ゆるふわマジックであそぼう その6~キーワード能力で風を感じたい~
●GodSpeed...兵は神速を貴ぶ
人々は文化的活動において様々な方法で「スピード感」を表現してきました。
モトリー・クルーのミック・マーズは『キックスタートマイ・ハート』において、アーミングから始まるギターリフで車のエンジン音を表現しました。
ウンベルト・ボッチョーニを代表する未来派の画家達は絵画において、時間・場所・空間を混ぜ合わせて速さの概念を創り出しました。
津久井教生は自身が演じたストレイト・クーガーという役において、超“舌”技巧によりラディカル・グッドスピードのもつ速さを表現し・・・これはちょっと違うな(『スクライド』20周年おめでとうございます!)。
ではマジックはどうでしょう。
ゲームとしてのマジックにおいてスピードとはすなわち「ゲームを終わらせるための時間」であり時間の概念です。そこにスピード感は含まれません。
頬を切る風の流れ、鼻を通るガソリンの香り、脳を貫く精神の加速、そういった感受性だったり物理的な要素が伴うものは 勝敗には無関係のゲームなのです。
座布団の下にカード隠したりする某エキスパンションのことはめんどくさいので割愛します。
つまるところマジックにおいてスピード感の概念はゲームの勝敗自体には無関係と言えます。
しかし無関係だからといって不要というわけではありません。勝敗には関係無いにせよ、
脳内で魔導書を広げて召喚したクリーチャーを戦わせるのがマジック:ザ・ギャザリングです。
イメージしr―おっと、これは違うカードゲームだった。
このゲームは「キーワード能力」という概念を駆使してプレイヤーのゲーム体験にスピード感を提供してきました。いわゆるフレイバー性というものですね。
今回はマジックがどうやってスピード感を表現してきたか、キーワード能力に着目して紹介していこうと思います。
●速攻
スピード感にまつわるキーワード能力として「速攻」は外せません。
速攻(このクリーチャーは、あなたのコントロール下で戦場に出てすぐに攻撃したり(T)したりできる。)
速攻というキーワード能力自体が登場したのは『基本セット第6版』以降ですが、「場に出たそのターンに攻撃に参加することができる」であったり「召喚酔いに影響されない」という表記で黎明期から存在する能力です。
「召喚酔い」と俗に呼ばれる、全てのクリーチャーに存在するクールタイムを無視して行動に移すことで
「召喚された瞬間に戦闘衝動が抑えきれず、いきり立って対戦相手に襲いかかるイメージ」を表現しています。
行動ターンが早まるというのは冒頭で話したゲームを終わらせる時間に直結するので、そういった意味でもプレイヤーにとってイメージしやすい能力と言えます。
《稲妻のすね当て/Lightning Greaves》
クリーチャーがこのすね当てを履くことで高速移動が可能になり、常人では出せないスピードで相手を攻撃できるようになります。
被覆は移動が速過ぎて標準が定まらず対象に取れないと勝手に理解してます。
小学生向けに売ってるかけっこが速くなる靴のめちゃくちゃすごいバージョンですね!
●暴動
先述の速攻の派生型として近年に登場したのが「暴動」です。
今ものすごい自然に2年以上前を「近年」と呼んだ自分がいるんですが、なんだか胃が痛くなってきました。
暴動(このクリーチャーは+1/+1カウンター1個か速攻のうち、あなたが選んだ1つを持った状態で戦場に出る。)
暴動は『ラヴニカの献身』で登場した我らがグルール民の特性を表現した能力です。スピード感のイメージとしては速攻と同じですが、
通常のターンに攻撃していれば本来のサイズで攻撃ができていた≒なりふりかまわず攻撃している感を演出してます。
お魚くわえたどら猫を追いかけて裸足で駆けていくようなイメージですね・・・なんか一気にダメそうな感じになったな??
●先制攻撃
クリーチャーの攻撃にスピード感のイメージを付与したのが「先制攻撃」と「二段攻撃」です。
先制攻撃(このクリーチャーは、先制攻撃を持たないクリーチャーより先に戦闘ダメージを与える。)
二段攻撃(このクリーチャーは先制攻撃と通常の戦闘ダメージの両方を与える。)
2つの能力それぞれ登場した時期は違いますが、いずれも攻撃時のタイミングで戦闘のスピード感を表現しています。
先制攻撃
先制攻撃は要はジャブです。ジャブを極めるということはボクシングを極めるということと同義です。
同程度の力量を持つクリーチャー同士が戦った場合、ジャブを習得していない方は触れることも出来ずに倒されてしまうのは必然と言えます。
そんなジャブを華麗に使いこなす相手と戦うには、こちらもジャブを駆使するか、ジャブをくらっても物怖じしない強靭なタフネスを持てばいいのです。
二段攻撃
おまけ 三段攻撃
●疾駆
間合いの概念が無いマジックでヒット・アンド・アウェイの要素をもたせたのが「疾駆」です。
疾駆(X)(あなたはこの呪文を、これの疾駆コストで唱えてもよい。そうしたなら、これは速攻を得るとともに、次の終了ステップの開始時にこれを戦場からオーナーの手札に戻す。)
疾駆は
『運命再編』のマルドゥ族、または
『タルキール龍紀伝』のコラガン氏族の特性を表現した能力で、「迅速」の相を尊ぶ戦士の一族であるマルドゥ&コラガンの素早い戦闘スタイルを演出しています。
何もないところから突然攻撃し、気付いた頃には消えている。
ターン制のゲームでそういったヒット・アンド・アウェイを表現したこのデザインは見事ですね。
英語名も「Dash」とカッコいいのもグッドです。
●日暮&夜明
昼の慌ただしさを表現したのが「日暮&夜明」です。
日暮(プレイヤーが自分のターンに呪文を唱えなかったなら、次のターンに夜になる)
夜明(プレイヤーが自分のターンに2つ以上の呪文を唱えたなら、次のターンに昼になる)
このメカニズムには触れてないけど
プレビュー記事の方もよろしくお願いします!!
最新エキスパンション『イニストラード:真夜中の狩り』で登場したキーワード能力で、
プレイヤーの行動回数の頻度で昼夜が決定します。
イニストラードは夜になると恐ろしいクリーチャーが襲ってくるので、
それを望まない人間達は夜が来ないように休まず呪文を唱えさせられます。
しかも一度夜になってしまうと通常の倍働かないと昼になりません。嫌すぎる!
イニストラードに生まれなくて本当に良かった!なんなら週休3日がデフォルトな次元に生まれたかった!
●おわりに
今回はスピード感にスポットライトを当てましたが、これ以外にも沢山存在するキーワード能力達も、
カードに与えられた役割を表現するのに貢献していて良さを語りたくなりますよね。
カードのデザインでワンランク上の表現ができることもマジックの魅力の一つだと言えます。
それではみなさんGod speed you!!
↑のこれ「めっちゃ速い」って意味じゃなかったんですね。なんでもっと早く教えてくれなかったんですか。これまでずっと誤用して使っt―――
おしまい