防御を踏みつぶして攻め込むべし
決戦に備えて
3年ぶりに開催された超大型大会、デュエル・マスターズ グランプリ2022は、数々のドラマを残して閉幕した。
私も参加者の一人だった訳だが、参加するからには勝てるデッキを作り上げようと、試行錯誤を繰り返したものである。
しかし、私の中に息づくビルダーの性というのは御し難いもので、ただ勝てるデッキを使うだけでは満足できないのである。
やるからには、何か新しい要素を含ませたデッキを使わなければ、ただ勝つだけでは意味を感じられない性格なのだ。
そういう訳で何かデッキを考えた訳だが、グランプリという大人数が参加する大型イベントにおいては、勝ちやすい構築には共通する傾向があると思っている。
その傾向とは
①早い段階で自分の動きを押し付けるデッキであること
②あらゆる対面に対して有効なコントロールであること
③相手の意表を突いてゲームを決めるデッキであること
これらの要素である。
全てを満たす必要はなく、最低一つは満たしておいた方が良い、という感じだ。
今までに優勝してきたデッキを振り返ってみると
①自分の動きを押し付ける
【闇火ドギラゴン剣】、【モルトNEXT】
②あらゆる対面に対して有効なコントロールである
【闇水ハンデス】、【5cコントロール】
③相手の意表を突いてゲームを決める
【カリヤドネループ】、【光火ミッツァイル】
と、これらの条件に当てはまるデッキは多い。
また、ループデッキは早期ではないものの、常に自分の動きへの対応を相手に要求し続けるという”押し付け”の側面から、上位に食い込みやすいと言えるだろう。
逆に、相手の動きに合わせなければならないコントロールは、このような大型大会で勝ちあがるのは困難なことが多い。
先に開催されたグランプリ2022のような大型大会では、普段から積極的に大会に参加するユーザーだけでなく、あらゆるユーザーが出場者となる。
そのため、ノーマークのデッキと当たる可能性もそこそこ高く、時に全く対策が出来ていない対面に当たって負ける事が往々にして発生するのだ。
(このようなデッキは中盤以降で下位卓に集中する傾向にあるため、上位勢がこぞってByeを欲しがる理由はここにある)
そのうえ、③のような意表を突くデッキも出現する場でもあるため、現環境における【アナカラージャオウガ】や【アナカラーハンデス】のような、あらゆる対面に対して有効な妨害手段を擁するデッキでなければ、勝ち星を重ねる事が難しいのだ。
さて、これらの要素のうちどれを満たすかと言えば、個人的には①の要素、自分の動きを押し付けるデッキを選ぶことが一番簡単だと考えている。
大抵の場合、環境には最低でも一つは、自分の動きを相手に押し付けるデッキというものが存在している。
現環境において、その最たるものが【火単速攻】や【火自然アポロヌス】といった、超速攻型のデッキである。
この手のデッキは対戦相手に対して、(止められなければそのまま押し切られてしまうため)序盤からこちら側の動きを止めるような行動を強制していく、まさに”早期の押し付け”を体現したようなデッキだ。
そのような基盤があるのであれば、それを利用して、新しい可能性を内包させたデッキを作り上げる事を目指すという手があるだろう。
そんな中で見出したカードが、こちらだ。
タマシード/クリーチャーのサイクルの1枚、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》だ。
今の【火単速攻】が3ターン目にゲームを終わらせられるデッキなのに対し、このカードを絡めるとフィニッシュターンは4ターン目になってしまう。
そういう面で見ると、一見強さに疑問が残るが、このカードの利点は
・出た時にメタクリーチャーを除去できる
・出しておけば、小型の後続が全てフィニッシャーになる
・クリーチャー化しない限り、対処されにくい
という、フィニッシュを1ターン遅らせるに十分値するスペックを持っている。
また、自軍全てにスピードアタッカーを与えるという点から、あらかじめバトルゾーンに置いておくことが可能な《罰怒ブランド》という見方も出来るだろう。
このような観点を活かして、【火単速攻】の新たな形を目指した。
新たな【火単速攻】を目指して
まず、この《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を絡めた動きを考えてみよう。
このカードをクリーチャー化させるには、このカード自身を含め、火のクリーチャーかタマシードが合計4枚必要である。
【火単速攻】という特性上アタッカーにならないタマシードを採用する事は困難なので、必然的にクリーチャーだけで枚数を揃える必要があるだろう。
さて、そうなると4ターン目にクリーチャー化させるには、2ターン目までに1体、3ターン目に《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を着地させ、4ターン目にさらに2体を追加して、という流れになる。
ちょうど手札の枚数も使いきれるため、流れとしては非常に綺麗なものであると言えるだろう。
