攻めるべきか受けるべきか
矛盾した組み合わせ
ディスペクターの中で”連結”に属するクリーチャーには、EXライフが離れた際にトリガーする能力を持つものが多い。
たとえば《聖魔連結王 ドルファディロム》は、自身の「EXライフ」シールドが離れた際、相手の多色ではないクリーチャーを全て破壊する。
他にも《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》は、自身の「EXライフ」シールドが離れた際、コスト8以下の呪文を手札から唱える事ができる。
このデザインのため、”連結”に属するディスペクターは、攻撃的に動きつつ、相手の攻撃は牽制するという事が可能なのだ。
しかし逆に、このデザインは攻めるにも守るにも、一歩足りないという印象もある。
《ドルファディロム》は出た時にもトリガーする能力であるが、他の”連結”に関しては、「EXライフ」シールドが離れた時に能力をトリガーさせるものだ。
つまり、能動的にこの能力を使いたい場合、何とかしてEXライフシールドを離す必要がある、という事である。
もともと受動的に使う能力なのだから、受動的に使えば良い、と考えるのも良いだろう。
しかし、相手からのアクションを待つということは、相手に対処法を用意された状態で使う事になってしまう恐れがある。
確かに相手の攻撃を牽制する事は出来るが、それが完全に機能してくれるかどうかは、少し怪しさが残るのだ。
攻撃面に関しては、WブレイカーやTブレイカーを持つのみ、というクリーチャーが多い。
現代のデュエル・マスターズにおいて、単純な打点の高さは、どちらかというと”持っていて当たり前”に近い要素である。
こうして改めてみると、攻撃面に関してはシンプル、防御面に関しても対処法を用意できれば突破されてしまう、というようにも感じられる。
もちろん、何も無いより効果を持つ方が良いが、攻撃・防御の両面において、どうしてもどっちつかずな印象になってしまいがち。
それが”連結”に対する筆者のイメージだ。
そんな”連結”に属するディスペクターに新顔が登場した。
《頂竜連結 バジュエン・ザ・ローラ》だ。
コスト7にして、スピードアタッカーかつTブレイカー、しかも光のドラゴンのため《ドラゴンズ・サイン》で飛び出す事まで可能という、かなり攻撃的なスペックだ。
それに加え、相手ターン中にEXライフシールドが離れると、次の相手の行動を著しく制限するという能力も持っている。
一見すると強力そうなこのカードだが、攻撃面で見るとスピードアタッカー+Tブレイカー、防御面を見るとトリガータイミングが相手ターン中限定なため、非常に使い方が難しい印象がある。
今回は、このカードを使って、新しいデッキを考えていこう。
反逆の発想
まずは、《バジュエン・ザ・ローラ》のスペックを見てみよう。
上述したように使い方が難しそうなこのカードだが、よくよく見てみる事で、新たな使い方が見つかるかもしれないのだ。
コスト7、パワーは12500、光・闇・火文明。
種族は、アーマード・ドラゴン/デーモン・コマンド、そして当然ディスペクター。
スピードアタッカーでTブレイカー
出た時に相手のパワー3000以下のクリーチャーを全て破壊できることから、軽量クリーチャーで固めたデッキに対しては相当なダメージを与える事が可能だ。
相手の打点を奪い取り、こちらはEXライフでシールドを補強できるため、一気に守りを固める事ができる。
そのうえ、EXライフシールドが離れると、次の相手ターンに使えるマナを一気に奪い取ってしまう事もできてしまう。
つまり、相手が自身のターンで除去しようとすると、次の自分のターンでの行動が不可能になる事を意味している。
改めて見て思うが、かなり攻撃的な性能だ。
