はじめに
初めましての方は初めまして、『yk800』です。
このコラムでは、直近で話題となったデッキや筆者である私yk800が個人的に気になったデッキを紹介していきます!
今回の特集は闇単【アビス】
ゴッド・オブ・アビス第2弾「轟炎の竜皇」の発売で闇単【アビス】は大きくバージョンアップ! 元々かなり強力なデッキでしたが、新たな戦力を取り込んでこれまで以上に多くの大会で実績を残す強力なデッキに進化しています。
今回は闇単【アビス】を基礎から解説していくとともに、最新弾のリリースでどんな部分が強化されたのかについても紹介していきたいと思います!
闇単【アビス】のサンプル構築
闇単【アビス】ってどんなデッキ?
多彩なメリット能力を持ったアビスの君主、《アビスベル=ジャシン帝》を主役に据えた新世代のビートダウンデッキです。
《アビスベル=ジャシン帝》の持つ能力の中でもデッキの主軸となっているのが
■自分の墓地にあるアビス・クリーチャーに「アビスラッシュ」を与える。
■自分の墓地にあるクリーチャーの召喚コストを2少なくする。ただし、コストは0以下にならない。
この2つ。
これにより、《アビスベル=ジャシン帝》の存在下では自分の墓地のアビスすべてが「コストを2少なく召喚したうえで、即時相手プレイヤーを攻撃できるカード」になります。
どうにかして3〜4ターン目に《アビスベル=ジャシン帝》を登場させ、次のターンに大きくコスト軽減されたアビス・クリーチャーを連鎖的に展開し、一気に相手を押し切ってしまおう、というのが闇単【アビス】の基本理念です。
そんな《アビスベル=ジャシン帝》の能力を十全に活かすためには、墓地肥やしとコストパフォーマンスに優れた打点要員が必要不可欠。
このどちらも満たす夢のようなクリーチャーが、《深淵の三咆哮 バウワウジャ》・《邪龍 ジャブラッド》という2体のタマシード/クリーチャーです。
タマシード/クリーチャーは文字通りタマシードでありクリーチャーでもあるカード。ただし、バトルゾーンに自分の特定の文明のクリーチャーもしくはタマシードが指定枚数存在している時にしか、クリーチャーとして扱われません。
攻撃・ブロックに制約が課される分、コスト比の打点やパワーが非常に高水準に設計されているのがタマシード/クリーチャーの強みです。
《深淵の三咆哮 バウワウジャ》と《邪龍 ジャブラッド》はどちらも高打点・高パワーであることはもちろん、墓地肥やし能力で後続を確保しながら展開でき、除去耐性を活かして詰めの場面でも役立つ非常に優秀なアタッカーです。
今回取り上げたサンプル構築の場合、無条件のS・トリガーが8枚、条件付きS・トリガーが4枚、G・ストライクが4枚の合計16枚が採用されており、防御面もかなりの高水準。採用できる防御カードのバリエーション自体かなり広く、現時点でも《撃髄医 スパイナー》や《龍頭星雲人/零誕祭》、《秩序の意志》などの受け札が採用候補として挙げられます。
フィニッシュターンは4〜5ターンと特別速いわけではないものの、ビートダウンデッキとしては高めの防御力と除去耐性付与を絡めたフィニッシュ力で幅広いレンジに対応できる点が魅力です。
ただし、リソース源をほぼ全て墓地に依存しているため、墓地利用が咎められるとリソース管理が非常にシビアになる点には要注意です。
闇単【アビス】、アップグレード!
基本的な構築コンセプトは「伝説の邪神」環境から変わっていない闇単【アビス】ですが、「轟炎の竜皇」では先ほど名前を挙げた《邪龍 ジャブラッド》以外にも複数のパーツを獲得しています!
今回のアビスは、全体として以前の構築ではあまり得意ではなかった「対戦相手への妨害」面が強化されている印象です。
《ブルーム=プルーフ》
文明:闇
種族:アビスロイヤル
コスト:2
パワー:3000
■このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。
■相手のターン中に、相手が召喚以外の方法でクリーチャーを出した時、そのクリーチャーを破壊する。
取り回しのいい軽量メタクリーチャー。
アビスにとっては貴重なメタ能力に加えて、あればあるだけ嬉しい墓地肥やしまでついているおトクなクリーチャーです。2ターン目の「とりあえず《ブルーム=プルーフ》」が許容されやすい点が良いですね!
