■はじめに
こんにちは、もしくは初めまして。カニ丸です。
ハロウィンも終わってしまってはや1か月。
すっかり世間はクリスマスの雰囲気になって参りましたね。
筆者・カニ丸はハロウィンの方が好きなので少し寂しい思いです。
というのも、ハロウィンと言えば「闇の住民たち」とも呼ぶべき悪魔や魔女、オバケといった多くの物語において敵側に立つ存在が堂々と街道を練り歩けるイベントだからです。
最近だと、ディズーニーランドの“ヴィランズ”(敵のキャラクター達の園内オリジナル配下キャラクター)などが毎年のように話題になっています。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの“ハロウィン・ホラー・ナイト”も毎年盛り上がっていますよね。
邪悪とされる存在が大手を振って舞台に立ち、人々が歓声を上げる。
それが昨今のハロウィンですね。
ちなみに合わせて、コスプレの大会なども開催されてるそう。
「遊☆戯☆王」がお好きな皆様でしたら、この「邪悪を愛する」気持ちをわかって頂けるのではないでしょうか。
《闇遊戯》や《闇バクラ》、それから《闇マリク》のようなキャラクター達は、闇の存在でありながら多くの方に愛され、それはまさにハロウィンのようですね。
というわけで、今回はその中のひとり、《闇バクラ》についてのコラムです。
「遊☆戯☆王」の原作漫画、およびそれを元にしたTVアニメシリーズに登場してきた重要キャラクター、それが《闇バクラ》です。
皆さんお馴染みの「風間俊介(俳優/ジャニーズ)」さんが演じる主人公《武藤遊戯》が活躍してきた「遊☆戯☆王
デュエルモンスターズ」だけでなく、最初に東映がアニメ化をしていた「遊☆戯☆王(東映版)」(以下、東映版)にもすでに登場しており、敵キャラとしては古参というべきポジションの人物になります。
《闇バクラ》はまだ「遊☆戯☆王」が今のようにカードゲーム作品として確立する以前から登場し、《遊戯》たちにとって因縁の相手になりました。
「千年パズル」を含めた7つの「千年アイテム」のうちのひとつ、「千年リング」を所有していて、そこに宿る闇の人格が彼となるのです。
《遊戯》と《闇遊戯》のように「共存・共生」することはせず、「支配」をもって宿主である「獏良 了」(ばくら りょう)の体を操っています。
作中ではシャーディーに次ぐ勢いで意味深なセリフも多く、彼こそがかつてアテムが治めていた古代エジプトを滅ぼしかけた存在《大邪神ゾーク・ネクロファデス》であり、アテムを除けばシナリオ上のラスボスに該当していました。
▼獏良とバクラ
作中、「獏良」は表の人格こと宿主「獏良了」を、「バクラ」を闇の人格である《闇バクラ》を指して表記されていました。
頭に「闇」とつけるのは分かり易さを追求した呼称で、キャラクター同士の掛け合いではその名で呼ばれることはありません。
(「闇の人格の獏良」などといった表記は存在する)
ちなみに「遊戯王デュエルリンクス」などでは《闇バクラ》といった表記になっています。
今回は分かり易さを重視するため、そちらの表記に合わせる形をとらせて頂きました。
《闇バクラ》は宿主「獏良」の支配こそ緩めることはありませんが、それでも「獏良」に対しとり憑いている“宿主”であるという意識はあるらしく、傷つけることはあってもその命が危険にさらされる場合は身代わりを買って出ることもありました。
もしかすると、“宿主”がいないと肉体を維持できなかったのかもしれませんね。
魂が肉体から引きはがされても活動していた《遊戯》たちとは、立場や構造が違うと言う事なのでしょうか。
「バクラ」をもしカテゴリーにする場合、もう1人、忘れてはならない存在がいます。
それが「盗賊王」《バクラ》です。
物語の終盤「王の記憶編」にて登場する、生前の《闇バクラ》と呼ぶに相応しい人物で、《闇遊戯》ことアテムとその仲間達を亡き者にせんと強襲してきます。
「盗賊王」というのは自称しているだけのようなので、彼が「王」と呼ばれるほどの悪事を働いてきたのかは不明となっています。
ただし、採掘が困難とされる先代王の墓を暴き、死体を引きずり回しても逃げてこられるだけの実力はあったようです。
しかし彼は正確には《闇バクラ》そのものとは言い切れません。
先王によって滅ぼされ、皆殺しにされたクル・エルナ村の唯一の生き残りであり、ゆえに王家に絶大な憎悪を抱く人物ですが、「王の記憶編」における彼は《闇バクラ》が憑依した状態でもあるため、作中の動向が本来の彼であったかどうかについては多くの方の考察でも意見が分かれています。
