■はじめに
同時にスタートしたキャンペーン「スクラッチチャレンジ」のスクラッチカードを手に入れるために、それ以前に発売されていた遊戯王OCG関連商品をご購入された方も多いかと思います。
今回のキャンペーンは
「《青眼の白龍》」プリズマティックシークレットレア仕様 10名様
特製プロテクター(70枚入) 2,000名様
ラバー製デュエルフィールド 500名様
という豪華なもので、《青眼の白龍》のプリズマティックシークレットレアが人気だとは思いますが、個人的には特製プロテクターの絵柄が《ふわんぁりぃず》なのも注目度が高いと踏んでいます。
そこで、今回はこの《ラビュリンス》に関するちょっとした「こばなし」をお読み頂ければと思います。
罠カードを用いた戦術が中心ではありますが、そのテーマカードのうち半数はモンスターというのも珍しい構成のように思います。
おそらく、テーマに属さない罠カードを組み込むことが前提とされているためですが、同じくデッキビルドパックに収録された《神碑》(ルーン)のように専用の魔法が大量に収録されたテーマと一緒に登場しているところから、それとの差別化も含まれているのではないかとも考えられますね。
罠を駆使すると言えば、罠カードが大半を占める《エルドリッチ》や、罠カードをモンスターとして扱うこともある《幻影騎士団》、罠を自分や相手に装備させて戦う《アメイズメント》などと比べるとまた新しいスタイルです。
先に登場していた罠カードを組み込むことで、自らのシステムとした《蠱惑魔》に近いものを感じます。
「デッキビルドパック タクティカル・マスターズ」に登場したテーマはすべて戦略性の高いゲームがモチーフになっているとされています。
《ラビュリンス》は《白銀の迷宮城》と呼ばれる城を拠点とし、侵入者を様々な罠で迎え撃つというコンセプトのようです。
自陣・領地を様々なユニットや構築物で守るタワーディフェンスと呼ばれるゲームに該当するようですね。
プレイしたことがない人にとっては馴染みがないかもしれませんが、ソーシャルゲームの広告などでたまに流れてくるユニットや罠をどんどん設置・強化していき、迫りくる敵を迎撃するようなゲームはこのジャンルで扱われています。
侵入する側ではなく、侵入者からいかに守り抜くか。
ゲームプレイヤーというより、そのステージを用意するゲームマスターになるのが醍醐味の《ラビュリンス》は是非その城主たる《白銀の城のラビュリンス》になりきってデュエルしたいところですね。
彼女たち以外にもかわいらしい家具のモンスターがいて、そのモンスターたちは自身を手札から捨てたり、フィールドから墓地に送ることで魔法・罠をセットする共通の効果を持っていることが多く、墓地に行くのはもしかして…城の罠を作動させているのは────まさかモンスターたちの手動ということでしょうか。
《ラビュリンス・バラージュ》の時はこのように罠だけのイラストであったりするので、こういう時は罠のスイッチを押しに裏側に引っ込んでしまっているのかもしれません。
そんな推測ができますね。
家具・インテリアが動き回っている…というのはまるでかの有名なディズニー映画の「美女と野獣」を彷彿とさせます。
RPGでお馴染み石像の守衛こと「ガーゴイル」に相当するであろう《白銀の城の魔神像》に関しては、その存在こそが侵入者にとって罠であるので、「罠カードが発動した場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。」という効果なのでしょう。
ゲームをプレイしていて、何の変哲もない城内装飾のオブジェクトが急に襲ってくるトラウマは一度経験すると忘れられません…。
逆に人に近い形を持っているモンスターたちは、手札を増やしたり、使ってしまった罠を墓地から回収するなど、《白銀の城》城内の整備に特化しています。
《白銀の城のラビュリンス》を会社における社長だと捉えるなら、二人の召使は部長や課長、他のモンスターは平社員、といったところなのでしょう。
■迷宮の怪物
ところで、《ラビュリンス》はその名の通り、「迷宮(ラビリンス)」がテーマとなっています。
数ある遊戯王OCGの中でも、名称としてかなりストレートに元ネタが分かる部類です。
「迷宮」と言えば、ギリシア神話に登場する有名な「ミーノータウロス(ミノタウロス)の迷宮」はご存知でしょうか?
