※本記事は『戦乱のゼンディカー』ストーリーの二次創作になります。
編み上げられるもの、受け継がれていくもの
燃えつづける炎をぼんやりと眺めながら、私は薪を火にくべた。
私の意識は眼の前で燃えている焚き火よりも、この避難民の一団全体へと向いている。そのようにずっと感じられていた。
炎の中で薪がはぜる。
火の粉がぱっと舞い上がって、そして冷たい風の中でゆらめき、消えていった。
このゼンディカー全体でエルドラージと呼ばれる怪物どもが暴れまわるようになって、どれほどの時間が過ぎたのか。今のように世界中が荒廃したのは、実際よりももっともっと昔だったように感じられてならない。
我々は、生きるための場を、生活の場を捨て、今よりも安全な場所を目指して歩いている。
しかし、それはどこに? 誰も本当の答えを持ってはいないということは知っていた。
だが、突っ立っているだけでも死ぬことは明白だったから、それで……。
「ねえ」
子どもが火のそばに歩いてきたことに気がついたのは、とりとめのない思考を遮られたからだった。
「(眠れないの?)」
私は咎めないように柔らかな表情を作り、手話で訊いた。
「(まあね……)」
彼がゆっくりとした手話で返す。
子どもと言っても、大人と子供の狭間、背伸びしはじめる年頃であることが見て取れる。
この頃は接するのが難しい……というのは少し前の余裕が有った頃、今は大人も子どももなりふりかまっていられない。誰かの気持ちなんて考えている暇はなく、ただ状況だけが時間を押し流していくようだった。
「僕たち……どうなっちまうの。……ここもよくわからないし。死んじゃうのかな……」
口をついて出た素朴な、だが切実な疑問だ。
現実的に、私にだってどうなるかわからない。だが、今、彼に必要なのはそんな言葉ではないはずだ。
私は本来、こんなに話をする方ではない。むしろ、コーという種族は必要以上の言葉を発することはほとんど無いのだ。それはコーが荒野を渡り歩いてきた種族であるからだ。
しかし……しかし今は、彼には言葉が必要である気がした。
「私はこのゼンディカー全体を股にかけてきた冒険者だ。今吹いている風がどこから来たのか、この乾いた大地がどこへ続いているのか、よく知っている。こっちに来て座って一緒に見てみなさい。あの西にそびえ立つ山の頂からまっすぐ上にひときわ強く輝く星が見えるだろう。あの星は標の星。あの星さえ見失わなければ私達は常にどこにいるのかわかる」
じっと彼は星を見ている。おしゃべりがすぎるかとも思ったが私は更に続けた。
「私はこの世界に生まれ、ゼンディカー全体が自分の家のようにしてひとりで過ごして来た。部族の元を離れて。だが、今、集まって身を寄せ合うように、コーは昔から一人ひとりの力を集めて大きな力を紡ぐ力を持っていた。崖に安息所を作るとき張る大きな天幕、あれはコーという種族が手を取り合い、絡まり合って厄災から中のコーを守るという意味がある。また、力を合わせ外の厄災を跳ね返すというコーという大きな家族がひとつの大きな力を構成していることを表している。それを忘れないように、他の人たちの力となり、また自分も大きな力を借りて生きることそのものを象徴しているんだ」
普段のコーがするような身振り手振りやロープ振りだけではこの気持ちは伝えきれなかった。私は自身にも言い聞かせるように彼に語りかける。ゆっくりと噛みしめるような言葉が私の口からあふれると、星を見ていた彼はいつの間にか私の顔をじっと見つめていた。
「君もいつかその大きな力の一つとなる。今は虐げられているかもしれないが、きっとコーたちは、すべてのものがつながることを思い出すときが来るはずだ。だからその時まで生きるんだ」
落ち込んだ顔をずっとしていた彼の表情は、今は少し夢を見ているような、熱に浮かされたような、いずれにしても生気のあるものに変わっていた。
彼は立ち上がると元の天幕へ向かって帰っていった。
私は、薪を火にくべた。
空に星がまだ瞬く頃から我らは出発した。
ゼンディカー全体の者たちが集まっているという海門はまだまだ先だ。わかっていた。だからこそ、早く進まねばならない。
視界の効く荒野を過ぎて、我々は深い森の外縁部へ差し掛かっていた。荒野では闊歩する怪物(エルドラージ)どもがよく見えたので、うまい具合に避けられたのだが、この森はそうはいかないだろうということは分かっていた。しかし、食料を調達しつつ、最短ルートで進むためにはこの道を行くしか無かった。
「戦いの心得があるものは、最前を行く。半分は最後尾だ。残りのものは中央で隊を組め」
私は指示を出す。ほとんどの者に戦いの心得は無い。しかし、幾人かの冒険者たち、戦士たちが守りについてくれた。
「ゆくぞ、気を抜くな。どんな些細なことでも報告しろ」
森の、輝くような緑の葉が、今は恐怖を覆い隠している暗幕のように感じられる。
葉が落ちて、柔らかくなった地を踏みしめて私は歩き始めた。
気が重い……しかし、考えてみればどんな冒険だって気が軽かったことは一度も無かった。
冒険だ。
この世界はいつだって冒険を生きるものに要求する。
手に持った鈎ロープを腰に下げて、私はショートソードを引き抜いた。
樹上からの偵察は功を奏し、我らは順調に森を進んでいる。
しかし、本当にこんな簡単に進めるものなのだろうか。不安だけがずっと拭えずにいる。
パキリ、と小枝を踏みおる音が聞こえたかと思うと
「うあああーーー!」
前列の戦士が地面に引き倒された。
小型エルドラージの触手が戦士の足に巻き付いている。なんてことない倒木の中から、異形のそれらは次々に現れてくる。
「陣を崩すな! 中央を護れ!」