メタ能力自体は《マタドール・マルクーゼ》や《凶鬼77号 ビムナム》などの先達と全く同じ形式のもの。対応幅がやや狭く、単体で活躍したケースは少ないですが、《ブルーム=プルーフ》はささやかながら単独で墓地リソースを広げられるため、刺さらない相手にも完全に腐らないのが強みです。
《セリヴィエット=エリー》
文明:闇
種族:アビスロイヤル
コスト:3
パワー:2000
■このクリーチャーが出た時、自分の手札を1枚捨ててもよい。そうしたら、相手は自身の手札を1枚選んで捨てる。
■自分のアビスを召喚する時、コストを2少なくしてもよい。そうしたら、このクリーチャーを破壊する。ただし、そのアビスのコストは0以下にはならない。
1つ目の能力でお互いにハンデス、2つ目の能力で自身を破壊してアビスの召喚コストを2軽減できるクリーチャー。
ハンデス・軽減のどちらも「伝説の邪神」環境のアビスでは小回りの効く形で使えなかったため、これら2つの能力が同時にまとまって使えるのはかなりのセールスポイントです。
お互いにハンデスする能力は相手の手札を相手自身が選ぶため質には期待できず、リソース面での損失も大きめ。ただし、自分の好きなカードを墓地に落とせることからアビスラッシュの布石としては最適です。
コスト軽減能力は、《アビスベル=ジャシン帝》を2マナで召喚してそのターン中に墓地から展開を作ったり、これまで手が届きづらかった高コストアビスをアビスラッシュで召喚したりと、これまでにない動きの幅をもたらしてくれます。
単独ではやや重さが目立つものの、1枚で担える役割の多さが魅力の新カードです。
《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》
文明:闇
種族:アビスロイヤル
コスト:4
パワー:3000
■スレイヤー
■このクリーチャーが出た時、相手の手札を見てクリーチャーを1体選び、捨てさせる。
■シビルカウント3:このクリーチャーが攻撃する時、自分の闇のクリーチャーまたは闇のタマシードが合計3つ以上あれば、相手の墓地にあるカードを1枚選んでもよい。そのカードの、出た時にトリガーする能力を、自分が1つ使ってもよい。その後、相手はそのカードを山札の下に置く。
最新弾のSRにふさわしい強力なアビス。
登場時に相手の手札から好きなクリーチャーを捨てさせる能力と、攻撃時にシビルカウント3を達成していれば相手の墓地からカードを山札の一番下に送り返しつつ、その登場時能力をコピーする能力の2つを持っています。
1つ目の能力と2つ目の能力はシナジーしており、コピーしたい登場時能力を持つクリーチャーを捨てさせて、次のターンにそのままこちらが使うだけでも非常に凶悪です。もちろん《アビスベル=ジャシン帝》でアビスラッシュさせればタイムラグすらなしでコピー可能です。
また、能力コピーを考えずともピーピングハンデスは十分すぎるほど強力。次のターンに相手が取ろうとしていたアクションを捨てさせることでテンポを崩したり、コンボデッキのキーカードを抜き去ったりと、一気にゲームのペースを引き寄せられます。クリーチャー以外のカードは捨てさせられないものの、ツインパクトにも対応しているため完全に腐ることはほとんどないでしょう。
攻撃時能力は能力コピーの派手さに目が行きがちですが、シンプルに墓地利用対策としてもなかなか優秀。おまけでちょっとしたアドバンテージを獲得できれば儲けものです。選ぶカード自体はクリーチャーでなくともよく、登場時能力をコピーせずとも山札の一番下に戻せる点は覚えておきましょう。
《悪縁 ガクブッチ=リッチーモア》
文明:闇
種族:アビスロイヤル
コスト:6
パワー:7000
■アビスラッシュ
■ブロッカー
■スレイヤー
■W・ブレイカー
■このクリーチャーが出た時、闇のカードを2枚まで、自分の墓地から手札に戻す。
■シビルカウント5:このクリーチャーが攻撃する時、自分の闇のクリーチャーまたは闇のタマシードが合計5つ以上あれば、相手は自身の手札をすべて捨てる。
大型アビスの中でも特に派手な能力を有する《悪縁 ガクブッチ=リッチーモア》。