「クノッソスの迷宮」という呼ばれ方もします。
世界最古の迷宮とされ、その様式は「クレタ型迷宮」と呼ばれています。
これは余談ですが、「迷宮」と「迷路」は違うもので、「迷宮」は一本道で分かれ道などが基本的には存在しません。
こういう特性から必勝法として「片手をついて歩けば必ず出口に出られる」とされているのでしょう。
さて、その「ミーノータウロスの迷宮」ですが、その紋章に使われていたのが「ラブリュス(両手斧)」であったために、それが転じて「迷宮=ラビリンス」という名前になったのではないかという説があります。
大きな両手斧を持ち、立派な2本の角を持つ《白銀の城のラビュリンス》を見れば、その2つの要素両方が取り入れられた意匠であるということが分かります。
「ミーノータウロス」は人間の女性と美しい白い雄牛との間に生まれた怪物でした。
頭部が牛、身体は人間という見た目でよくTCGやRPGにも登場していますね。
「ミーノータウロス」の出自
クレタ島を統治していたミーノース王は、王位に着く前に、ポセイドーン(海の神とされる)にお願いしました。
「他の兄弟より私が王様に相応しいって推薦して!」
ポセイドーンは
「よっしゃ! まかせとき!」と
後に儀式の生贄に使用するという約束で、とても美しい白い牛を贈りました。
そのおかげもあって、ミーノースは王様になれたのです。
しかし、その牛があまりに美しかったので、儀式には使わないでとっておいてしまいました。
約束を破られたポセイドーンは怒って王様の奥さんに呪いをかけます。
「旦那よりもめっちゃ牛さんを好きになぁーれーッ!!!!!!(怒)」
呪いにかかった奥さんはどうすることもできず、名工ダイダロスに頼んで中が空洞の牝牛の模型を作ってもらいます。
そして思いを遂げてしまいました。
こうして、呪われた子供として「ミーノータウロス」が誕生します。
「ミーノータウロス」というのは「ミーノース王の牛」という意味で、本当の名前は「アステリオス(アステリオーン)」という美しい名が与えられていました。
迷宮
最初は普通に暮らしていた「ミーノータウロス」ですが、やがて成長するにつれて乱暴になっていきます。
王様の手に負えないほどになってしまったので、名工ダイダロスに頼んで彼専用の迷宮を作って閉じ込めてしまいました。
ダイダロスも「この夫婦めんどくせぇ…」と思っていたかもしれませんね。
さて、ミーノース王には他にも息子が何人かいたのですが、そのうちのひとり、アンドロゲオースはアテーナイ人が原因で死んでしまいました。
それに怒った王様はアテーナイと戦争をし、勢力下におきました。
閉じ込めたとはいえ、「ミーノータウロス」にもご飯をあげなくてはならなかったので、王様はアテーナイから生贄を募ることにしました。
いくら迷宮が複雑な構造とはいえ、一本道なのに出てくる人がいないのは「ミーノータウロス」の生贄として入っていくためだったからなんですね。
救世主テーセウス
ここからが有名なところではありますが、毎年生贄を要求され続けるアテーナイでテーセウス(テセウス)が「このままじゃいかん!!」と生贄に志願します。
テーセウスはアテーナイの王様の子なので、父親にとても反対されましたが、その反対を押し切ってクレータ島の迷宮に行ってしまいました。
クレータ島に渡ったテーセウスはミーノース王の娘のアリアドネーに恋心を抱かれます。
彼に死んで欲しくなかったアリアドネーは魔法の赤い糸と、短剣をこっそりテーセウスに渡して迷宮に送り出しました。
その短剣で「ミーノータウロス」は見事討ち取られ、以後生贄は必要なくなったのです。
※すべて同一人物だと思われる。
もしかしたらこれが、《ラビュリンス》におけるテーセウスなのかもしれませんね。
■デザイン考察
イラストのデザインの大元はもちろん「ミーノータウロスの迷宮」が中心となっていますが