エルドラージは我々の動きに合わせて囲んでくる。
私は鎖フックを腰から引き抜いた。赤と青の奇妙な色をしたエルドラージが飛びかかってくる。
左手のショートソードを素早く突き出す。手応えがあった。エルドラージは地面に打ち付けられ、絶命した。
「とにかく数を減らすんだ。小型のものから潰せ! そうすれば囲まれない!」
鎖フックを頭上に投げ上げ、私は身体を持ち上げた。地面から解き放たれた身体は、鎖フックに導かれて、縦横無尽に移動開始する。
前衛を襲う触手付きのエルドラージをその頭上から叩き割り、後列に忍び寄っていたエルドラージへダガーを投げる。小型のエルドラージたちはショートソードで処理していく。
森の中でも、太く、しなやかな枝がある限り、私は戦い続けられる。
襲いかかってきた一団もだいぶ数を減らしているように見えた。
「走れっ! 先に進むんだ! 今なら数は少ない!」
一団は走り出した。若いものは年寄りと子どもを抱えて。昨日の若者も子どもを抱いている。
私は、鈎ロープを振り、彼らの先へと進む。
大丈夫だ、逃げ切れる。
しかし、その希望は直後に打ち崩された。
森の中に広大な荒地が現れていた。
白化して塵へと崩れて行く大樹、豊かな草たちが生えていたであろう大地は、多面体の集合体と化し、自然のものは一切消え果てていた。
その中心にいたのは、今まで見たことも無いような大型のエルドラージ。
緑の身体に大きな腕、本来なら頭のある部分には謎の多面体が浮かんでいる。
すでに、力の差は想像もできなくなっていた。
「行け! 生き残れ!! 生きることが我らの戦いだ!!」
私は一団を先へ行かせる。
横目にあの若者が見えた。私は鈎ロープを若者に投げて渡した。若者は受け取ると走り去る。
力は紡がれ、そして受け継がれていく。
コーの力の根源は、集まり、そして紡がれることで現れるのだ。
『ジャンプスタート2022』へようこそ!
こんにちは!
『ジャンプスタート2022』独占公式プレビューへようこそ!
誰でも気軽にマジック:ザ・ギャザリングを始めることができる、ジャンプスタート! その2022年最新版が発売されます、楽しみですね!
まず、ジャンプスタートという製品について説明させてください。
ジャンプスタートとは、各パックにテーマに沿った土地を含む計20枚のカードが封入されていて、2つのパックを組み合わせるとそのまま40枚のデッキになり、すぐに対戦を始めることができる! という製品です。
とっても簡単に対戦を始められるので、お友達をマジック:ザ・ギャザリングの世界へ誘いたい! そんなときにとっても魅力的なアイテムです。
さて、今回ドラゴンスターが担当するのは『ジャンプスタート2022』エルドラージ・テーマ!
プレビューカード1枚目は、《世界を壊すもの》です!!
《世界を壊すもの》といえば!
『戦乱のゼンディカー』の中でも名作と言われるエルドラージですね。唱えるだけでクリーチャーとプレインズウォーカー以外のパーマネントを追放し、着地すれば5/7到達と攻めてよし守ってよしのパワーとタフネス、更には土地を生贄に捧げることで墓地から手札に帰ってくるという用意周到さ。
強い! 強すぎるぜ《世界を壊すもの》!
しかもなんと、『ジャンプスタート2022』では目玉であるアニメ版カードのアートとして、「獣道」さんという主に日本国内を舞台に活躍されているアーティストによる描き下ろしイラストが登場!
獣道さんは、これまでにマジック:ザ・ギャザリングのカードは『神河:輝ける世界』にて《祝福刃の鼠》や《無常の神》も手掛けていらっしゃる!!
獣道さんは、そのアーティスト名に恥じぬ、獣イラストの第一人者。
それは上の2枚のカードをよく見ていただければ存分に感じることができるのではないでしょうか。
更に今回は、異形の怪物エルドラージ。
《世界を壊すもの》の迫力を存分に表現されていることが感じていただけると思います!!
ちなみに、獣道さんはデュエル・マスターズのカードイラストも手掛けていらっしゃいます。
私が好きなカードは≪天体かんそ君≫です!!
さらに今回の『ジャンプスタート2022』では、新規カードが追加されます。
それでは紹介いたしましょう、《次元の大地図》!!
さて、この《次元の大地図》、2マナとは思えないほど能力が盛りだくさんですね。
まず、一番下の無色マナを加える能力。
これは2マナアーティファクトとしては妥当なところですね。
しかし、手堅いのはその上の能力。
戦場に出たときにライブラリーの上から4枚を見て、その中から土地をライブラリーの一番上に置く能力。
これは最序盤2ターン目なら次のターンに置く土地を次のドローで手札に加えることが出来ますので、安定して3マナ目、4マナ目を確保できます。
エルドラージはマナを多く消費するので非常にありがたいでしょう。
そして、三枚目は、《残された廃墟》!
《残された廃墟》は今回、新規アートカードとして収録されます。
新しいアートでは、大型のエルドラージが歩いた後、すべての大地が《荒地》となっています。
画面中央に見えるのはウラモグ、もしくはウラモグの血族のような大型エルドラージ。
そして、画面奥にいるのはコジレックかコジレックの血族のような大型エルドラージとなっています。
彼らの足元からは豊かな自然は失われ、《荒地》だけが残されています。
手に入れたらぜひカードイラストをよく見てほしいのですが、足元の荒地、コジレックが作り出した荒地とウラモグが作り出した荒地で描き分けられているのです。
ぜひお友達にドヤ顔で語ってください。
手軽に対戦を始められる『ジャンプスタート2022』、非常に楽しみですね!
それではまた。