アニメ版ではこの盗賊王《バクラ》もまた《闇バクラ》こと《ゾーク》の被害者であったかのような描写がありますが、現在の《闇バクラ》と盗賊王が完全に別人かと言う明確な証拠も出ていません。
原作者である高橋和希先生がご逝去された今となっては、もはや確認することもできなくなりました。
■宿主・獏良 了(ばくら りょう)
さて、本来の体の持ち主である《獏良》はなぜこのような状態になってしまったのでしょうか。
彼の父は考古学者であり、《遊戯》たちの住む童実野町(どみのちょう)の現・美術館オーナーです。
《獏良》本人いわく、「千年リング」はそんな父がエジプトで買ったお土産であったとのこと。
現在はとある理由によって転校を繰り返し、ひとり暮らしをしながら、学校に通う日々です。
自宅はマンションの一室ですがかなり広く、自作の奥行1メートル以上はあるであろう大きなボードゲームを置いてそれを中心に数人が周りを囲っても余裕があるほど。
ちょっとした小会議室並みの広さの部屋があるので、暮らしは安定していそうですね。
掲載当時の90年代、高校生ながらノートパソコンを私物で持っていたり、特にアルバイトもしていないような雰囲気ながら金銭関係に問題はなさそうという点から、かなり裕福な家庭環境だったことが窺えます。
同級生の《城之内》や《杏子》のお財布事情と比較しても、本人の趣味である「モンスターワールド」(ミニュチュアフィギュアなどを使用したTRPG)の充実っぷりを考えても間違いなさそうです。
尚、美術館オーナーはシャーディーによって前任者が殺害された(原作2巻)ため、彼の父が務めることになったのですが、もしかしたらひとり暮らしの息子を心配して着任してくれたのかもしれません。
前任者が謎の死を遂げた美術館に、そうそう着任したくはないでしょうしね。
彼が何度かの転校や引っ越しをすることになった理由は、「彼とゲームをした人間は昏睡状態になる」という事件が続いたためです。
これは本人の意識を彼の持つ「千年リング」に宿る《闇バクラ》が奪い、暗躍していたからでした。
《闇バクラ》は宿主の友人知人を巻き込んで、魂を賭けて戦う「闇のゲーム」を幾度もしていたということです。
見た目は原作公認の美形で、転校初日から女子生徒から取り囲まれ、ファンクラブが結成されるほど。
本人が意識してる様子はないため、そういった環境に少し困っている描写が多いのが特徴です。
同じ理由で、ファッションについてもそこまで興味がないようで、よく着ているボーダーのシャツがトレードマークのようにもなっています。
家族構成は前述の通り考古学者の父と、すでに故人となっている妹「天音」だけが明らかになっています。
母親については現在不明。
性格はその経歴にもかかわらず比較的温厚で明るくマイペース、「気になること」に対する探究心は父親譲りのようで、「決闘者の王国編(ペガサス編)」では「千年リング」の真相を知るべく《遊戯》らと共にペガサスが待つ王国へと足を踏み入れます。
※アニメ版では《闇バクラ》の策略により、別の経路で登場。
「千年リング」や「闇のゲーム」に巻き込まれて、かなり記憶にない行動をしているはずなのですが、本人が鈍感なのか、神経が太いのか、正気に戻って事実に直面してもあまり気にしている素振りはありません。
幼い頃から研究の為に父親が旅をしているところにこっそりついて行くなど、行動力もあるようです。
ところで、《バクラ》と言えば《ウィジャ盤》は外せませんよね。
様々な戦法がある遊戯王の中でも尖った戦術としてもなかなか有名なのではないでしょうか。
このカードと「死のメッセージ」カード4種類が自分フィールドに揃った時、自分はデュエルに勝利する。
①:相手エンドフェイズにこの効果を発動する。
手札・デッキから、「死のメッセージ」カード1枚を「E」「A」「T」「H」の順番で自分の魔法&罠カードゾーンに出す。
②:自分フィールドの「ウィジャ盤」または「死のメッセージ」カードがフィールドから離れた時に自分フィールドの「ウィジャ盤」及び「死のメッセージ」カードは全て墓地へ送られる。
ご覧の通り《死のメッセージ》にはそれぞれ「E」「A」「T」「H」と記されています。
《ウィジャ盤》自体にも「D」というイラストが描かれており、4枚揃えることで、フィールド上に「DEATH」(死)が形成されて勝利するのです。
▼実物
実際の《ウィジャ盤》はこのような形をしています。
(画像はサンプルです)
「遊☆戯☆王」作中で見た姿とそれほど差はありません。
《ウィジャ盤》もしくは、「ウィジャボード」と呼ばれることもあります。
