エムラクール、来たる
約束された終末
ちなみに、MtGの旧枠時代には《エムラクール》が存在していないため、旧枠エムラクールはデュエル・マスターズにのみ存在するカードという事になる。
久遠の闇の神格
そもそもエムラクールという存在がどういう存在なのか、少し触れておこう。
まず、MtGの世界観について。
MtGには”次元”と呼ばれる、それぞれが全く異なる文化や文明を持つ、数々の世界が存在している。
本来、その次元間を移動する事は出来ないが、プレインズウォーカーと呼ばれる存在のみ、例外的に次元間を移動する事が出来る。
(デュエル・マスターズでもお馴染み、《ジェイス》や《ニコル・ボーラス》のようなキャラクターたちである。)
次元と次元の間には”久遠の闇”と呼ばれる空間が広がっており、普通の生命がその場所に触れると、即座に粉砕されてしまうのだ。
しかし、更なる例外が存在する。それが、エルドラージである。
《エムラクール》の種族にもある、この”エルドラージ”とは、久遠の闇で生まれ、久遠の闇の中で動き回る、例外中の例外である。
エルドラージは3体存在しており、その中で最大最強と謳われる存在、それがエムラクールである。
接近するだけでその次元に影響を与え、ひとたび次元に姿を現せば、あらゆる生命に影響を与え、自らの眷属へと変質させる。
そのうえ、未知の力であらゆる物を都合の良いように歪め、宙へと浮かび上がる能力も持ち合わせている。
これが、”飛行”と”追加ターン取得”に繋がっている。
そして、エルドラージの最大の目的は、次元のあらゆる生命とマナを喰いつくす事である。
これは、先ほども述べたように相手のカード6枚を墓地へと置かせる能力で表現されている。
さらに、この《引き裂かれし永劫、エムラクール》は、次元の外側に居る本体の身体の一部に過ぎないため、これを倒しても本体を倒す事には繋がらない。
ダメージこそ入るだろうが、決して滅する事は出来ないのである。
エターナル・Ωの能力として、場を離れたとしても手札に戻ることとなるのはこのためだ。
このように、人知を超えた存在であり、MtG背景ストーリーにおいても、倒す事が出来ないため封印されているに留まっている。
なお、実は女神であることが明かされている。
チェスは苦手らしい。
エルドラージの徴兵
紹介も済んだところで、早速デッキ構築に取り掛かろう。
今回はあくまで《引き裂かれし永劫、エムラクール》をメインに据えたデッキ構築を目指す事にする。
単に《エムラクール》を入れたデッキを組むのであれば、《キング・マニフェスト》や《天運ゼニス・クラッチ》を使ったデッキの方が、派手さもあるだろう。
しかし、それでは《エムラクール》は”フィニッシャーの一角”に過ぎない。
あくまで目指すのは、《エムラクール》が主役となるデッキだ。あらかじめ、そこはご理解いただきたい。
まず、《エムラクール》を最大限に活かす戦術について。
《エムラクール》の能力の中で、特に目立つ能力は2つ。
”このクリーチャーが召喚によって出た時、このターンの後もう一度自分のターンを行う。”
”このクリーチャーが攻撃する時、相手はバトルゾーン、シールドゾーン、マナゾーンにある自身の表向きのカードを合計6枚選び、墓地に置く。”
まず追加ターンについて。
《エムラクール》を普通に召喚するためには、15という超膨大なマナを支払う必要がある。
踏み倒さずに15マナ払ってフィニッシャーを出すのであれば、もっと圧倒的なフィニッシャーが居るであろう。
よって、必然的にこのカードと組み合わせる道が浮かぶ。
《イッツ・ショータイム》
このカードを使えば、なんと約半分の8マナで《エムラクール》を呼び出す事が可能となる。
ただし、相手の手札からクリーチャーが大量に召喚されてしまうという、強烈すぎるデメリットもある。
そんなデメリットを帳消しにする方法は、実は難しい事ではない。
そう、《ロスト・Re:ソウル》だ。
相手の手札を全て奪ってしまえば良い。
《エムラクール》が触れられない手札に干渉出来ることから、実は相性が良いのだ。