小型を一掃することでメタクリーチャーをなぎ払い、いきなりTブレイカーを叩き込む。
さらにはEXライフで一度の除去に耐性を持ち、さらに「EXライフ」シールドが離れる事で相手の行動に大きな制限を課せる。
忘れがちだが、EXライフが離れた時に相手のマナを全てタップしてしまうので、もしマナを残した状態で除去しようものなら一気に止まってしまうだろう。
返しのターンだけでなく、そのターンでの行動まで止めてしまえるのだ。
これだけ攻撃的なら、かなり前のめりなデッキを組めそうな気がする。
が、そうなると7というコストの重さがネックになってくる。
今のデュエル・マスターズでは、だいたい5マナも払えば、あの《アルカディアス・モモキング》すら出せる時代だ。
何なら《超竜バジュラ》すら出てくることだってある。
7マナも払うのなら、それこそ《龍風混成ザーディクリカ》くらい、ゲームの趨勢を著しく傾けるほどのカードでなければ通用しないだろう。
《バジュエン・ザ・ローラ》も強力ではあるが、できることといえば、除去耐性のあるスピードアタッカーのTブレイカー、ということに帰結してしまう。
決して弱くは無いが、強いとも言い難いのだ。
こうなってくると、このカードを活かすアプローチとしては
①より高速で出す方法を考える
②別の使い方を考える
の2つに絞られる。
まず①についてだが、このカードを高速で出す方法は、先に述べた《ドラゴンズ・サイン》で踏み倒す方法がある。
これであれば、マナ加速を1回挟むだけで、4ターン目にバトルゾーンへ送り込むことも可能だろう。
しかし、4ターン目にTブレイカーを叩き込むだけでは、やはり他のデッキに見劣りしてしまう。
そうなってくると、②の方法を考える必要が出てくるだろう。
別の方法だが、このカードを使い、相手のマナをロックしてしまう方法が考えられる。
相手ターンに能動的にシールドを離す方法であれば《オヴ・シディアDG》がある。
だが、このカードと組み合わせても、次のターンにもう一度同じ事が出来ないため、ロックできるのはせいぜい1ターンだけだ。
どうせやるなら、毎ターン使い回したい。 使い回したいが、《バジュエン・ザ・ローラ》を使い回せる良いデッキは、そう簡単には組めないのだ。
仮にやるなら、《愛されし者イルカイル》《バキューム・クロウラー》と組み合わせる事になるだろう。
もっとも、この段階で4色のデッキとなり、しかも《オヴ・シディアDG》という無色のカードまで入るので、デッキ構築の難易度は相当高い物になるだろう。
他に、相手のターンに能動的にEXライフシールドを剥がす方法は、ほぼ皆無だ。
別のアプローチとして、相手のターンに《バジュエン・ザ・ローラ》を離す方法も考えられるが、これも見当たらない。
ここにきて、八方ふさがりになってしまった。
攻めるアプローチもダメ、継続的にマナを縛るアプローチもダメ、となってしまっては、どうにもならない。
残されたのはパワー3000以下を破壊する能力だが、これはありふれた能力なので、あえて活かす必要も無いだろう。
その攻撃的な性能を活かし、かつ返しの相手ターンにバトルゾーンから離そうとすることで、攻撃とロックを同時にこなす方法を考えてみたが、構築面での難しさが際立ってしまう結果となった。これならば、攻撃面に特化した方が強いだろう。
能力面を見ても画期的な突破口がつかめなかったので、いったん別の特性、種族を見てみよう。
このカードの種族は、アーマード・ドラゴンとデーモン・コマンドだ。
どちらもサポートが豊富な種族で、特にアーマード・ドラゴンは、今まさにフィーチャーされているアーマードである。
もしかしたら、アーマード・メクレイドと組み合わせるというアプローチがあるのでは?
