はじめに
【光闇火ライオネル.Star】に【4cMDWチョイス】、【光水闇墓地退化】。
たくさんの新デッキが華々しく活躍する中、半年ほど前に流行した「あるデッキ」が再びオリジナル環境で爆勝ちしているのはご存知でしょうか……?
初めましての方は初めまして、『yk800』です。
このコラムでは、直近で話題となったデッキや筆者である私yk800が個人的に気になったデッキを紹介していきます!
今回の特集は【水t闇スコーラー】。
2021年11月環境で鮮烈なデビューを果たしたものの、その後は環境の変化に伴ってブームは下火に。「愛好家は使う」ぐらいの立ち位置に収まっていたデッキですが、王来MAX環境が始動した今、上位デッキの一角としてまた日の目を浴びています。
今回は【水t闇スコーラー】のコンセプトや動き方、「なぜ今強いのか」に至るまで、基礎から解説していきます!
【水t闇スコーラー】のサンプル構築
【水t闇スコーラー】ってどんなデッキ?
キーカードとなるのは、《月下旋壊 ド・リュミーズ》。
自分のマナゾーンにカードが4枚以上あり、そのうち少なくとも1枚が魔導具なら、コストを支払うかわりに魔導具を2枚自分の手札から捨てて唱えられ、カードを3枚引ける呪文です。
このカードで山札をガンガン掘り進めながら「ターン中に呪文を唱えた回数」を水増しし、道中で《超宮兵 マノミ》で手札を補強しつつ《次元の嵐 スコーラー》のG・ゼロ条件となる「唱えた回数:5回」を目指して呪文連打。
このデッキ最大の特徴は、「4ターン目のコンボ再現性の高さ」。
【水t闇スコーラー】は、コンボパーツとそれを集めるドローソース以外のカードがほとんど入っておらず、ゲーム開始から全力でデッキを回してコンボ達成を目指すデッキ。俗に「オールインコンボ」と呼ばれるような、コンボに全力を賭けたデッキです。
効果的な妨害を1つ受けるだけで非常に苦しくなってしまうものの、妨害のない相手にはあっさり勝ってしまえることが多く、この手のデッキは両極端な相性差になりがち。活躍できる環境では非常に強く、そうでない環境ではあまり強くないことが多く、このデッキも登場直後は大きく話題になったものの、その後はあまり使われなくなっていました。
では、【水t闇スコーラー】はどんな環境で輝くのか。
ズバリ、「3〜4ターンで仕掛けてくるデッキが少なく、軽量の呪文妨害手段が使われず、トリガーを多めに積んでいるためコンボに対しての有効牌が多くないデッキが多い環境」です。
条件が多いように見えますが、「クリーチャー主体のビートダウンをメタ対象に据えた、受けの厚いデッキが多数活躍している環境」と要約すれば非常にシンプルです。
王来MAX第1弾環境がスタートして以降、先述した【光闇火ライオネル.Star】や【4cMDWチョイス】のような防御力に秀でたデッキが多数活躍中。
直前環境で流行していた【モモキングJO退化】や【火自然アポロヌス】の存在を意識しつつも、トリガータマシードによって前環境の王者・【水闇自然墓地退化】のフィニッシュブロウさえも受けられる点が高く評価されています。
が、これらのデッキはトリガーからのカウンターで序盤を凌ぐように構築されており、軽量カードはリソースを整えるカードのみ。妨害手段はほとんど採用されないのが一般的です。
タマシードの登場で受けデッキの防御手段が非常に強化された結果、そんな防御手段をものともしないコンボデッキが相対的にポジション向上。その筆頭として注目されたのが【水t闇スコーラー】だった、というわけですね。
【水t闇スコーラー】のコンボ手順
【水t闇スコーラー】に採用されるカード
デッキ成立を支える、実質的なコンセプトカード。
このカード1枚に墓地肥やし・山札掘り・スペルカウント追加の全ての要素が集約されており、このカードなくして【水t闇スコーラー】というデッキは存在しえません。
《月下旋壊 ド・リュミーズ》を使うためにこのデッキは16枚もの魔導具を採用していますし、《堕魔 ヴァイプシュ》という一見スペルコンボに噛み合わないカードまで使われています。
基本的にはよほどのことがない限り、コンボ成立のために唱えるカードで、ドローソースとして考えるべきでない点には注意しましょう。