ブロッカーにスレイヤーに自前のアビスラッシュを持ってパワー7000と基礎スペックからしてかなりの高水準ですが、登場時能力とシビルカウントも引けを取らない強力さです。
まずは登場時能力。闇のカード2枚を墓地から手札に戻します。アビス指定どころかカードタイプすらも自由なため、闇文明でさえあれば《秩序の意志》や《百鬼の邪王門》も回収できる万能さです。アビス以外のカードに触れる手段が少なかったのが前環境のアビスで気になるポイントとしてあったため、そこが解消されたことは朗報だと言えるでしょう。
目玉となるのが攻撃時能力。「シビルカウント5」という条件を乗り越えれば、攻撃時に相手の手札をすべて捨てさせます。《百鬼の邪王門》や《一王二命三眼槍》、《光牙忍ハヤブサマル》など、手札誘発系の受けをすべて無視して押し込めるため、相手次第では文字通り「必殺」の一撃。もちろん、単純に相手の手札をすべて捨てさせてターンを渡すだけでも相手が返しに取れる行動は大きく制限されます。
シビルカウント5は決して簡単に達成できるものではありませんが、《アビスベル=ジャシン帝》を駆使して大量のクリーチャーを軽減しながら展開できる【闇単アビス】であれば特段難しいものでもありません。狙うだけの価値は十分にあるでしょう。
闇単【アビス】に採用されるカードについて
メタ能力と軽めの墓地肥やしが1枚に詰まった便利な初動要員。
それぞれの能力はそれほど強くありませんが、先述したように自分の動きに寄与できるため常に腐らないことがメタカードとして優秀です。
自前のアビスラッシュを持っていない点だけが悩みどころか。
3ターン目の動きとして最高峰の墓地肥やし+展開加速カード。元々墓地に落ちていたカードも使えるため、序盤だけでなく終盤にトップデックした際も高いバリューを発揮できます。
こちらも《Re:奪取 ブラッドレイン》と同じく、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》という追加の出力先を確保して大幅強化。自分の展開、除去に加えてハンデスの選択肢まで加わり、そもそも「伝説の邪神」収録カード全体でも1、2を争うカードパワーにさらなる磨きがかかっています。
場持ちのいいタマシード/クリーチャーとして《邪龍 ジャブラッド》が追加され、以前にも増してトリガーとして使える機会が増えた点にも要注目です。
「轟炎の竜皇」で追加された新規オーバーレアのタマシード/クリーチャー。
登場時の2枚墓地肥やしは3マナの動きとしてそれほど強くありませんが、真価を発揮するのは詰めの局面。アビス攻撃時の墓地肥やしと墓地4枚をコストとした味方全体への除去耐性付与で突破力を一気に押し上げます。
特に2体以上並んだ際の突破力は圧巻の一言。除去耐性付与に必要な4枚の墓地をアビスが1回攻撃するたびに供給できるため、1枚から2体を除去されない限りはほぼ永続的に除去耐性を付与しつづけられます。単純に片方が排除された場合でも残り1体が機能する点も含めて、極力2体以上をセットで運用したいカードです。
《アビスベル=ジャシン帝》下でちょうどコスト1になるため取り回しがよく、クリーチャー化せずとも除去耐性付与が働き続ける点も強力。
オーバーレアに恥じないスペックを誇る、アビスデッキの優秀なサポーターです。
アビスデッキの絶対的切り札。コスト4のクリーチャーにこれでもかと基礎スペックを盛ったうえで、アビス関連のメリット能力で単独から爆発的な展開を形成する、【アビス】の君主にふさわしいフィニッシャーです。
盤面を作って勝つパターンもあるにはあるものの、基本的にはこのクリーチャーからアビスラッシュを大連鎖させて勝利するのが闇単【アビス】の動きとなります。
ただし、その能力の特性上墓地にカードがないと本当に何もできないため、後続が確保できないままに出すことはオススメできません。
以前であれば間をつなぐ手段がなかったために無理にでも出さなければならないことが多かったですが、今弾からはハンデスやメタクリーチャーで間を繋ぎやすくなったところはデッキとしての強化ポイントですね。