次に、相手のカード6枚を墓地に送らせる能力について。
アタック時に、相手が選んで自身のバトルゾーン・シールドゾーン・マナゾーンにある表向きの6枚を墓地に置かせるというもの。
アタックが必要という時点で相手のシールドへの攻撃がほぼ前提となってくるため、昨今の5cデッキに搭載されている《灰燼と天門の儀式》がトリガーされると逆転につながる可能性があるというデメリットが気になる。
しかし、そのような墓地からの踏み倒しを回避出来れば、瞬く間に相手の盤面を制圧し、反撃の余地を奪っていく、恐ろしい能力である。
この能力を安全に運用する方法は2つ。
1つは、致命傷となり得るシールド・トリガーを封じてしまう方法である。例えば、《本日のラッキーナンバー!》である。
これは1枚しか入れる事が出来ないが、それでも十分である。
もう1つの方法は、シールド・トリガー後のリカバリーを可能にする方法である。
この方法が一番現実的で、要するに《エムラクール》を出した次のターンに《エムラクール》を召喚し、追加ターンを確保した状態でアタックするのである。
こうすれば、万が一シールド・トリガーで盤面を逆転させられても、追加ターンで立て直しを図ることが出来る。
このように、弱点こそあるものの、運用が不可能という訳では無い。
おおよそのコンセプトが固まってきたところで、さっそく形にしてみよう。
デッキリスト
何度かの調整を加えた結果、このような形に落ち着いた。
見ての通り、アナカラーデッドダムドを基盤とした構築となった。
アナカラーデッドダムドをベースとした理由としては、まずデッキを回転させるパーツが軒並み被っていた事がある。
それに加えて、《デッドダムド》による盤面制圧を組み合わせる事によって、《エムラクール》でマナに被害を寄せる事が可能というシナジーも形成されている。
ただし、基盤が攻撃性能に多少振っていた要素を、《イグゾースト・Ⅱ・フォー》を入れるなどして受けに寄せる構築となっている。
これは、《エムラクール》を出すまでの時間を稼ぐ必要があるため、である。
先に述べた《ロスト・Re:ソウル》は、相手の手札を《絶望と反魂と滅殺の決断》による執拗な手札破壊によって解決できるため、1枚に抑えている。
このデッキで目を引くのは、《邪偽縫合デスネークニア》だろう。
このカードは、ランダム性こそあるものの、選ばれたカードを”使う”事が出来るのである。
つまり、これで《引き裂かれし永劫、エムラクール》を引き当てたら、たった9コストで《エムラクール》を使う事が出来るのだ。
また、マナゾーンに置かざるを得なかった《エムラクール》を、突然戦場へと送り込むという役割も担っている。
急に登場する《エムラクール》には、どんな相手でも対処に手を焼くだろう。
デッキの回転率が高い為、必要なパーツ《エムラクール》《イッツ・ショータイム》を引き込む事は十分可能だが、それでもリソース管理の都合上、揃わない事もあるだろう。
当然ながら、対戦しているのであれば、”勝つ事”はコンセプトを活かすことと同じぐらい大切なことだ。
《エムラクール》を出さずに勝てる場面が見えたら、そのまま勝ちを狙いにいこう。
何事も、第一の目的を忘れてはならない。
終わりに
15マナのクリーチャーを召喚して運用する事は、そう簡単な事ではない。
本家MtGでも、《エムラクール》は踏み倒されることが多い。
デュエル・マスターズでも、早期に踏み倒して運用する方法を模索したが、イマイチ良い方法が見つからなかった。
しかし、今後早期に踏み倒せる方法が見つかったら、このカードの評価も一気に化ける可能性は高い。
それが、スピードアタッカーまで付与してくれるのであれば、尚良し、である。
背景ストーリーにおいて、存在そのものが終末とすら謳われる強大無比なエルドラージが、果たしてデュエル・マスターズでもその真価を発揮する時が来るのだろうか。
その答えは、彼女自身が語った言葉にあるのだろう。
これは何もかも間違い。私は不完全で、足りなくて、始まったばかり。
不毛の怨嗟ではなくて、花が咲くべき。
土は受け入れてくれない。私の時じゃない。
今はまだ