実質コスト0で唱えられる呪文はこのカードと《セイレーン・コンチェルト》しかないため、コンボを成立させるためにはこの呪文を同一ターン中に2回唱える場面が頻繁に起こりえます。《堕魔 ヴァイプシュ》があれば多少緩和されますが、手札の魔導具枚数管理の面でも迂闊な使用はNGです。
初動となる2種の魔導具です。
《堕呪 ゴンパドゥ》は山札を3枚見られるため、《エナジー・Re:ライト》やその他のパーツにまっすぐアクセスできる点が最大の強みです。
残りのカードが山札の下に行く点も、コンボパーツのボトム落ち回避の面で非常に優秀。1枚差しのコンボパーツが大量にあるこのデッキではとても重要です。
《堕呪 バレッドゥ》は特定のカードを探す能力にかけては《堕呪 ゴンパドゥ》に劣るものの、新鮮なカードを2枚加えられるため手札の総合的な質を向上させやすいのが強みです。
また、のちのち墓地から回収できる《堕魔 ヴァイプシュ》を捨てられれば、実質的に2マナで手札が1枚増える超効率のドローソースになります。
どちらも強力ですが強みの方向性が少なからず異なるため、両方とも使える場合は手札や相手の盤面と要相談です。
フィニッシュパーツになる魔導具です。
一応ドローがついているため山札を掘るために使えないこともないですが、質・量ともに十分ではないため、早期に引いた場合は基本的に《月下旋壊 ド・リュミーズ》のコストに当てるのが良いでしょう。
現在の環境ではあまり遭遇機会がありませんが、シールドゾーンを使うギミックに対してピンポイントメタになりうる点は覚えておきたいところです。
主に受け札であり、貴重な「山札を減らさない」呪文の魔導具です。
打点を削って時間を稼ぐこともできますが、使う際には手札は減っているので勝ちまでのハンドキーププランを明確に定めてから使った方が良いでしょう。
効果が強制かつ自分のクリーチャーを選べない点には要注意。選べばマナが吹き飛ぶ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》がいる状況では、[空撃ち呪文]に計上できません。
小回りの効くサーチカード。《堕呪 ゴンパドゥ》と同じく初動の確保からボトム固定までこなしつつ、コスト1と軽いためスペルカウント稼ぎの上でも非常に効率が良いカードです。
1マナという軽いコストでスペルカウントを増やしながら、魔導具呪文や《月下旋壊 ド・リュミーズ》を探せるため、コンボ成立ターンに唱えるカードとしては最も強いカードと言っても差し支えありません。
呪文を手札に加えるのは任意効果であるため、ループの際に空撃ちする呪文としても活用できる、言うことなしの1枚です。
G・ストライクがついており、受け札にもなるドローソース。
無条件で手札が増えるコスト3以下のカードは、《ストリーミング・シェイパー》と《デビル・ドレーン》とこのカードを合わせた計5〜6枚の採用が一般的です。
《月下旋壊 ド・リュミーズ》のために手札を3枠消費するため、ある程度手札枚数を確保できなければ途端にハンドキープが窮屈になる【水t闇スコーラー】にとって、3ターン目に手札が増えるカードを使えるか否かがコンボの成否に直結します。
ただし、スペルカウントを稼ぎたい4ターン目以降はコスト3のドローソースは取り回しの悪さが目立ってしまいます。使い方に注意を要するカードです。
「最強」のドローソース。これを3ターン目に唱えられれば勝利にグッと近付きます。
シンプルにアドバンテージが大きすぎるため解説することは少ないですが、強いていうなら山札掘りの効率に非常に優れるため、《魔導管理室 カリヤドネ》で初期盤面を整える際にも優秀な1枚です。
こちらも1枚が手札5枚に化ける可能性のある強烈なドローソース。
1度しか使えず、決めたターンに勝ち切りたい局面が多いのは弱みではあるものの、「盾落ちを完全にケアできる」というのはコンボデッキにとって何にも勝るメリットです。
ノーコストで呪文を唱えつつ、踏み倒せばマナがアンタップする唯一無二のカード。このカードがなければ回らないループはデュエマ界にごまんとあります。
【水t闇スコーラー】も例に漏れず、このカードで《超宮兵 マノミ》の条件達成に近付きながら《魔導管理室 カリヤドネ》着地後はマナを起こして無限ループを支える1枚。代替が効かないため大事に使いましょう。
