はじめに
初めましての方は初めまして、『yk800』です。
このコラムでは、直近で話題となったデッキや筆者である私yk800が個人的に気になったデッキを紹介していきます!
今回の特集は光水闇【墓地退化】。
墓地退化ギミックを使用したデッキとしては水闇自然【墓地退化】が以前から活躍していましたが、王来MAX第1弾の発売を受け登場した新たな【墓地退化】も負けず劣らずの大活躍。
似ているようでまったく異なる強みを持ったコンボデッキとして、今大注目のデッキタイプです。
今回はそんな光水闇【墓地退化】のコンセプトや成立した理由、同じ墓地退化デッキである水闇自然【墓地退化】との違いまで、基礎から解説していきます!
光水闇【墓地退化】のサンプル構築
光水闇【墓地退化】ってどんなデッキ?
【墓地退化】デッキ特有の強いフィニッシュ力を持ちつつ、光の新カードによって高い防御力まで兼ね備えたコンボデッキです。
基本的な動きは《龍脈術 落城の計》の登場以来、連綿と受け継がれてきた墓地退化ギミックの系譜そのもの。
2ターン目、3ターン目にルーター(カードを引いて捨てるカード)をプレイして墓地を肥やし、4ターン目に《死神術士デスマーチ》と自分のカードも対象に取れるカード除去を同時にプレイして大型クリーチャーを投下、そのまま勝利を目指します。
このムーブを基盤に据えた【墓地退化】デッキはこれまで水/闇の2色で組まれることが一般的でしたが、光文明を入れる動機となるカードが王来MAX第1弾で登場しました。
それが《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》です。
《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》 コスト3 光文明 パワー3500
エンジェル・コマンド
■G・ストライク
■このクリーチャーが出た時、バトルゾーンにある他の、コスト3以下のカードを1枚選び、シールド化してもよい。
このカードを採用するメリットは多数存在しますが、何をおいても重要なのは「コスト3のカード除去」である点でしょう。
これまでは追加のカード除去の選択肢がコスト4の《堕呪 エアヴォ》しか存在せず、このカードを用いて4ターン目にコンボを決めるためには3ターン目に墓地進化クリーチャーをプレイして除去されないことを祈るしかありませんでした。
ですが、《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》はその悩みを一気に解決。コンボパーツとして使ううえでは純粋に《龍脈術 落城の計》の枚数を増やしたような感覚で使用できます。
手札への除去ではなくシールドへの除去であるため、相手のフィールドやメタクリーチャーをほぼ完全に排除できる点も優秀です。
《龍脈術 落城の計》は手札へのバウンスだったので次のターンに再展開されやすく、あくまで時間を稼ぐだけの除去になりがちでしたが、こちらはシールドゾーンへの除去という再利用のされづらさでは最上級のもの。
対象はコスト3以下のみと範囲はやや狭いものの、フィールドで言えば《卍 新世壊 卍》や《希望のジョー星》、メタクリーチャーで言えば《こたつむり》や《その子供、可憐につき》など、除去したいところは概ねカバーできているためそれほど困ることはないでしょう。
次弾以降では「シンカパワー」を持つタマシードの登場が示唆されており、そのほかの常在型能力を持ったタマシードも増えていくと考えられます。軽量カード除去、それも再利用されづらいシールドへの除去であることの価値は今後増していくでしょう。
そして、このデッキの高い防御力の秘訣となるのが、「自分のコスト3以下のS・トリガー持ちクリーチャーをシールドに埋め直せる」点です。
サンプル構築では《終末の時計 ザ・クロック》と《奇石 オリオン》が該当します。
特に《終末の時計 ザ・クロック》は他のトリガーでは止めにくい【火単ブランド】の超過剰打点をはじめ、【モモキングJO退化】や火自然【アポロヌス】の大打点も確実にキャッチできる貴重なトリガーとしてビートダウンデッキ全般に刺さります。
また、クリーチャーであるため呪文ロック系のメタカードやフィニッシャーで詰むことが回避できるほか、《影世界のシクミ》や《シラズ死鬼の封》、サンプル構築では採用していませんが採用候補となる《ヴィオラの黒像》や《戯具 ヴァイモデル》で踏み倒せます。
相手のターン中にトリガー付きのリアニメイト手段でこのカードを踏み倒して、バトルゾーンの《終末の時計 ザ・クロック》をシールドに埋め、もう1ターンをもらうような小テクもあり、柔軟な動きが可能です。