家具・インテリアがまるで生き物のように城中を歩き回っている姿はまったく別の物を想起させます。
たとえば、先ほど上げたディズニー映画でも有名な「美女と野獣」ですね。
多くの家臣たちが呪いで家具や食器に変えられてしまっていました。
ある日城に迷い込んだ主人公のベルと、この家具たちは友好関係を結んでいきますが、その中で城主である野獣とも心を通じ合わせ、やがて呪いが解けるという物語は数あるディズニー映画の中でも人気の作品のひとつです。
城に迷い込む少女という物語はかなり定番で、冒頭シーンとして多くの物語で使用されています。
スタジオジブリの「ハウルの動く城」もこれに該当することでしょう。
呪われてしまった少女・ソフィが、魔法使いのハウルと心を通わせ、やがて2人にかかった呪いは解けて…
展開だけを書いてしまうと似たような作品だと思われがちですが、スタジオジブリの素晴らしいアニメーションだけでなく、国家間の戦争に巻き込まれる展開などもあって、また別の見どころが多い作品です。
この2作品はどちらも「迷い込む少女」「動く家具」といった共通点が多いので、《ラビュリンス》のデザイン過程でどこかしら関わった可能性も否定できないことでしょう。
公式Twitterによる《白銀の城のラビュリンス》の設定画によると、
「バニーガール的な(ゲームのディーラー的な)」「よなべして罠を考えてできたクマ」というデザイナーコメントなども見られます。
華やかなドレス姿はもちろんですが、城主として侵入者を迎え入れていたようなフシが感じられますね。
まるで「客人」のように。
侵入者である騎士がいる時といない時でテンションに差がでている様子も描かれているところを見るに、彼女が城を訪れることを楽しみにしているようです。
この様子もどこか「美女と野獣」の「野獣」のような、周りに多くの人がいても紛らわせることができない寂しさを抱えているのではないかと推測できます。
「ミーノータウロスの迷宮」を題材にした「アステリオーンの家(著・ホルヘ・ルイス・ボルヘス)」という書籍があるのですが
こちらは「ミーノータウロス」視点から「ミーノータウロスの迷宮」を書いたとされ、中でもその「ミーノータウロス」を討伐しにきたテーセウスに対し、彼こそが「ミーノータウロス」にとっても救いであった、というくだりが登場します。
(文脈が長いので要約しています)
あくまでも多くの著作の中での表現の一端ではありますが、親に閉じ込められ出てこられない「ミーノータウロス」こと「アステリオーン」にとってはその死こそが救済であった、ということなのかもしれません。
もちろん、《ラビュリンス》ではそのようなことは今後の展開としてないと信じたいですが、まだ名もない騎士の少女が孤独な《白銀の城》の《白銀の城のラビュリンス》にとって大きな救いであることは間違いなさそうです。
■おわりに
今はコロナ禍の影響などもあって、なかなか参加するのは難しいものもありますが、「体感型謎解きゲーム」というものがありますよね。
簡単な迷路や謎を解いていくアトラクションの一種で、多くの作品ともコラボするなどご存知の人はもちろん、参加した人もいらっしゃるのではないでしょうか。
筆者・カニ丸は方向音痴なところもありまして・・・・・
・・・オープンワールド系のゲームなどしていますと、マップがあって、見ていても迷うという有様です。
遊戯王でも過去に「海馬コーポレーションからの挑戦状」という「体感型謎解きゲーム」がイベントとして催されていました。
都合がなかなか合わずその時は参加を見送ってしまったのですが、また状況が落ち着いたらどこかで開催して欲しいと願っています。
方向音痴ですけどね!!
長期休暇でそういった所に行かれる方も多いかとは思いますが、どうぞ熱中症にはお気を付けて!!
以上、先日熱中症でダウンしたカニ丸でした。