そう思って調べてみたのだが、《バジュエン・ザ・ローラ》を出すにはアーマード・メクレイド8が必要だ。
この効果で出すのなら、もっと良い踏み倒し先もあることから、わざわざ踏み倒すメリットは薄い。
では、デーモン・コマンドの方はどうだろうか。
このカード自体、相手に除去を躊躇わせるデザインになっている。
よって、場持ちの良い進化元として運用が可能だろう。
となると、このカードを進化元にデーモン・コマンド進化クリーチャーを出す方法を考えてみよう。
結論から言うと、《バジュエン・ザ・ローラ》と似た役割を持ち、更に攻撃面・防御面で強力な《聖魔連結王 ドルファディロム》が存在していたため、没となった。
たしかに《バジュエン・ザ・ローラ》の方がコストは1少ないが、重量級デーモン・コマンドの進化クリーチャーを運用するなら、7も8も大きな違いは無い。
むしろ、1コスト重くても、より強力なデーモン・コマンドである方が、使い勝手は良いのだ。
つまり、除去耐性のある進化元としての使い道も、このカードの本来の役割ではないという事になってくる。
いよいよもって、他に見るべきところが少なくなってきた。
あとは文明くらいだろうが、これも他のディスペクターが居るうえ、《魔帝連結ガイゼキアール》というより軽量のディスペクターが居る以上、激戦区である事は間違いない。
よって、このカードを強く使う方法が無い、という事になってしまうのだ。
しかし、ここで諦めてしまっては、ビルダーの名が廃ってしまうというもの。何とかして、別のアプローチを考える事はできないだろうか。
こういう時は、基本に返るのが一番だ。いったん、”連結”に属するディスペクターの考え方を改めて見てみよう。
最初に、このカードの特徴は「攻めてもよし、その後に受けてもよし」だと言った。
攻撃しても、その反撃にさえ対応できる、というデザインだ。
しかし、これが逆だったらどうだろう。
要するに、相手の攻撃を受け止めて、急襲を仕掛ける、というデザインだとしたら?
「攻めて受ける」ではなく「受けて攻める」だとしたら、別の道が見えてこないだろうか。
《バジュエン・ザ・ローラ》で相手の攻撃を受けとめると、次の相手のターン、相手はほとんど何も出来なくなる。
そんな状態が確定したと同時に、こちらから攻勢を仕掛けるという方法が出来れば、画期的なデッキになるのではなかろうか。
当然、ただ単に《バジュエン・ザ・ローラ》を出してターンを返す、という動きでは弱い。
もし、「相手の攻撃に合わせて《バジュエン・ザ・ローラ》を出す」事ができたら、より奇襲性が高まるはずだ。
そんな夢物語のようなアイデアを可能にするカードが、実は存在している。
そんな画期的なカードが、《反逆狼の紋章》だ。
革命0トリガーで、墓地からコスト8以下の進化ではない闇のコマンドを釣り上げる事が可能な呪文。
油断した相手にこのカードを使い、墓地から《バジュエン・ザ・ローラ》を繰り出せば、相手は思わぬ形で《バジュエン・ザ・ローラ》のEXライフシールドを剥がす事になり、急にピンチに陥るはずだ。
バトルゾーンこそ残ってしまう可能性はあるが、そこは、パワー3000以下のクリーチャーを一掃する能力と、自身のパワーを駆使して制圧すればいいだろう。
それに、《反逆狼の紋章》を使うということは、闇に寄せたカウンターデッキという、全く新しい可能性をも考えられる。
そんなデッキに完璧にマッチしたカードがもう1枚ある。
デッキリスト
終わりに
先日発売された「レジェンドスーパーデッキ 禁王創来」に収録された新規ディスペクターの中で、個人的に最も扱いが難しいカードはこの《バジュエン・ザ・ローラ》だった。
他の新規ディスペクターは、どれも独特過ぎる能力を持っているため、その強みを活かした構築をしやすい。
しかし、《バジュエン・ザ・ローラ》は、特徴的な能力こそ持っているものの、受動的な色合いが強く、しかも攻撃面のスペックも単調すぎたのだ。
この能力をどうやって活かすかを考えていく中で、「《バジュエン・ザ・ローラ》が突然出てきて、いきなりEXライフシールドを剥がす事になったら、うまく使えそうだな」となった事から、今回のデッキとなった。
《反逆狼の紋章》は、今は日の目を見ていない革命0トリガーの呪文だが、最近は優秀な闇のコマンドも増えてきているため、今一度見直してみて損の無いカードではないかと思っている。
それこそ、《ドルファディロム》を踏み倒せた先には、一気に形成逆転も狙えるほどだ。
今回のデッキは、あくまで1つの可能性に過ぎないが、闇の革命0トリガーを使う新しいデッキを組み上げる事が出来たので、今後の発展に期待していきたいところである。