まとめると、初期型の水闇【墓地退化】の圧倒的な速度・フィニッシュ力はそのままに、《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》が有する多くの——特に防御面や小回りの利きやすさといった強みを取り込んで、大幅にアップデートしたデッキが光水闇【墓地退化】です。
水闇自然【墓地退化】との違いについて
水闇自然【墓地退化】のサンプル構築
同じ墓地退化ギミックを取り入れたデッキとしては、2022年初頭の環境で大活躍していた水闇自然【墓地退化】が有名です。現在も水闇自然型/光水闇型のどちらもオリジナル環境に存在しており、一定の存在感を放っています。
共通のフィニッシュコンボを持ちながらも、そもそもの設計思想からして異なるため、全く違うデッキに仕上がっている両【墓地退化】デッキ。単純な比較は難しいものの、どのような違いがあるかを検討していきましょう。
水闇自然【墓地退化】の強みは、究極的には「マナが伸びること」の1点に集約されるでしょう。
マナが伸びるから、《エマージェンシー・タイフーン》+《死神術士デスマーチ》+《龍脈術 落城の計》の流れを同じターンの間に叩き込めます。
マナが伸びるから、《絶望と反魂と滅殺の決断》などのカードパワーに優れたカードを取り込んで、コンボに頼り切らないゲームメイクを行えます。
マナが伸びるから、《生命と大地と轟破の決断》や《Disジルコン》といった手札以外からプレイできるカードを起点とした展開を作りやすく、ハンデスを受けても粘り強く勝利を狙えます。
マナが増えれば1ターンのうちに取れるアクションの組み合わせが増加し、コンボとは別の角度から相手に干渉できるようになります。相手からすれば対応しなければならないパターンが膨大に膨れ上がるため、全ての展開をケアしきるのは非常に困難です。
最速のコンボ成功率を犠牲として、マナ加速を導入。豊富なマナを背景に、1ターン中の行動回数の増加・ハンデスなどの軸をズラしたコントロールプランを取り込み、メタや妨害手段を乗り越えてゲームを作れる強靭なデッキに仕上がっています。
幅広い相手への対応力が高く、メタを張られても戦えるため、環境上位以外のデッキも多数活躍するような環境では有力な選択肢となるデッキです。
光水闇【墓地退化】の強みは、フィニッシュターンの速さと先述した防御力。
よりコンボに特化した水闇【墓地退化】に採用されていたルーターやコンボパーツは光文明を追加した後もほぼ減っておらず、4ターン目のコンボ成功率も光マナが用意できないリスクはあるものの、基本的にはほとんど変わっていません。
それどころかコスト3の退化用カード除去が追加されたため、「パーツが手札に揃うこと」の再現性はむしろ上がっていると考えてよいでしょう。
退化先としてもっとも優秀な《竜魔神王バルカディア・NEX》が光文明・闇文明の両方を有していることもあり、光文明の枚数はそれほど無理なく確保可能。既存の水闇【墓地退化】と比べれば、安定性はやや落ちるものの、致命的な差とは言えません。
そのうえで、そもそも自由枠に採用されやすかった《終末の時計 ザ・クロック》を有効に使う手段が大量に追加されたのは大きなメリットです。
《終末の時計 ザ・クロック》は、クリーチャートリガーのケアされづらさも含め、受け性能だけで見れば環境でも屈指の優秀なトリガーです。が、起こる事象としてはパワー3000・1打点のクリーチャーが1体バトルゾーンに登場するのみ。バトルゾーンに直接的な影響を及ぼすわけではなく、自分のリソースが増えるわけでもありません。
「踏ませても返しに取れるアクションがほとんどないため逆転しきれず、そのまま次のターンに押し切られる」ことがほとんどで、あまり高い評価を得られていませんでした。
ですが、光水闇【墓地退化】では話が別。《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》により埋め直しが効くため、もらった1ターンを2ターンに増やしてコンボに必要なマナが貯まるまでの時間を稼ぎやすくしてくれます。
リアニメイトトリガーとの相性も言わずもがな。相手はあらゆる角度から飛んでくる《終末の時計 ザ・クロック》の影に怯え続けることとなります。
自分より遅いデッキにはぐっと再現性の増した墓地退化ギミックで粉砕しつつ、自分より速いデッキへの勝率も《終末の時計 ザ・クロック》サイクルにハメることでカバー。