コスト4にしてT・ブレイカー、登場時に4枚墓地を肥やしながら、自分のターン中には破壊以外でバトルゾーンを離れず、攻撃時に相手のクリーチャーを1体破壊するパワフルなクリーチャーです。おまけのように付いているブロッカーも強い。
W・ブレイカーには困らないこのデッキの中でも、T・ブレイカーのアビスはこのクリーチャーのみ。2点+3点が打点効率として最も優れているため、フィニッシュにはぜひとも1枚絡めたいところです。
アビスデッキに新たなパターンを提示した、新弾を代表する強化パーツ。
これまでは相手を妨害する手段がなかったこともあり、3ターン目にはとにかく《アビスベル=ジャシン帝》に繋がる動きを取らなければいけませんでしたが、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》によるハンデスの選択肢が加わったことで、相手側のテンポを崩して時間を伸ばす選択肢が生まれました。
先攻であれば3ターンリーサルを仕掛けてくるアグロデッキにもハンデスがガン刺さることもあり、《Re:奪取 ブラッドレイン》を噛ませてでも早出しする選択肢が追加されていることにも頷けます。
密かにスレイヤーを持っているため、相手クリーチャーを殴り返しながら墓地のクリーチャーの能力をコピーすればリスクなくアドバンテージを取りに行けます。アビスラッシュで出した場合はプレイヤーしか攻撃できないこととセットで覚えたいですね。
比較的軽量な除去トリガー。墓地肥やしの速度にもよりますが、アグロデッキに攻め込まれても平気でコスト6〜7の相手を破壊できるため、純粋にクリーチャー付きの確定除去として機能することがほとんどです。
コスト4と軽く、手撃ちのコストパフォーマンスも高水準。《若き大長老 アプル》などに対抗するのに必須になるほか、単純に3枚墓地を増やしながら1面処理できるためテンポの面を鑑みて手札からプレイしていくこともありえます。
墓地リセットにはやや脆いものの、総じて優秀な受け札です。
こちらは基本的に防御的な役割しか持たないものの、ブロッカー・登場時能力・シビルカウントと最大で3面までストップさせられるインパクト抜群の受け札。
ブロッカーを持っていることが非常に厄介で、踏んだターンだけにとどまらない防御力を発揮できます。
タマシード/クリーチャーの採用枚数が増加したことでバトルゾーンの闇枚数を維持しやすく、シビルカウントの達成しやすさは向上しています。元々自分自身をカウントに入れられることもあってそれほど厳しい条件ではありませんでしたが、従来以上に最大限のスペックを発揮させやすくなったと言えるでしょう。
従来の闇単【アビス】にはあまり採用されなかった大型アビスロイヤル。
シビルカウントが制約としてかかるとはいえ全ハンデスによる詰めは破格で、苦手とする全タップ系トリガーやターンスキップ系トリガーが最後の1枚に埋まっていたとしてもこのクリーチャーで返しの動きを封殺すればほぼ確実に築き上げた盤面で強引に押し勝ちを狙えます。
コスト6も流石に重くはあるものの、《アビスベル=ジャシン帝》複数体や《セリヴィエット=エリー》を絡めればコストはいかようにも軽減可能。《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で長めのゲームに耐えやすくなったこともあり、このカードに限らず重量級アビスには今後注目していきたいですね。
おわりに
というわけで、今回は最新弾で強化された闇単【アビス】について解説していきました。
数値としては凄まじいことが書いてあるものの最終的に「殴るだけ」だった前環境の【アビス】とはガラリと変わって、小回りの効く妨害を手に入れたのが何よりのトピックでしょう。
筆者は「周辺パーツは4弾までゆっくり追加されていくのかなぁ」と気長に見ていたのですが、まさか第2弾にしてここまで一気に強化が入るとは……! 墓地対策という明確な弱点はあるものの、よほど露骨な対策を打たれないかぎりは十分に戦えるだけのパワーを持ったデッキに進化しています。今後の活躍・強化からも目が離せませんね。
それでは、また来週お会いしましょう。お相手はyk800でした! 記事が面白かったらぜひTwitterでのシェアをお願いします!