道中に挟み込むことで、マナを残したまま山札を掘り進めて手札を増やせる貴重なカード。ムートピアであるため《I am》のコスト踏み倒し達成に大きく貢献する点も重要です。
山札を掘り進められるため見切り発車もある程度許容されるデッキではありますが、《超宮兵 マノミ》を出す見通しすら立っていないようであれば、多くの場合で1ターン待つ方がいいぐらいにはコンボの成功率に関わるカードです。
まずは呪文を3回唱えて《超宮兵 マノミ》を出すところがこのデッキのひとつのチェックポイントになっています。
デッキ名にもなっている通り非常に重要なパーツではあるものの、単体で勝つわけではないカード。あくまで莫大なアドバンテージを稼ぐカードでしかなく、チェックポイントの1つです。
とはいえExターンを取りながらG・ゼロで頭数を稼げる点は非常に大きく、ループルートで複数枚必要になるのはもちろん、何らかの事情で《I am》でビートダウンを狙うプランを取る場合はExターンを取りながらワールド・ブレイカーとなったNEO進化《I am》+《次元の嵐 スコーラー》複数の盤面を作って押し切る必要があります。
膨大なアドバンテージを稼ぎつつ山札を掘り進めつつループパーツになりつつ……採用している呪文の種類だけできることが増える万能機です。
手札に戻す手段は《I am》しかありませんが、アドバンテージ量と盤面の調整能力に非常に優れているため、コンボが達成していない状況でも召喚して呪文を連打していく方が結果的に勝ちにつながりやすいです。
盾落ちケアの手段もあるため、気兼ねなくプレイしていきましょう。
ノーコストで手札を捨てながら盤面にムートピアを出せるループパーツです。
基本的にはそれ以上でも以下でもありませんが、手札に呪文が2枚あれば、墓地の呪文枚数を即座に増やせるため、「あと少しで《魔導管理室 カリヤドネ》がコスト1になってアドバンテージを回収できる!」というような状況ではループ前でもプレイする可能性があります。
どうしても必要な状況ではブロッカーとして出すこともできますが、手札が減るアクション自体がコンボ成立にとって致命的なので、本当に最後の手段と考えた方が良いでしょう。
ムートピアが5体以上いればコストを支払わずに召喚できるNEOクリーチャーです。
進化クリーチャーとしても非進化クリーチャーとしても出せるのがミソで、進化クリーチャーとして出せば召喚酔いせずに即座に攻撃できるワールド・ブレイカーに。非進化クリーチャーとして出せば自分ごと全てのムートピアを回収できるループパーツになります。
このデッキは一度条件を達成してしまえば何度でもG・ゼロやコスト1で召喚できるムートピアしか入っていないため、打点として運用する場合でも自軍全バウンスがあまりデメリットになりません。
《次元の嵐 スコーラー》でExターンを取ってから《I am》を召喚し、戻ってきた《次元の嵐 スコーラー》を再度G・ゼロで召喚すれば、簡単にExターンまたぎの過剰打点を形成できます。
基本的にはループで勝てばいいものの、《デビル・ドレーン》と《セイレーン・コンチェルト》や《魔導管理室 カリヤドネ》が同時に盾落ちすることもありえます。
そのような際には、《I am》というサブプランになりうるループパーツを採用しているかが重要になってくるでしょう。
おわりに
今回は環境の変化にガッチリと噛み合って急浮上している【水t闇スコーラー】について解説いたしました。
過去に流行したデッキが突如として新環境で活躍を見せるのは、長く競技シーンを追っている身としては感じ入るものがありました。
「殿堂入りで強いコンボデッキが使えなくなったから代わりに使おう」というわけではなく、新カード追加に伴う環境の変化に合わせたデッキ採択として注目されているのも面白いですね。
デッキ自体も若干クセがあるものの、大枠としてはこれぞコンボ&ループ! と言わんばかりの清々しいオールインコンボ。きちんとビートプランも取れるようになっており、デュエル・マスターズのループデッキとして非常に正しい形だと思います。
メタを貫通するギミックなどを取り入れられるわけではないため、意識されると苦しいのはコンボデッキの常。しかし、今後しばらくはアンフェアデッキの代表として【水魔導具】と並ぶ立ち位置を築いていくのではないでしょうか。
それでは、また来週お会いしましょう。お相手はyk800でした!