墓地メタや執拗なハンデスに対してはやや脆い部分があるものの、高速ビートダウンやオールインコンボが幅を利かせるような環境では活躍しやすいデッキだと言えるでしょう。
光水闇【墓地退化】に採用されているカードについて
初動の役割を担うルーターたちです。
枚数の配分には個人差があるものの、概ね10枚〜12枚程度の採用が一般的。リアニメイトや墓地進化に割く枠や、水文明単色の枚数が多くなりすぎることのリスクも加味して、サンプル構築では10枚の採用に止めています。
基本的には2ターン目に手札を整えて3ターン目のアクションの幅を広げたり、3ターン目に多色カードをマナに置きながらプレイできる《エマージェンシー・タイフーン》2種を8枚採用し、追加のルーターとして《サイバー・チューン》を2〜4枚程度採用するのがオススメです。
コンボの基本となる墓地進化クリーチャーです。
《死神術士デスマーチ》はとにかくコストの軽さによるメリットが莫大です。
4ターン目に1+3で退化コンボを叩き込めるのはもちろん、3ターン目に《エマージェンシー・タイフーン》と一緒にプレイして墓地メタを避けたり、《シラズ死鬼の封》でコスト3のカードと同時に踏み倒したりと、小回りが抜群。
《∞龍 ゲンムエンペラー》下でも進化クリーチャーは召喚酔いしないため詰めの打点として活躍したり、実質パワー5000のブロッカーなので小型クリーチャーで攻め立ててくるビートダウンには壁としても有効に働いたりと、コンボパーツ以外でも多数の役割を持っています。
《鬼面妖蟲ワーム・ゴワルスキー》はコスト2の墓地進化クリーチャー。
コスト1とコスト2の差は見た目よりも遥かに大きく、様々な面で《死神術士デスマーチ》に劣るものの、そもそも軽い墓地進化クリーチャーというだけで貴重。2ターン目のルーターから3ターン目に墓地進化で出すことで、4ターン目にカード除去をプレイしてフィニッシュに繋げられます。
パワーが4000あるため、《凄惨なる牙 パラノーマル》や《ローズ・キャッスル》の影響下で退化コンボを決められるカードでもあります。
追加のコスト3退化コンボパーツでありながら多彩な役割を持つ、光水闇【墓地退化】のキーカードです。
重要なことはほとんど先述しているため再記は割愛いたしますが、追加のメリットを2点ご紹介。
まず、このカード自体がエンジェル・コマンドであること。
これが活きるのは、《竜魔神王バルカディア・NEX》から踏み倒せる点と、追加のフィニッシャーとして《聖霊王アルファディオス GS》の採用が検討できる点。
《竜魔神王バルカディア・NEX》から踏み倒してバトルゾーンの《終末の時計 ザ・クロック》を埋め直せば、相手にこれを無視して勝つ手段がない限り実質的なExターンとして機能します。
「相手のシールド0 、盾に《終末の時計 ザ・クロック》」という状況は想像以上に「詰ませ」性能が高いです。
《聖霊王アルファディオス GS》は言うまでもなく、着地すれば強力なロック手段となってくれる追加フィニッシャーです。
単体では何もせず、山札に埋まっていないとプレイできない点は気になりますが、引いてきた場合は貴重な光単色マナ要員、盾に埋まればG・ストライクとどこにいても最低限の仕事ができるのは嬉しいところです。
もう1つは、すでに上述していますが、このカード自身がG・ストライクを持っていること。
防御力の高さは光水闇【墓地退化】のウリのひとつ。追加枠として採用されるこのカード自体が少しでも受けに貢献してくれるのは、願ってもないメリットだと言えるでしょう。
問答無用でターンをぶんどる最強の受けトリガー。
現環境では《終末の時計 ザ・クロック》をケアして殴り勝ちを狙える手段がかなり限られており、「ターンをもらう」性能の高さは環境でも屈指です。
リアニメイトで出す手段も豊富なので、ルーターで捨てたい退化先がない場合は積極的に墓地に落としておきましょう。特に3ターンでのリーサルを狙ってくるようなビートダウン相手には最優先で墓地に用意しておきたいですね。
光単色のトリガークリーチャー。《終末の時計 ザ・クロック》ほどなんでも止まるわけではないですが、侵略や革命チェンジを起点に攻めてくるデッキに対しては効果テキメンです。
即座に盤面に干渉でき、相手のクリーチャー全てに作用するため《禁断のモモキングダム》や《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》などの「選ぶ」除去に耐性のあるクリーチャーも山札下に送り返せます。
