枠を散らすということ
はじめに
一般的にデッキを構築するとき、3×13+1や3×12+2×2の構築が好まれています。
いわゆる「美しい構築」というやつですね。
今回はそれとは少し違う、「枠を散らす」というテクニックと、そのメリットデメリットについて解説したいと思います。
採用枚数
採用枚数については、僕のブログで昔詳しく書いたものがありますので良ければ参考にしてください。
バトルスピリッツでは、特殊なカードを除き、同じカードを3枚までしかデッキに入れることができません。
なので、構築によっては3枚積んであるカードが何種類もあると思うのですが、3枚積むカードには2種類あります。
3枚が適正なカード
と
3枚以上積みたいカード
です。
3枚以上積みたい場合は、同じような役割を担うカードを複数種入れることになります。
このため、例えば5枚欲しいときは
3枚と2枚の似たカードを入れることになり、この時に例外的な「2枚積みのカード」が発生します。
4枚欲しいときは3枚と1枚ですね、これも3枚のカードの追加分としてピン挿しが発生するケースです。
3枚以上積みたいカードというのは
●初手に来ても良く
●ゲーム中に最低一回は使いたい
カードになります。
例えば初動カードや、普通のデッキのメインアタッカーですね。
2枚が適正のカードは
●初手にあまり来てほしくない
●複数引くと邪魔になる
●最悪ゲーム中に使えなくていい
というようなものです。
重めのセカンドフィニッシャーや、後出しメタカードなどがあります。
1枚が適正のカードは
●制限カード
●デッキを引き切る構築でのフィニッシュパーツ
●いつ引いても問題ないが引くと強いお守りカード、ただし複数は絶対に引きたくないもの
●トラッシュに落として使い回すカード
というようなものです。
このような特殊な場合を除き、上でも述べたように1枚挿しのカードというのは、3枚積んであるカードの類似効果を持つものであったりします。
これが基本なのですが
回転力の高いデッキの場合、普通なら3枚が適正であっても2枚にして、デッキ回転パーツを増やす方が効率がいい。というようなケースがあります。
ただし、これにはデッキ回転を阻害されたときに引けなくなる可能性がそこそこ高くなってしまうリスクがあります。
ジャムるということ
さて、まず端的に3×13+1や3×12+2×2の構築のメリットを表すなら
「再現性の高さ」
となります。
採用している種類が少ないからこそ、「同じような手札になりやすい」わけで、毎試合同じような展開が可能、ということです。
デッキの持つ機能を限定することで、毎回同じように強い動きができるようになるわけですね。
また、初動(初手に動けるカード)は基本的に13~15枚くらい確保するとよいです。
「ネクサス3種×3枚とゴッドシーカー2種×3枚、合わせて15枚」
などと構築するわけですね。
現環境は契約スピリットという、「初手に必ず持てるカード」が存在するために、初動の枚数は減らしても良い状態になってはいます。
初動が15枚あれば、初手に何もできないということはだいぶ少なくなりますが、40枚中15枚もあるなら、当然複数引くことが多くなります。
また絶対引きたいフィニッシャーだからと言っても、初手に3枚とも引いてしまうとこれも困ります。
このように、欲しいカードではあり、複数引いてもいいけれど、そればかり引いても困る、ということは往々にしてあります。
ネクサス5枚持ってスタート、その後ネクサスとフィニッシャーしか引けない、となれば負け濃厚でしょう。
またメタカードばかり引いてしまい、身動きが取れない、ということもあります。
初手に絶対バーストを張りたいが、入れすぎてバーストばかり引いても困る、というのもあります。
これがいわゆる「ジャムる」という状態で、銃の弾が詰まる現象にちなんで付けられた名称です。
さて、このような現象は
「引けないと困るけど、引きすぎても困る」
という理由で起こります。
では解決方法は?
「引きすぎても困らない」ようにすればいいのですね。
それを可能にするのが
二つ以上の役割を持ったカード
です。
例えば《選ばれし探索者アレックス》
バーストとして引きすぎても、余りを場に出してドローやコアブーストに使えます。
例を挙げればキリがありませんが、このように「○○として引きすぎたとしても、余りは△△として使える」カードの採用枚数を増やすことで、ジャム系の事故を減らしていくことができます。
「対応力」という強さ
デッキに入れられる枚数は限られているため、対応できる範囲も自ずと限られてきます。
初動15枚
デッキ回転用6枚
防御札5枚
アタッカー6枚
バースト6枚
などと組むと、バランスは素晴らしいのですが、余り枠が2枚しかなく、特定のメタ(ネクサス対策、スピリット対策、創界神対応、耐性持ち対応など)を入れようとするととても枠が足りません。
この課題を解決するのも、前項と同じ
二つ以上の役割を持ったカード
になります。
例えば《レーザーボレー》。
ネクサス、スピリット対策に加え、フィニッシュ時の押し込みカードにもなる万能カード。
このようなカードは構築上非常に便利であり、優秀なパーツになります。
実際、昨今のカードは複数効果持ちが多く、初動でありながら途中で引いても役に立つものであったりと、対応の幅が広がっています。
つまり役割は違いますが、構築上の初動カードとしては
途中で引いた時もカウントアップや相手スピリットの破壊にも使える《エデラ砦》の方が汎用性に優れている、ということになります。
これらのように「二つ以上の役割を持つカード」を駆使して、事故を減らしつつ対応できる幅を可能な限り広げていくことが、「対応力の高い強いデッキ」を組むコツになります。