交霊術、あるいは降霊術で使用されるもので、日本の「コックリさん」によく似ています。
また、多数の人間が操作するシステムを利用し、ちょっとした娯楽用アイテムとしても使われるそう。
娯楽としての使い方がある以上、日本の「コックリさん」よりも呪術的敷居は低いのでしょう。
霊を呼び出し、時に語りかけ、文字版上に置いた穴のあいたプレートに参加者は手を置き、呼びかけたモノがそれを動かして単語や文章を伝えてもらうというものです。
プレートは「コックリさん」では10円玉にあたるものですね。
霊的な存在がきていないことを前提にした場合は、参加者の無意識な動き、あるいは意図的な動きによって動き、もしくは筋肉の微妙な疲労で起こるかすかな動きにつられてスライドし、参加者の潜在意識や不安、イタズラを軸に言葉になるとかなんとか。
科学的な理由としてはそのように説明されています。
筆者・カニ丸はうっかり本物がきたら対処もできないし、一生後悔したり不安になることは嫌なのでやったことはありません。
さわらぬ神に祟り無し。
聞きたいことがあるなら、まず生きた人間に聞くところからスタートする方が良いと思っています。
■劇場版にて明かされる過去
劇場版にて登場した藍神ことディーヴァは獏良に対し、強い復讐心を持っていました。
彼の命の恩人であり、育ての親でもあったシャーディー・シンを目の前で殺害されたからです。
しかしながらそれは誤解で、「千年リング」に宿っていた《闇バクラ》こそが真の犯人でした。
獏良が幼い頃、彼の父はエジプトのとある場所に足を踏み入れてしまいます。
それは七つの千年アイテムの一部が保管されていた隠れ家のような場所で、シャーディーはそこで藍神たちを育てていました。
シャーディーは獏良の父に千年アイテムの所持者になれるかの試練を課します。
「千年リング」は彼を拒み、弾き飛ばしました。
こっそり父親のあとをつけていた幼い獏良は弾け飛んできた「千年リング」を拾ってしまいます。
そしてそのまま、獏良は適合してしまうのです。
数千年ぶりに適合した肉体を得た《闇バクラ》の力は凄まじく、シャーディーをあっという間に吹き飛ばしその場を去ります。
この戦いでシャーディーは絶命し、彼は墓守の亡霊となり、「アヌビス(死神)の使徒」として現世をさまようこととなるのです。
ただ、シャーディーについては、アテムの父・アクナムカノン王が遺した守護霊ハサンであった展開や、同じくそのハサンに変身するボバサの存在、マリクの過去に登場した時点で亡霊のようであったことなどを踏まえるといささか矛盾が生じます。
なので、何かしらの理由や裏設定があったのか、はたまた、週刊連載と言う原作上の都合だったのか、今となっても明らかになっていません。
劇場版で明確になったのは、作中で《闇バクラ》が独白していた「ヤツ(シャーディー)はすでにこの俺に」という言葉の真相です。
こうした経緯から、藍神は《闇バクラ》と獏良両方を同一視し、恨みを募らせていました。
《闇バクラ》の行いを問い詰め復讐を果たそうとしていた藍神は獏良が事実を知った上で真摯に謝罪する姿にその怒りの矛先を失い戸惑うのですが・・・
「獏良、悪くないやん」と思われる方が多いでしょうけれど、あのシーンは普段柔らかい物腰の彼がしっかりと芯を見せてくれる名シーンで、思わず揺らぐ藍神も見どころですので、さらりと観てしまった方はこれを機会にまた見返してみてくださいませ。
■おわりに
長い期間連載していた作品ともなると、様々なシナリオ展開の変更や発展、伏線などもあって複雑化し、一言で表すことは難しくなっていきます。
「遊☆戯☆王」はアニメ化したり、外伝的なシリーズ「遊☆戯☆王R」があったり、アニメ版の続編シリーズの放送、それから現在では「遊戯王デュエルリンクス」に至るまで様々な人々と関わり、続いてきました。
そんな中で《闇バクラ》というひとつの核心に迫るキャラクターが暗躍していたわけですが、どれだけ読み込んでもまだ見えてこない部分が未だに存在しています。
今後その部分が明るみになるのかは分かりませんが、彼ののこした一瞬一瞬がこの先の材料ともなっていくのでしょう。
資料の正確さを再確認するために、記事を書きながら何度も原作を読み返すのですが
「やっぱりこの漫画、面白いな!」
となりながら、当時は気付けなかったことへの発見なんかもあったりしますので、もしこの記事をキッカケに読み返したり、《闇バクラ》の使っていたカードが欲しくなったりしてくれたら幸いです。
ちなみに、《闇バクラ》のエースカードでもある《ダーク・ネクロフィア》はとてもおどろおどろしいイラストですが、非常に気に入っている1枚です。