コスト3なので《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》でシールドに埋め直せるほか、軽いので手札から除去札としてプレイしても十分な効果を得られるのは特筆すべき点だと言えるでしょう。
光単色であることもマナベースの面でメリットが大きく、様々な部分で現在のオリジナル環境やデッキの特性と噛み合う良いカードです。
光/闇の多色カードであり、マナ基盤としても優秀なリアニメイトトリガーです。
呪文版《戯具 ヴァイモデル》とも言うべき墓地肥やしとリアニメイトを持っていますが、こちらはクリーチャーが横に並ばない代わりに手札からも踏み倒せ、踏み倒したクリーチャーにブロッカーを付与します。
受け札として《終末の時計 ザ・クロック》や《奇石 オリオン》を踏み倒すのはもちろん、終盤には《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》や墓地進化獣などのコンボパーツの代わりとなる点が嬉しいです。
ただし、クリーチャーの踏み倒しは任意ですが、3枚の墓地肥やしは強制効果。山札の残数には気をつけましょう。
墓地退化系デッキではお馴染みの大型フィニッシャー軍団です。
もっとも信頼の置けるフィニッシャーは、やはり《竜魔神王バルカディア・NEX》。なんだかんだとこのカードの攻撃時に《禁断竜王 Vol-Val-8》を踏み倒し、シールドが亡くなった相手をジャストダイバーのSAで詰め切る黄金ムーブがシンプルにして最も強力です。
このデッキでは光文明を持つマナ基盤としても優秀で、複数枚引いていれば優先的にマナに置きたいカードになります。
《∞龍 ゲンムエンペラー》は【モモキングJO退化】や【墓地退化】ミラーなど、コスト5以下のカードをキーカードとするコンボデッキとの対面で特に輝く1枚。
コンボデッキはパーツを一定数採用する関係上対処手段を持たないことが多く、実質「詰み」を作ることもそれほど難しくありません。
タマシードの能力を無効化できないため現環境では意外と穴が大きく、自分の軽量カードの能力も軒並み無効化するため雑に早く出しても勝ちに直結しない場合が少なからずある点には注意しましょう。
《禁断竜王 Vol-Val-8》は余りあるフィニッシュ力で堂々の2枚採用。
ただし、この構築では基本的に《竜魔神王バルカディア・NEX》から踏み倒すしか出す手段がないため、山札からなくなってしまうと詰め方が一気に難しくなるのが難点です。
マナに埋めようにも実質的に水マナしか出せないカラーリングが非常に弱く、うっかり引いてしまうと大きな負債を抱えることになります。リターンの分だけリスクも大きいカードであることは理解しておきましょう。
これらフィニッシャーの枠は《竜魔神王バルカディア・NEX》4枚以外固定ではないので、環境や好みに合わせて差し替えるのもいいでしょう。
よく使われるフィニッシャーとしては、《The邪悪 寄成ギョウ》・《大樹王 ギガンディダノス》・《魔龍バベルギヌス》・《聖霊王アルファディオス GS》あたりが挙げられます。
おわりに
というわけで光水闇の3色で構築された新たな【墓地退化】について解説していきました。
僕がこのデッキのリストを見て最初に興味を惹かれたのは、自由枠に採用されがちだった《終末の時計 ザ・クロック》を極めて強く使える構築だったためです。
そもそも王来MAX発売前から、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》や《我我我ガイアール・ブランド》、《未来王龍 モモキングJO》といった令和のビートダウンにおけるフィニッシャーたちの多くに《終末の時計 ザ・クロック》が有効なことは周知されており、実際に《終末の時計 ザ・クロック》をコンボギミックに組み込んだ【MDWチョイス】というデッキは一定の結果を残していました。
が、既存のデッキは(【MDWチョイス】や水闇や水闇自然の【墓地退化】デッキも含めて)「相手が早すぎると《終末の時計 ザ・クロック》を踏ませても勝てない」ところから抜け出せていなかったのです。
そこに鮮烈に現れたのが、《終末の時計 ザ・クロック》を埋め直して複数ターンを稼げる本構築。刺さらない対面には刺さらないギミックではあるものの、コンボパーツとしても使えるカードを用いて無駄なくこの動きができるのは革命的だと感じました。
勝ち筋が完全にコンボに依存しているためメタに弱い部分は否めませんが、明確かつ独自の強みを持ったデッキなので、今後も環境の要所要所で活躍を見せてくれるのではないかと考えています。
それでは、また来週お会いしましょう。お相手はyk800でした!