■はじめに
エクシーズ召喚するために必要な素材が「レベル8モンスター×2」と用意しやすく、様々なデッキで採用され、攻撃力の高さ、効果の優秀さからも、「遊戯王ZEXALⅡ」を知らない方でも使っていた人は多いのではないでしょうか。
「遊戯王」におけるドラゴン族の人気の高さもあいまって、それぞれに愛称をつけて呼んでいるユーザーの方を見かけることもしばしばあるほどです。
《銀河眼》の新規ということは、《No.107 銀河眼の時空竜》の使い手《ミザエル》のデッキ強化にもつながるので、楽しみが増える一方ですね。
また、2022年11月6日(日)まで公開中の134話、135話には、《銀河眼の光子竜》の進化系のひとつとも名高い《No.62 銀河眼の光子竜皇》(プライム・フォトン・ドラゴン)が初登場する回でもあります。
《天城カイト》は「遊☆戯☆王ZEXAL」「遊☆戯☆王ZEXALⅡ」、それからその次回作である「遊☆戯☆王ARC-Ⅴ」にて登場したドラゴン族使いの青年です。
公式情報によりますと、「遊☆戯☆王ZEXAL」の時点では18歳(「遊☆戯☆王ZEXAL」53話参照)。
歳の離れた弟・ハルトと、父・Dr.フェイカーがおり、母親については不明となっています。
弟・ハルトが病弱なこともあって、過保護なほどに弟を大事にしており、通常は年齢以上に冷静で落ち着いた性格なのですが、こと弟が関係するとなるとあらゆる感情をむき出しにして冷静さを欠く瞬間があります。
弟の身の危険を知るとその名を叫びながら全力で弟の元へ駆けつけようとする姿は凄まじく、そこのシーンだけ見たことがある・知っているという方もいるでしょう。
弟の病を治すには《No.》が必要だと聞かされ、《No.》回収のために使用する特殊な力の負荷によって身を削りながら、《No.》を集める「ナンバーズ・ハンター」です。
のちに、これをモチーフにしたモンスター《ナンバーズハンター》が遊戯王OCGには登場します。
どちらも作中で、彼が特殊な力を発揮する際に口にしていた名称が元になっています。
能力を使う際には音声認識による起動システムが組み込まれていたのかもしれません。
なお、「PHOTON HYPERNOVA」には新たに《フォトン・リタデイション》が収録されました。
彼が「ナンバーズ・ハンター」をする際、《オービタル7》によって時間の流れを1万分の1まで遅らせてから仕事をする姿がモデルになっているのではないかと言われており、「リタデイション(Retardation)」(遅延、阻止、妨害などの意味)という名称が選ばれた可能性があります。
「リタデイション(Retardation)」には「位相差」という意味もあり、こちらはかなり専門的な内容になるので簡単に説明するのが難しいのですが、《光子》と名のついたカード、ならびに《光波》と名のついたカードを扱う上では繋がりを感じる単語となっています。
では、いつから《銀河眼》を使い始めていたのか。
明らかになっていないものの、12歳の頃に弟の子守を目的にロボット《オービタル7》を制作するほどの天才であったという回想があり
その前後くらいの時期とおぼしき回想シーンが多いことから、5、6年程度の付き合いがある可能性が高いのではないでしょうか。
家族を救うために《銀河眼》を手にしたというようなセリフもあることから、時期的には「ナンバーズ・ハンター」をする決意をしたタイミングでDr.フェイカーから渡されたもので間違いないでしょう。
▼弟・ハルト
元々病弱ではありながら明るい性格をしており、人懐っこい一面もあったようです。
作中では初登場時からとある事情により狂気に落ちた状態で登場し、人々の悲鳴を求め、「アストラル世界」を攻撃する道具として扱われていました。
父・Dr.フェイカーの野望を打ち破った後、元の性格に戻ったようで、主人公・《九十九遊馬》たちとも良好な関係を築いています。
前述の一件を解決した折に、病気も完治したのか、デュエルをするシーンこそないものの平和に過ごす場面が描かれています。
もしかしたら、その内遊戯王OCGのカードとしてモチーフになるカードやデッキが登場するかもしれませんね。
▼Dr.フェイカー
天才的な研究者で、作中登場する主要都市「ハートランドシティ」を作ったとされています。
金髪の初老の男性で、性格はかなりの頑固者だったもよう。
長男・カイトと髪色は一致するのに、次男のハルトは金髪でないことから、パートナーとして迎えた女性が水色の髪色だったのかもしれませんね。
その天才肌ゆえに友人は少なかったのか、はたまた人見知りだったのか、友好関係はあまりなかったようです。
(しかし奥さんはいる。どういう恋愛をしたのか気になって仕方がない。)
26話で登場する《トロン》こと「バイロン・アークライト」とは旧知の仲でしたが、彼を生贄にすることで病弱な息子・ハルトを救う契約を《バリアン》(ベクター)と結んでしまいます。