再現性と柔軟性
まとめますと、
採用種類を絞ることによる再現性
と
採用種類を増やすことによる柔軟性(対応力)
これらは相反するように見えますが、前述の「二つ以上の役割を持つカード」によってある程度共存することができます。
しかしながら、柔軟性を上げるためにただ種類を増やすようなことはよくないです。
サーチのないバトルスピリッツというゲームではシルバーバレット戦略というのは取りづらく、「あれさえ引ければ勝てたのに!」と言いながら引けずに負けることになります。
さてここで、さらに柔軟性を上げたい時にどうするか。
ちょうど今の環境のように、多くのデッキタイプがひしめき合っている状態では、普通に組むとどうしても「○○には不利」という状況を甘受せねばなりません。
非公認スイスドローのように、一回までなら負けても予選が抜けられる、というならまだしも、全勝が絶対条件と言われるとそれでは不安です。
そのようなときに使うもの、それが「散らす」というテクニックです。
非常~~に前置きが長くなりましたが、これが「散らす」というテクニックの求められる背景になります。
ではそれはどういうものなのでしょうか。
端的に言えば、「二つ以上の役割を持つカードを、違う組み合わせで数を合わせる」というものです。
例えば
●ネクサス対策 3枚
●創界神対策 3枚
が欲しいとき
《レーザーボレー》3枚
《ゴッドブレイク》3枚
にするところを
《レーザーボレー》2枚
《ゴッドブレイク》2枚
《ワイズドラゴン》1枚
にすることで枠を一つ空け、そこに新たなメタカードを入れて対応できる対象を増やす、などということです。
《ワイズドラゴン》はさらにアタッカーの枠も兼ね、特に《赤の世界》を転醒させる役割も与えられ、柔軟性が上がっています。
このように様々な組み合わせで多様化させ、「特定の目的のカードそのものの数」は減らさず、使える枚数を増やします。
またこの手法は、同じカードを引いてしまい、役割がない状況を減らすことができます。
サンプルレシピ
このような構築は、ベースとなるデッキが回転力の高いものであるとよりパワーを発揮します。
一例として、僕が権利戦のために組んだ【緋炎】をご紹介します。
デッキリスト
このレシピの解説をするには、元のカタチを見るのがわかりやすいです。
元となったデッキリスト
だいぶ種類が少ないですね。
このカタチはフィニッシャーや細部こそ入れ替えながらも、僕がずっと愛用してきたものです。
圧倒的な耐性と攻撃力を持ち、非常に人気の高いスピリットのリバイバルであることから必ずぶつかる相手だと考えました。
《相棒竜グロウ》はもともと白の耐性を貫通して破壊できるのですが、相手のBPが高すぎて対応できないことが予想されました。
そこで改造です。
さしあたって採用することにしたのはこちら。
また、【ストライク・ジークヴルム】だけでなく【紫エヴァ】もいるこの環境、《絶甲氷盾》だけでは耐えられない可能性が高い。
しかしこれらのデッキには《白晶防壁》を打ち消すギミックが取られており、受けにならない可能性があります。
そこでこの《シェパードール》です。
《絶甲氷盾》2枚と入れ替えたため、アタックステップ終了カードが1枚しかなく、ここに単純な防御札を入れたのでは防御過多になってしまうので、《アレックス》を2枚採用しました。
素出ししてドローやコアブーストができ、軽減も取れるので複数の役割を持てており、またバースト枚数の確保にも一役買っているのでどんな場面でも活躍してくれるでしょう。
このように、元の機能をできるだけ保持したまま、対応できることを増やす、これが「散らす」テクニックです。
高い対応力を誇りますが、「今、何が必要か」をきっちり見極めて回答を引きに行くプレイングが求められます。
一方、デメリットもあります。
《絶甲氷盾》《シャーマニックドロー》《覇王爆炎撃》を最大枚数積むことで
【血晶】【金雲】を「厚く見る」
という構築だったのですが、これらが減っているため、「超有利」が「有利」くらいに下がっています。
不利になっているわけではありませんが、負ける可能性も出てきます。
このように、同じカードを多く積むことで特定の相手を「厚く見る」ということがしにくくなるのが、「散らす」テクニックのデメリットです。
もちろん散らし方を特定の相手に寄せて「厚く見る」ことはできますが、例えば【血晶】相手にゼロカウンターを複数握りしめて完封するなどということはやりにくくなります。
ちなみにもうひとつ、「散らす」テクニックには目的というかメリットがあります。
それが、「読まれにくさ」です。
こちらがより一般的な目的とも言えます。
例えば一種類のバーストしか積んでいなければ、相手も対応しやすくなります。
そこで例えば3種類のバーストを採用することで、相手が考えなければならないことを増やしたりする。
これも立派に「散らす」テクニックの使い方だと言えます。
終わりに
高いドロー力で、「薄めた」カードたちを適宜引いて戦う、という構築は誰しもやったことがあると思います。
そこからもう一歩踏み込んで、「薄める」度合を最小限になるように多用途なカードをチョイスすることで
手札の再現性ではなく
動きの再現性
を損なわないように組む、という考え方を取り入れていただければ、構築がもっと楽しくなるかもしれません。
今回はデッキ構築についてのコラムということで、もしかしたら難解だったかもしれませんが、少しでも皆さんの構築に役に立てれば、と思います。
では今回はこのあたりで。
それではいつもの
バトスピた━━━のし━━━(゚∀゚)━━━!!
今日はここまで
参考になれば~(*´∀`)