幸い、火文明の2コスト以下には非常に優秀なクリーチャーが多い。
これらのクリーチャーを手厚く採用する事で、4ターン目に安定してクリーチャー化させ、ゲームを決めに行く事が可能となるのだ。
そして最も理想の流れは、《こたつむり》を絡める動きだ。
《ボルシャック・フォース・ドラゴン》は自軍のパワーを底上げし、最低でもWブレイカー相当の打点へと強化してくれるクリーチャーである。
が、他3体がWブレイカーになったとしても、2+2+1点にダイレクトアタックと、揃った4体総出で攻撃する必要がある。
要するに、相手のシールド・トリガー1枚だけで耐えられてしまい、カウンターでバトルゾーンを壊滅させられてしまう可能性すらあるのだ。
ここで活きるのが、《こたつむり》の持つ能力である。《こたつむり》は、マナゾーンに火のクリーチャーが4枚以上あると、自身の能力でWブレイカーになるのだ。
そこに《ボルシャック・フォース・ドラゴン》が絡むと、なんとTブレイカー相当の打点へと大化けするのである。
《ボルシャック・フォース・ドラゴン》が2枚、そして《こたつむり》が3枚のシールドをブレイク出来るため、他の2体で相手にダイレクトアタックを決めることが出来る。
よって、クリーチャー1体を止めるだけでは、攻撃が止まらなくなるのである。この動きは非常に重要なので、覚えておこう。
とはいえ、フィニッシャーを《ボルシャック・フォース・ドラゴン》だけに絞ると、どうしても安定性に欠けてしまう。
【火単速攻】という特性上、ゲーム中にドローできる枚数は少ないため、フィニッシャーは別にもう1種類欲しいところである。
デッキリスト
1コストのクリーチャーに関しては、《アニー・ルピア》の奇襲能力を最大限活かすため、1枚増量の13枚となっている。
その他2コスト帯には攻撃面に関して優秀なクリーチャーを多く採用し、環境を席巻する多色クリーチャーをシャットアウトする《マッテ・ルピア》をフルで採用した。
《マッテ・ルピア》は多色クリーチャーとバトルする能力に目が移りがちだが、パワー上昇の能力は、どのクリーチャーとバトルする時でも適用されるため覚えておこう。
《アニー・ルピア》は、シビルカウント3で自軍の他のクリーチャーを全てスピードアタッカーへと変える、見た目によらず、とんでもない能力を有している。
さらに、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》と組み合わせると、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》が2回攻撃できるようになるというおまけ付きだ。
《ボルシャック・フォース・ドラゴン》が2回攻撃すると、他の自軍のパワーアタッカーが重複するため、並大抵なブロッカーなら蹴散らしつつ攻撃が出来るだろう。
このデッキのメインの動きは、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》からの総攻撃か、従来の【火単速攻】のような《我我我ガイアール・ブランド》による超速攻である。
いずれも早期ターンに過剰打点を生成できるカードであり、特に《ボルシャック・フォース・ドラゴン》は、出た時の除去能力が、同型に対して強烈に突き刺さる能力になっている。
また、《罰怒ブランド》と違い、トップで引いた際に出せないという事が起こりにくく、盤面に並べるだけで相手にプレッシャーを与えていける、似て非なるフィニッシャーなのである。
これら二つのプランを最初の手札と対面で見極めながら、早いターンで相手に対処を強いていくことが目的となる。
どんな優れた戦略も、それを使う前に倒してしまえば、無いも同然なのである。
終わりに
今回は、割と本気で勝利を狙いにいったデッキのご紹介となった。
ちなみに、実際のGP2日目では、諸事情あって他のデッキを使用する事となった。
そちらのデッキは、私から語る事は無いとは思うが、私も微力ながら協力させてもらったデッキである。
《ボルシャック・フォース・ドラゴン》は、今後も何かしら強化が期待されるカードでもあるので、要注目のカードと言えるだろう。
現に既存の【火単速攻】に組み込むだけでも、爆発的な攻撃力を生み出す事になっているのだ。
もし、軽量かつシビルカウント達成で打点を増幅するカードなんかが増えたら、このカードも急速に強化されるだろう。
ド派手に奇襲を仕掛ける事が好きな人は、是非とも試して欲しい一枚である。
ところで、もしかしたら「なぜ《ボルシャック・フォース・ドラゴン》のデッキをアドバンスの方で使わなかったのか?」という疑問を持たれる人も居るかもしれない。
確かに、《”魔神轟怒”万軍投》との相性は抜群に良いのだが、アドバンス環境では、それすら容易く受け止めるデッキが跋扈している。
よって、確かに出力はアドバンスの方が高いが、不利となる対面が多くなると予想し、オリジナルで使う事にした、という事である。
では、アドバンスではどんなデッキを使ったのか、という話だが・・・こちらは、また別の機会に語るとしよう。