その契約によりハルトは性格が変わってしまうと共に「アストラル世界」を攻撃するための存在となってしまうのですが、九十九遊馬たちによってDr.フェイカーとそれに憑りついた《バリアン》が倒され、状況が好転、改心することとなるのです。
やり方こそ間違っていますが、息子たちのことは大切に思っていたようです。
ちなみに、漫画版では途中で病によって絶命してしまっていることが明らかになっているのですが、アニメ版同様息子の病のために奮闘していたとのこと。
数ある《No.》の90番台の中でも有名な《No. 92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon》(ぎがいしんりゅうハートアースドラゴン)や、それを特殊召喚できる《No.53 偽骸神 Heart-eartH》(ぎがいしんハートアース)を使ったのがこちらのDr.フェイカーです。
先述の通り、《天城カイト》が12歳の頃に作った元・自立式子守ロボット。
「7」と名がついてるのは他にも「オービタル5」や「オービタル6」といった兄弟機があるからとのこと。
人工知能が搭載されているらしく、流暢に話し、他のロボットに恋心を抱く場面もあります。
様々な改造がほどこされ、時間の流れを遅らせる能力だけでなく、飛行形態やバイク形態への変形、ついでに戦闘形態、通信はもちろん様々なサポートまで行えるスペシャルなメカとなっています。
一人称は「オイラ」、口癖は「カシコマリ!」というなんとも濃いキャラクターですが、人間に対してではなく、制作者の《天城カイト》と、弟のハルトにのみ敬意を払っている様子で、《九十九遊馬》などに対してはなかなか横柄な態度をとることもしばしばありました。
使用デッキは《SDロボ》。
「遊☆戯☆王ARC-Ⅴ」が複数の次元を移動する「次元戦争」をえがいた物語であったこともあり、「遊☆戯☆王ZEXAL」に登場した「ハートランドシティ」がモチーフとなった世界が登場するシーズンがありました。
《天城カイト》は言うなれば「遊☆戯☆王ZEXAL」からのスター・システムのような枠として物語に関わってくることとなります。
あくまで2作品は別の作品であったこともあり、完全に同一人物という描写は避けられ、使用するデッキも《銀河眼》のテーマではあるのですが、《光子》(フォトン)ではなく《光波》と書いて《サイファー》という名前のつくカードを多く使用しました。
人物像は、戦争によって家族が行方不明になっていること、侵略者に対するレジスタンスに所属しているなどもあり、登場当初は「遊☆戯☆王ZEXAL」に登場していた時よりもいささか血気盛んで、融通のきかない立場で登場していました。
主人公・《榊遊矢》の働きかけで冷静さを取り戻し、仲間入りすることになるのですが、家族構成については明かされることがなかったので、「遊☆戯☆王ZEXAL」同様父と弟だけだったのか、母親がいたのかも不明となっています。
友人関係として、《黒咲隼》《ユート》と関わりがある設定になっていました。
《天城カイト》のデュエルは、その立場もあってかなりシナリオに関わった重要な回が多く、名シーンも数多く存在します。
たとえば、今回「遊戯王OCGチャンネル」が期間限定で公開した《銀河眼》使いである《ミザエル》との決戦デュエル回の「遊☆戯☆王ZEXALⅡ」134話、135話も見どころのひとつですね。
というのも、「トロン一家」と呼ばれるチームはその名の通り血の繋がった家族なのですが、家長である《トロン》が先述の通り彼の父であるDr.フェイカーによって陥れられてしまったことにより、生活が一転、Dr.フェイカーとその家族に対しての復讐心を持って登場します。
つまり、《天城カイト》からすればまったく身に覚えのない憎しみをぶつけられるわけです。
そこで登場するのが、「トロン一家」長男《V》こと「クリストファー・アークライト」(クリス)。
彼は自分の父親の仕事を手伝っていたこともあり、Dr.フェイカー経由で《天城カイト》と親しい仲となります。
関係上は「師弟」という扱いながら、「クリス」には離ればなれになった2人の弟がいたこともあり、まるで本当の兄弟のような厚い信頼関係を築いていきました。
しかし、Dr.フェイカーによって自分の父が陥れられたことを知った彼は、その息子であった《天城カイト》と決別。
「トロン一家」として公の場に出るまで、行方不明となります。
筆者・カニ丸が注目しているのは、特にこの《V》とのデュエルで、これまで謎だった《天城カイト》の家族以外の関係や過去が一部明らかになり、強者として現れた《V》との意志のぶつかり合いによって内面的な人物像をよりクリアに見せてきたドラマティックさが面白いと感じているからです。
