しに使いましょう。
D&D限定構築は難しいコンボ等は無いし、強いクリーチャーをたくさん使えるので遊んでいて楽しいデッキになっています。
限定解除構築デッキーーーーーー!!!
わーー!!
さて、+1/+1カウンターをいっぱい載せたい! そしてクリーチャーをデカく育てたい! という欲望に忠実なこのデッキのキーカードは……。
なにかと+1/+1カウンターをばらまいてくれるこれらのカード!!
ちょっと前のカードなのでみんな忘れちゃったんじゃないかな……。
《反逆の混成体》は、自分が育つとみんなも育っていく、どんどん育っていけよ……。
《瓦礫帯の略奪者》は、攻撃クリーチャー全部に+1/+1カウンターを載せていくちょっとスパルタな育て方。 強くなるのコイツだけだったスマンでも強くなるからいいよね。
そして、それらのカードを強力にしてくれるのは《硬化した鱗》!!
モリモリ育っていく自分のクリーチャーたちを眺めて愉悦に浸りましょう!
そして、いざとなったら《時を超えた英雄、ミンスクとブー》で投げてダメージにしましょうね。