《V》の使う《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》はその名の通り、天体がごとき巨大なモンスターであったことも印象深く、結果としては負けてしまいますが、崩れるさまの寂しさや、切なさが何とも言えません。
《天城カイト》のデュエル回だと、あとは《九十九遊馬》とのデュエルで、72話・73話のデュエルがお気に入りです。
ご存じの方もいるかと思いますが、この2人は何度かデュエルしたことがある中で、これが作中最後のデュエルとなっています。
「全146話あるのに、ライバルポジションのキャラクターとのデュエルがシナリオの半分くらいで終わってしまうのか!?」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
と言うのも、《天城カイト》がデュエルをしてきたのは、ゲームを楽しむためではなく、家族や何かしらを守るためであったからです。
弟が救われ、父親が改心したことによって、戦う意味を失った彼は「デュエリスト」ですらなくなろうとしていた時、《九十九遊馬》によってゲームとして真剣に楽しむ“本当のデュエル”を教えてもらうこととなりました。
気になる方はぜひ、配信サイトやレンタルショップなどを利用して見てみてください。
楽しむことよりも、他の何かの目的のためにデュエルをしてきた《天城カイト》は、こうした事情もあって、作中で《九十九遊馬》とデュエルする必要がなくなってしまったというのが、このデュエルが最後になってしまった一番の理由かと思います。
この「PRIMAL ORIGIN」こそ「遊☆戯☆王ZEXALⅡ」放送時期の最後に発売された通常のパックで、これ以降は「遊☆戯☆王ARC-Ⅴ」の商品に切り替わっていったのです。
「遊☆戯☆王ZEXAL」シリーズにおいて、思い出深いパック、モンスターが今回ピックアップされたことはユーザーにとっても印象深いことだと思います。
使用者である《天城カイト》が使っていた《銀河眼の光子竜》は兄弟の絆をキッカケに「カオスエクシーズチェンジ」と作中で呼ばれる現象によって《超銀河眼の光子龍》へと進化を遂げるのですが
余談ですが、後継作のひとつである「遊☆戯☆王SEVENS」には「極超新星」関連ワードとして挙がる「ガンマ線バースト」という言葉を召喚口上に持っている《連撃竜ドラギアス》が登場しています。
▼カオスとは
作中で詳細が言及されることは少ないながら、ひとつのモンスターがより強力な進化を遂げるにあたり、「カオスエクシーズチェンジ」という現象が度々起きます。
これはモンスターや使用者が「カオス」の力を発揮した結果であり、この力に目覚めたカードは頭に「C(カオス)」という名称が増える仕組みです。
そのため、「カオス化」と呼ばれることもあります。
「カオス(Chaos)」というと、直訳して「混沌」という意味合いになり、あまり良い印象はないかもしれません。
「遊☆戯☆王ZEXAL」シリーズ内では「進化」の力ではありますが、同時に強い欲求や渇望、熱意などの強い思いによって引き起こされるあらゆる感情とそれによって引き上げられる力そのものを指しているようです。
なので、善なるものもあれば、悪となるものも登場します。
推測の域は出ませんが、この「カオス」という名称そのものが、「カオス」を嫌悪していた「アストラル世界」が名付けた可能性が高く、高次の存在として在り続ける「アストラル世界」にとって、争いの火種にもなりかねない「カオス」は受け入れがたいものだったのではないでしょうか。
この世界観の根底にある多次元宇宙論こと、マルチバースについてはまたどこかでコラムにできたらと考えていますので、今回はさらっと流してお読み頂ければと思います。
《ミザエル》ら「バリアン」が住む「バリアン世界」は元々「アストラル世界」に転生するほどの高次の魂が、その内包した「カオス」の力が強すぎたために追放され行きついた世界だとされています。
「バリアン」たちが易々とモンスターを進化させる《RUM》(ランクアップマジック)を使いこなしていたのはこういう理由からなのでしょう。
「アストラル世界」は否定的ではあるものの、作中では進化・成長そのものの象徴でポジティブなものとして登場することが多く、そのため、《九十九遊馬》と《アストラル》も進んでこの力を発揮していきます。
大半の「カオス化」を遂げたモンスターは禍々しい姿になるので、完全に善なるものとしては難しいところではあるのですが…
したがって、今回のように既存のカードの進化系として「カオス」と名のつくモンスターは今後も登場していくのではないでしょうか。
■おわりに
実は《銀河眼》のデッキを組んでいないんですよね。
ここまで語っておいて。
《ミザエル》もめちゃくちゃ好きなために、デッキがどっちつかずになって組めないでいたのですが、これを機に《天城カイト》型で一度組み直してみようかと考えているところです。